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やり直し魔女は、三度目の人生を大嫌いだった男と生きる  作者: 狭山ひびき
第一部 三回目の人生

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わたしの人生に愛は不要! 1

お気に入り登録、評価などありがとうございます!


今日は夜にもう一話投降します(*^^*)

 愛は不要、生きることだけ考えると決めたものの。


 ……うぅーん。困った。

 わたしは今十六歳。

 一回目と二回目の記憶では、今から一年後の春、わたしはエミディオ・クベードに求婚される。


 ……一年後の求婚を断るだけで、うまくいくのかしら?


 気になるのは二回目の人生で知った、エミディオがサモラ王国の玉座を狙っているという点だ。

 会ったこともない病弱な兄――王太子が、その座を追われようとどうしようと、わたしはどうだっていいのだが、現時点でエミディオは玉座を得るためにはわたしを手に入れるべきだと考えているはずである。

 そうなると、求婚を断っても、はいそうですか、とすんなり引いてくれるとは思えない。

 玉座が欲しいがゆえに、わたしを捨てて隣国の王女と結婚しようとし、わたしが離婚に応じなかったからと言って処刑した男である。


 いつも優しかったエミディオの本性があんな男だったなんて……。


 おっと、いかんいかん。

 二度目の人生であの男への愛情は消え去ったはずなのに、どうやらまだ完全ではなかったらしい。

わたしも大概しつこい女だわ。まだ心の奥底に、エミディオを恋しく思う気持ちが残っていたなんてね。ちょっぴりしょんぼりしちゃったじゃない。


 しかし、恋しい気持ちのひと欠片が残っていたとしても、わたしはもうエミディオとは結婚しない。したくない。

 例えばエミディオが望むように彼を玉座に押し上げることに成功すれば、わたしは捨てられることも殺されることもないのでは……と思ったりもしたけれど、なんか納得いかない。


 だって、エミディオはわたしを利用しようとしたわけだ。

 そんな男のために頑張っても虚しいだけだし、玉座を手に入れた後で用済みになったとばかりに消される可能性が残っていないわけでもない。


 ということで、あいつとはもう関わりたくない……のだけど、いかんせん、あいつは定期的にここに通って来るのよねえ。

 可哀想な従妹を気にかけているって顔で、お菓子や花を持って、月に一度くらい顔を見に来るのである。


 ……自分の野望のために好きでもない女の元に手土産持参で顔を出すなんて、マメよねえ。


 逆に言えば、そんな面倒くさい行動を続けてまで、玉座が欲しかったということなんだろうけど。


「アサレア、手が止まってるよ」

「おっと」


 そうだったよ。薬を作っている最中だったわ。

 ラロが山の中に自生している薬草を持って来てくれたから、これからの時期に需要が高くなる花粉症に効く薬を作っていたのよね。


 この花粉症の症状を抑える薬だけど、とってもよく売れるのよ。

 普通の薬師が作る花粉症の薬は、せいぜい鼻水を抑制するくらいなもので、目のかゆみや、喉のイガイガに効くわけじゃない。

 だけどわたしが魔女の力を使って作る薬は、花粉症の諸症状全部に対応しているのよ。だからね、今は稼ぎ時なの。売って売って売りまくるわよ~(ラロが)。


「どーでもいいけど、この汚部屋(おへや)そろそろ片付けたら?」


 お部屋の「お」の字が違う意味に聞こえたけれど気にしない。

 散らかった部屋の真ん中。

 荷物を壁際に押しやってあけた空間で、わたしは大きな鍋に刻んだ数種類の薬草を入れていた。


 ……火? そんなものは必要ないのよ。鍋だって、ちょうどいい入れ物が鍋だっただけで、桶でもなんでもいいの。


 刻んだ数種類の薬草と水を入れて、わたしは木べらでぐるぐるとかき混ぜる。


「おいしくな~れ、おいしくな~れ」

「いや、美味しくはならないよね。この薬草たちは苦いし」

「ちょっとラロ、茶々入れないで。集中してるんだから」


 魔女の力――ラロに言わせると「魔力」というのだそうだけど――を込めながら木べらでぐるぐるとかき混ぜていくと、鍋の中に入れていた薬草が水に溶けだして、深緑の、何ともおどろおどろしい色の液体に変わっていく。


 しばらくそれを続けていくと、中の液体がだんだんと重たくもたっとして来て、だんだんと鍋の縁に張り付くような粘度のあるものに変化していくのよ。

 さらにそれをえいやほいさとかき混ぜ続けると、ある一定の固さになったところで、ピカッと鍋の中が白く光るの。


 そうすると、あ~ら不思議。

 鍋の中にたくさんの丸薬が!


 ……いつも思うけど、これはどうなってこうなるのかしらね?


 わからないけれど、これが魔女の力で作る薬なのよね。

 丸薬以外にも液体の薬とかもあるんだけど、それは薬の種類によって変わる。

 花粉症の薬は丸薬なの。というかわたしが丸薬になるように念じて作っているのよ。


 ラロの言う通り、鍋に投入した薬草類はどれもすっごく苦くて、液体で作ると、ぺろっと少量を舐めるだけで涙が出るくらいまずいのよね。

 だから、これじゃあ売れないわと、丸薬にしてみたのよ。


 するとどうでしょう。

 丸薬にすることで苦みが抑えられ、なおかつ水で流し込めるから、飲みやすいでしょ?

 おかげで売りに行けば即完売するレベルで飛ぶように売れるようになったんだって。


「ラロ。あとよろしく」

「はいはーい。今日も稼いでくるねー」


 瓶に詰めた丸薬を風呂敷に包んでラロの首に巻いてやると、ラロが「じゃ!」と右の前足を上げて挨拶して、ばびゅんと窓から飛んで行った。

 わたしは使い終わった鍋を壁際に押しやって、大きく伸びをする。


「今日のノルマ終わり~。……片付け、はまた今度にして、畑でも行くかなぁ~。そろそろあったかくなってきたし、ニンジンの種でも撒いておこうっと」


 ラロに文句を言われたからではないけど、そろそろ部屋の片づけをしなくちゃ、とは思うのよ。だけどね、どうも気が乗らないって言うか……片付けたところでどうせまたすぐに散らかるから、別にいいかな~って気になるのよね。

 たぶんわたし、性格的に片づけができない女だと思うわけよ。

 まあ、こんなことを言えば、ラロに「怠慢なだけ」って言われる気がするけどね。


 ……さ~ってと、畑を耕すついでに、今後どうするべきかって問題を、もう少し考えてみようかしら。


 エミディオから求婚されるまであと一年あるんだから今すぐに決めないといけない問題ではないんだけど、ギリギリになったら焦るばかりで名案も浮かんでこないもんねー。





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