アサレア、人生観を語る 1
お読みいただきありがとうございます(*^^*)
一度目の人生と二度目の人生について語る前に、まずわたし自身の話をしよう。
わたし、アサレアは、このサモラ王国の第三王女である。一応、血筋的に。
けれどもわたしは、王女としての扱いを受けていない。
何故なら、わたしは「魔女」だからだ。
魔女だから王女扱いされていないのは何故なのか。
その理由を語る前に、魔女とは何かを語った方がいいだろう。
昨今、その数を減らし続けている「魔女」。
一般的にそれは、他の人々にない特別な力を有している存在を指す。
魔女とは何なのか。
それを研究している研究者たちは、その力を「神の力」とも「悪魔の力」とも言う。
名称の違いは、研究者が属する国において、魔女がどういう扱いを受けているかによって左右される。
そしてここ、サモラ王国では魔女の力を「悪魔の力」と呼んでいた。
すなわち、魔女に否定的な国なのだ。
ときに一般人と魔女、という形で区別されることがあるが、研究者たちはわかっていない。
魔女も所詮は人間で、少し他人と違うことができるだけの同じ存在であることを。
魔女ができることについては、魔女自身の力によって左右される。
中には天候を左右したり、人々の感情を操ったり、誰かを呪うことだってできる人もいるようだ。
けれどもわたしは、それほど特別な力があるわけではない。
せいぜい魔女の力を使った薬を作るくらいなもので、他に特出していることと言えば、子供のときから空飛ぶ犬が周囲をうろついているくらいだろうか。
ちなみに空飛ぶ犬――ラロは、他の人には見えていない。
本人(本犬?)曰く、ラロを見ることができるのは「特別」なものだけなのだそうだ。
本当かどうかは知らないが。
さて、魔女についてはこのくらいにしておこう。
そもそも魔女であるわたしですら、魔女とは何なのかという定義を語るのは難しい。
ゆえに次の話に移るが――魔女であるわたしが王女扱いされていない理由は、サモラ王国において、魔女が忌避される存在であるからに他ならない。
サモラ王国で魔女を語る際に、切っても切れない存在がいる。
それが、三百年前の王妃、ベルナルディタだ。
文献によると、魔女だったベルナルディタは、当時の国王の心を魔女の力で縛り、強制的に自分に向くように仕向けたのだそうだ。
そして当時の国王はベルナルディタと結婚。彼女を王妃として迎える。
けれどもそれから数年後、国王の心を縛っていた魔女の力は、国王の真実の愛の前に敗れ去る。
国王は心から愛する人を見つけたのだ。
心が自由になった国王はベルナルディタを火刑に処す。
その後心から愛する人を後妻に迎え、幸せな生涯を送るのだ。
けれども国王のその幸せな生涯において、一つだけ懸念事項があった。
それは、後妻に迎えた愛する女性との間に、子供が生まれなかったことである。
国王の子は、ベルナルディタとの間に生まれた一人息子のみ。
幼くして母を失った彼は、ベルナルディタという産みの母ではなく、後妻にとても懐いていた。
しかし、彼の体の半分には、魔女の血が流れている。
国王はそれをひどく憂いて、息子に言った。
――魔女はこの国を亡ぼす存在だ。決して容認してはならぬ。
いずれ王家の血に魔女の血を引いたものが生まれた場合は、決して表に出してはならない。
国王の息子はその言いつけを守り、王家の家訓として残した。
以来、魔女の力を持って生まれた王家の子は、城の裏手にある森の中に建てられた離宮に幽閉されるようになったのだ。
そしてわたしは、百十年ぶりに生まれた、王家の魔女だった。
魔女は真っ赤な目をして生まれると言われ、その特徴を持って生まれたわたしは、五歳の時にこの離宮に移された。
そこで出会ったのがラロだが、まあこの話はいいだろう。
五歳の時に離宮に閉じ込められたわたしは、最初こそ使用人を付けられていたけれど、その使用人たちが離宮の中の金目の物を奪って逃走してからは一人で(ラロもいるが)暮らしている。
よくよく考えてみたら、一度目の人生や二度目の人生を語る以前に、生まれた時からわたしの人生はクソだな。
ちょっと……いや、かなり凹む。
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