これは薬草採取でデートではない! 2
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薬草を持って、わたしはクリストバルが片付けてくれた自室に向かった。
もちろんクリストバルもくっついてくる。
「おい、山の中にあんなに大きな狼がいるのに、ここに暮らしていて大丈夫なのか」
狼と遭遇したのがよほどショックだったのか、クリストバルはしつこいくらいに同じようなことを繰り返した。
「今まで襲われたことないし」
「今までは今までだ。これからはわからない。お前が能天気にニンジンに水やりでもしているときに襲われたらどうする」
能天気は余計よ!
わたしは二階の廊下を進んでいたけれど、はあ、と息を吐いて足を止める。
「じゃあ逆に聞くけど、ここで暮らしていて危険だったら、わたしはどこに行けばいいわけ?」
わたしは一応、幽閉されている立場なわけよ。
別に悪いことなんて何もしてないけど、サモラ王国の人たちにとっては、わたしが「魔女」というだけで悪人なの。
ここが危ないって主張したところで、誰がわたしをここから連れ出してくれると?
……玉座がほしいエミディオならもしかしたら出してくれるかもしれないけど、あいつはお断りよ!
エミディオに助けてもらったりしたら、まーた火刑に処されて殺されるかもしれないじゃない。
……あれ? でもエミディオに報復するのなら、近くにいたほうがいいのかしら? でもでも、嫌なものは嫌だし、うーん……。
悩んでも結論が出ないから、エミディオ報復計画についてはまた今度考えることにしよう。
わたしが足を止めたからクリストバルも立ち止まって、何故か思いつめたような顔をしている。
「……なんとか、する」
「しなくていいわよ。わたしを助けたって、オルティス公爵家的に何の旨味もないわよ?」
むしろ、王家とか国民とかからの心象が悪くなるから、やめておいた方がいいと思う。
「魔女と共謀して何か企んでいるとか、痛くもない腹の中を探られたくないでしょ?」
「お前は、怖くないのか」
「さあ、どうかしら? 実際に襲われたことがないからわかんないわ」
さっきの灰色の狼は何もせずに去って行ったし、それ以前に遭遇したことはない。
ついでに、自称フェンリルだとかいうラロもいる。
まあ、ラロは子犬にしか見えないからちっとも強そうに見えないんだけど、わたし一人じゃないからね。何かあった時にはラロと協力して切り抜けるわよ。
火刑になんてされたからか、たぶんわたし、一度目と二度目の人生と比べて、かなり度胸がついたんじゃないかしら?
磔にされて火をつけられるよりは、狼の方が全然怖くないわって思うもの。だって、手足を拘束されているわけじゃないから、逃げる方法はありそうじゃない?
それに、なんて言ったらいいのかしら?
さっきの狼から、悪意を感じなかったのよね。
だからあんまり怖くなかったっていうのもあるのよ。
「せめて護衛を……」
「誰が護衛してくれるっていうの?」
「うちの……」
「お断り。さっきとおんなじよ。痛くもない腹を探られたいわけ? いいからとっとと行くわよ。せっかく摘んだ薬草がしおしおになっちゃう」
「しおれたらダメなのか?」
「わかんないわ。いつも新鮮なうちに使っちゃうから」
だけど、しおれたせいでうまく薬が作れなかったら大変じゃない? また採りに行かなきゃいけなくなるもの。
そもそも、薬を作っているところが見たいって言ったのはクリストバルじゃないの。
わたしが再び歩き出すと、クリストバルは何か言いたそうな顔をしつつも大人しくついてくる。
狼に遭遇したからなのか何なのか、今日のクリストバルは、いつもよりもちょっぴり嫌味が少なめだと思った。






