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1 ――お縄につくまで5秒だけ!――

「そうは問屋が卸さないっ!」


大きく叫んだ女は深く屈む。そうかと思ったら――――人間ならざる身体能力を発揮するように、高く飛び上がった。


バネが凄いとかなんだとか、そんな次元レベルの話ではない。ハイド何人分か、大体10メートルくらいを軽々といった涼しい表情のまま飛び上がると、すぐ横の壁の上へと着地する。


「巻き込んでごめんね、全然役に立たなかったわ」


ハイドにそれだけ言って、女は向こう側、街の中心街の方へと姿を消した。


そうして残ったハイドへと、数人の兵が突撃。あっというまに両手を後ろに、地面へと叩きつけられ手錠をはめられる。


「ちょっと待ってください! 俺は何もしてない! アイツが勝手についてきただけで」


「問答無用だ」


「あぁもうなんだってんだよ!」


ガギンと金属が弾ける音がする。それはハイドが力任せに手錠を引きちぎった音であった。


そうして立ち上がり、


「これは反逆罪になりますか」


「わが国の法律はこの街では通用しないのでならないな。貴様があの女を捕らえれば無罪放免にしてやるが……どうだ?」


「元々俺は無罪なんですけどね……、わかりました。手伝いますが、少し時間を下さい」


そう言って返事を待たずに振り返り、すぐ其処にある店へと向かった。


何だか面倒な事になったなぁ、なんて愚痴を胸の中で吐き捨て、やがて前にした扉を開き、中に入る。


「いらっしゃい」


中に入ると、そこは物で溢れ返らんとばかりに、物で埋め尽くされていた。


一定の間隔を開けて並べられる長卓子、それには黒い布が被せられ、その上には煌めく宝石からかび臭い毛皮まで、なんでもござれといった風に乗っている。


そうしてその奥には、どこでも同じようにカウンターがあるように、そこは例外ではなく。そのカウンターの上に翼と角が置かれ、その前ではノラが一生懸命に何かを抗議していた。


「この翼は雨や風だけではなく、雪もひょうも、炎や熱光線でさえ見事に防ぐのです。そしてこの角は内臓魔力が並みの魔法使い以上に含まれていることで魔法的価値が非情に高く……」


熱論するノラの肩を軽く叩くと、言葉を止めた。何事でしょうか、という風な顔でハイドの顔を見ると、慌てて身体も顔と同じく振り向かせた。


「すいません、まだ5万ゴールド代から抜けられません」


「まぁ数十枚とあるならまだしも、たった一対だしな。それじゃ、5万9千ゴールドで手を打とう」


「お客さん上手だねぇ。だが高い、5万ポッキリだ」


「5万8千」


「5万4千だ」


なんて掛け合いを始めて、少しするとすぐに意見が合致。結局その翼と角は5万6千3百ゴールドとなった。


100万には程遠いが、まぁコレでも上等な方だろうなんて、金を受け取りながら考えて、ノラへと顔を向けた。


「山分けは後回し。少し手伝って欲しいことが在るんだが――――」


ハイドはノラが姿を消してからそれ以降に起こった、思い出すだけでも忌々しい出来事を話して聞かせる。


ノラはハイドの手首の、かけられたままの、引きちぎられた手錠を見て「なるほど」と納得し、


「わかりました。先ほどの女の人を捕まえればいいんですね」


と快く承諾。そうして兵の前まで戻ってその旨を伝えると、笑顔で「わかった」と握手を催促され、ハイドはそれに応じる。


そのまま大通りまで兵たちと共に行動していると、馴れ馴れしい1人の金髪が、


「ハッハッハ、災難だな」


「全くだ」


笑顔で話しかけるそれに、ハイドはぶすっと答える。


「つーか、アイツ捕まったらどうなるんだ? エッチなお仕置き?」


下っ端っぽい喋り方なので、タメ口で喋ってみると、男は特に気にせず、笑顔で答えた。


「スパイかどうか、尋問して、白だったら勝手に船に忍び込んだ罪だから、軽い罰かな。スパイだったら見せしめに殺されると思う。あの女の子に指令した国の近くでね」


「俺には関係なさ過ぎる話だな」


「戦争になりたくなかったら白い方を祈るんだね」


そう言ってまた笑う男に、ハイドは酷く陰鬱そうに息を吐いた。


そうして、やがて大通りまでやってくると、先ほどハイドを逮捕するだの云々言っていた、隊長らしき男はその場に居る全員に命令した、


「探し出せ! ハイラル! ジョウ! 貴様等は門を張り込んでいろ。他は町全体を捜索! 持ち場はそれぞれが決めて、効率よく探せ!」


大雑把な命令をすると、兵たちは大きな声で返事をした。


よくできましたと花丸をくれてやりたいほどの声は街へとこだまし、そうして解散。ハイドとノラは、怒られないようにそれに倣って街の中へと走っていった。

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