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「ドラゴンを倒しますわっ!!!」


「い、いきなりなんですか!?お嬢様!」


 レイユ・ストレーガ。

 彼女ほど悲惨な悪役令嬢もなかなかに珍しいだろう。

 八歳の頃、レイユは婚約者を宛行われるのだが、その相手はこの国の王子。

 それも、ただの王子ではない。甘やかされて育ったせいで肥え太ったとても立派とは言えないわがまま王子であった。

 そんなパートナーを前にもレイユは立派で王子を国に相応しい人へとするため、ダイエットさせたり、勉強を強制させたりすることでなんとか立派な王子へと成長させるのである。

 だが、それを煩わしく思っていた彼女の婚約者である王子はあっさりと別の女の方の方に流されていくのである。

 ここで終わればいいのだが、かなりの名家であるストレーガ家の令嬢との婚約を一方的に破棄するためにはそれ相応の理由が必要となるせいでレイユは冤罪をかけられてそのまま処刑させられてしまうのである。

 婚約者として豚を押し付けられ、それでも頑張って相手を立派にさせたら別の女に自分の男を取られた挙げ句に処決されるのである。

 ここまで自分に非がなく、可哀想な少女である。

 この悪役令嬢の悲惨さを考えると自分の妹が語っていた革命的というセリフは案外間違っていなかったのかもしれない……まぁ、妹はクズなところがいいよね!と王子を推していたが。


「私にもう一度言わせるんですの?そんな難しいことは言っていないですわ。ドラゴンを倒すと言ったのですわ!」


 そんなレイユの人生。

 だが、今の僕は僕であり、今のレイユはゲームの姿ではない。

 八歳となった僕は予定通りに婚約者として王子の肩書をつけた豚が送りつけられてきたが、それを受け入れるつもりはない。


「そ、それがわからないと言っているのです!?」


「名声を得るためよっ!ドラゴンスレイヤーの名声でもってあの豚に婚約破棄を叩きつけてやるんですのっ!」


 ドラゴンを殺して豚に婚約破棄を叩きつけるのである。


「ど、どんな理由でドラゴンを倒そうとしているのですか!?」


「じゃあ、なんですの?貴方は私があの豚の好き放題されてもいいと?自分を幼少期から面倒を見てくれた貴方はこの私があの豚の元で不幸せな未来を送ればいいと?」


「……うっ」


 僕の言葉に自分のメイドがそっと視線を逸らす。

 あの豚はしっかりと婚約の挨拶のときにもやらかし、メイドのスカートをめくるなどのクソっぷりを発揮している。

 その光景をしっかりと瞳に焼き付けていたメイドは自身の言葉をつまらせることしか出来ない。


「そ、それでも……ドラゴンを倒すというのは」


「私は知っているんですの。貴方は長き時を生きるエルフであり、その生涯のほとんどを剣に捧げてきているでしょう?貴方の力があればドラゴンを倒すこととてそこまでの難題じゃないですわ」


「ど、どうして……それを、いえ!わ、私であってもドラゴンを倒すのは至難の技なのです!ドラゴンとは最強の生物なのです!」


「問題ないですの。私がいますわっ!」


 日焼け止め魔法をはじめとする多くの美容魔法を開発してきた僕は更に時を進めて三年。

 更に魔法技術を磨いている。

 ドラゴン程度なら倒せると思う。


「いえ、ですが」


「うるさいですの!貴方はメイド!上司である私の言葉を聞くんですの!拒否権はないですわ!チクったら私が一人で行きますの」


「お嬢様ーっ!?」


 僕はグチグチ語り始めるエルフメイドを取り押さえるべく彼女の元に忍び寄ってその体へと絡みついていく。

 その際。


「……くっせぇ、ですわ」


 エルフメイドの頭の方に自分の鼻を近づけた僕は思わずポツリとその匂いの感想を漏らす。


「……っ!?」


「……お風呂に入ったのはいつが最後ですの?」


「お、お風呂ですか……?確か、三日前ですが」


「大馬鹿者ですのっ!それは臭いはずですのっ!」


 僕はエルフメイドの言葉に驚愕する。


「待ってくださいっ!そんなに臭いを連呼されると悲しいのと……あと、私くらいが普通です!毎日、それも一時間近く入っているお嬢様がおかしいのです!」


「し、信じられないですの!」


 え?異世界だとこれが普通なの……?そういえば中世の欧州なんて糞便を窓から捨てるとか聞いたことも……え?マジで毎日お風呂入らないの?三日間入らなくて自分の体がベタついても気にならないの?

 これは貴族として生まれた僕が特別裕福だから出来るだけで風呂なしが普通、なのか?

 いや、だけど。

 それだとしても家のメイドが三日に一回の入浴はないな。うん、マジでありえない。一般人が金ないのだとしても、僕はある。

 なら一緒にメイドも入れよう、うん。


「言語道断ですの!自分のメイドが臭いなんて私の沽券にも関わりますわっ!」


 エルフメイドは美人である。

 そんな美人が……臭いというのは、ちょっとそれはそれでありなような気もするけどお風呂に入っていないせいで汚れが溜まってその美しさに陰りが入るなんてことがあったら許せない。

 

「そ、そんなことを申されましても……」


「ほら!お風呂に行くですの!」


「ちょちょ、お嬢様……お嬢様ぁー!」


 僕はエルフメイドを連れてお風呂の方へと向かっていくのだった。

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