婚約破棄
「婚約を破棄致しますわっ!」
煌びやかなシャンデリアによって照らされるこの場。
そこでは一流の音楽隊が奏でる極上の演奏が響き渡ると共に、贅を凝らした料理の並ぶ多くの机を囲む貴族たちの談笑の声が響いている。
だが、それらの声があったのはつい先ほどまで。
今、この場に響いているのはたった一人の少女の声だけであった。
「貴方との関係をこれからも続けるなんてごめんですわ。ここまでで私と貴方との関係はお終いですわ」
この場全体を呑み込むような可憐な声の主。
それはこの場の中心に立つの誰もが見惚れるような美しきまだ小さき少女であった。
琥珀色に輝く縦ロールの髪に妖しく輝く紅い瞳を持つその子、レイユ・ストレーガはこの煌びやかな会場にいる者たちからその一挙手一投足を注目されながらも堂々たる態度でその場に立って言葉を響かせていた。
彼女の口から告げられるの婚約を破棄するような内容である。
「ど、どういうことだっ!?」
婚約破棄。
それを告げられたレイユの前に立つ一人の少年が声を上げる。
彼の名はクルース・アーンクラ。
サングイス王国のアーンクラ王朝の第二王子である。
「お、王子であると僕との婚約を破棄して無事で済むと思っているのだがなっ!?こ、こんなことをしてっ、許されると思ったら大間違いなんだなっ!」
自身の婚約者であるレイユから婚約破棄を通告されたクルースは動揺のままに抗議の声を上げる。
こんなものは不当であり、許されるものではないという強い言葉である。
「ご安心を。既に国王陛下からの許しは得ていますわ」
だが、それを受けるレイユの態度は揺るがない。
堂々たる態度で言葉を言い放つ。
「ち、父上っ!?」
そのレイユの発言を受け、クルースは慌ててこのパーティ会場にいる己の父であり、サングイユ王国の国王陛下でもあられる人の方へと視線を向ける。
「その通りだ」
クルースの視線を受けた国王は首を縦に振り、肯定の意を示す。
「ど、どうして……っ!」
「それは当人に聞けばいいだろう」
国王はクルースの言葉に素っ気なく返すと共にその視線をこの場の中心で輝くレイユの方へと向ける。
「な、何故……急に僕との婚約を破棄するだなんていう結論に至ったのだな!?ぼ、僕の何が……何故なんだなっ!?」
そんな国王の言葉を受けて、クルースもその視線をレイユの方へと戻してそのまま彼女へと疑問の言葉を叩きつける。
「何故か、ですって?」
クルースの言葉を受けたレイユは語るのも馬鹿らしいとでも言いたげな表情を受けべながらも答えるべく小さく息を吸う。
「くっせぇですわぁー!!!」
そして、そのままレイユは大きな声でそう宣言する。
「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああっ!?」
実に簡潔な理由。
それを受けて。
まん丸と豚のように肥え太り、夏場になれば大量の汗をかいて凄まじい激臭を放つようにこなる公害クソデブ王子は膝から崩れ落ちて鳴き声を上げるのだった。
ご覧いただきありがとうございました。
ここより少しスクロールして広告の下にある『☆☆☆☆☆』から評価することが可能です。
ブクマ登録、いいねも合わせて評価していただけると幸いです。
また、感想は作品を作る上での大きなモチベとなります。
感想の方もお待ちしておりますので、気軽にお願いします。