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096話 奴隷収容所

 

「おい、ここはいったいどこなんだ!? 俺を日本に帰してくれ!」


「※※※、※※※※※※※※」


 人形たちに訴えても相手にされない。


 同じように手錠をつけられた人間が疲れた顔をしてカズヤに話しかけてくれるが、何を言っているか分からない。



「こんな所に捕まってしまったら、いったん日本に帰るのは諦めよう。この世界の言葉を話せるようにならないと……」


 そして、体感で3ヶ月くらいが経ったときには、生活に困らないくらいの言葉と、このスクエアの仕組みが分かってきたのだ。



 スクエアにいる魔導人形には幾つかの種類があり、能力別にピラミッド型の社会になっている。


 自我や知性を持ったかしこい魔導人形が、他の魔導人形に指示をして人間を支配する、という構図になっているのだ。


 自我や知性を持たない一般兵としての魔導人形が一番多く400体ほど。


 そして、ある一定の知性を持つことで自我を得た魔導人形が約100体。人間と同じくらいの知性を持つ魔導人形が10体ほどいる。


 そのなかでもギムと呼ばれる、人間に対して非情な魔導人形が収容所のトップに立っていた。


 カズヤはそのギムに対して、上から指示を出している人間がいることまでは噂で知っていたが、どのような意図で、誰が関わっているのかまでは、まるで分からなかった。




 スクエアの中には、カズヤと同じように捕まってさらわれてきた人間たちが囚われている。特に土魔法使いと呼ばれる、魔導人形を作り出す魔法使いが多く囚われていた。


 このスクエアの魔導人形たちの目的――それは世界中から土魔法使いをさらってきて、自分達の味方になる魔導人形をたくさん作らせることだった。


 ほとんどの魔導人形は、自らを制作して戦争に駆り立てていた人間たちに恨みを持っている。


 その報復として、逆に人間を支配して魔導人形を作らせているのだ。



 囚われている土魔法使いは30人くらい。


 他にカズヤたち50名ほどの人間が、食事や衣類、家具や雑貨などの生活物資を作りながら、土魔法使いたちの生活を支えていた。


 そこで家具を造る職人の一人が、ピーナを連れてきたムルダだったのだ。



「おい、カズヤ。今日の飯はとびきり少ないぜ……」


「せっかく仲間が一生懸命作ってくれたんだ。ありがたく頂こうぜ」


 そこでの生活は、人間にとって辛いものだった。



 土魔法使いは朝から晩まで魔導人形作りを強制される。魔導人形の数を増やして、支配をさらに厳しくする片棒を担がされているのだ。


 魔導人形たちは寝る必要が無いので、スクエア内には家のような建物も存在していない。人間たち用の、雨露をしのぐための部屋が並んでいるだけだった。



 朝起こされて、仕事場へ移動させられて作業を行なう。部屋から作業場までの移動も魔導人形に監視されていた。


 食事は配給制で、少ない食事を一日ニ回しか食べられない。


 食事が必要の無い魔導人形には、食事の時間が無駄に感じられるようで、たった二回の食事も急かされて済ませる。


 そして、暗くなるまで作業が続き、疲れ果てたころに人間の居住区に戻ることが許される。



 ロボットに支配されるとは、こういう生活になってしまうのだ。


 その生活には自由も喜びも無い。与えられた環境に、ひたすら従うことだけを強要されるのだった。



 ※


 ある日、カズヤが作業を終えて割り当てられた部屋に戻ると、リナとピーナが先に戻っていた。


 スクエアのなかでカズヤが一緒に過ごしていたのは、リナと呼ばれる年配の女性とピーナだった。



「今日の作業は順調だったかい。誰も魔導人形の暴力を受けなかった?」


 リナが心配顔でカズヤに尋ねる。


 魔導人形の指示に少し遅れるだけで、暴力を振るわれたり牢獄に連れていかれてしまう。



 リナは冗談好きの明るい魔法使いで、年齢はカズヤの母親くらいの世代になるだろう。


 カズヤは彼女のおかげで奴隷生活でも希望を持って生きることができていた。



 リナは魔導人形を造るのに長けていて、スクエア内の魔導人形はリナが造ったモデルを参考にしている物が多い。


 リナは穏やかな性格で、収容所の奴隷生活のなかでも明るく過ごそうと努めていた。背筋がしゃんと伸びていて、話し方に

 何となく品格と教養が感じられた。



 このように男女関係なく、何人かがまとめて1つの部屋に押し込まれているのだ。


 カズヤはリナを世話する役割でその部屋に割り当てられたのだが、実際はカズヤの方がリナの世話になることが多く、立場は逆転していた。



「おかえりなさい、カズ兄!」


 ピーナが元気よくカズヤに飛びついてきた。


 楽しみが少ない収容所内の生活で、ピーナの笑顔がカズヤの元気の源になっていた。



 ラスピーナは身寄りがいないエルフ族の女の子で、みんなは名前を縮めてピーナと呼んでいた。


 スクエア内のピーナの立場はかなり特殊だった。



 手錠や足枷をつけようにも、魔法を使うと効果が無くなってしまう。


 ピーナは特別な魔法が使えるので、魔導人形たちもどう扱ってよいのか分からないのだ。


 ピーナに関してはスクエア囚われているというよりも、カズヤやリナに懐いて好き好んで一緒に生活している感じだった。



「こんなシケた場所にいて、よく我慢できるよな。カズヤがオイラに乗れたら、外に連れ出してやってもいいのに」


 そして、ピーナと一緒にいる口が悪い妖精が雲助だった。


 森の中で一人で泣いていたエルフ族の子どものピーナを見つけて、ここまで運んで来たのだ。


 そのせいなのか分からないが、雲助の上に乗れるのはピーナだけだ。


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