表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/316

093話 見知らぬエルフの少女

「星★評価」と「ブックマークに追加」、ありがとうございます!

今日は2話投稿します。 1/2

 

「そもそも魔導人形って、どうやって作っているんだ?」


「私も大雑把にしか知らないけど、まずは土や木、金属なんかを使って素体と呼ばれる身体を作るの。その中に制御の魔法が込められた魔石をいれるのよ、私のお母様が得意だったわ。素体が精巧だったり貴重な魔石であるほど、優秀な魔導人形ができるのよ」


 今回暴走したのは、それほど精巧な造りでもなく、貴重な魔石を使った魔導人形でもない。一般的な魔導人形の暴走だったことに、感謝した方が良いのかもしれない。



 魔導人形は兵士だけでなく、荷物の運搬などにも利用されている。


 もし、強力な魔導人形が暴走していたら大混乱は避けられない。そもそも、魔導人形が勝手に動くことは考えられていないのだ。



(これ以上何も起きなければいいけど……)


 アビスネビュラはあらゆる手段を使って執拗に攻めてくる。


 今回の事件にも、カズヤは何か嫌な予感を拭いきれないのだった。



 ※


 魔導人形の事件から数日後。


 カズヤたち四人がいつものようにセドナの旧市街を見回っていると、通りの向こうから女の子が駆け寄ってきた。


 オレンジ色がかった短めの髪で、毛先がくるくると巻いている。耳がぴょんと尖った、5,6歳くらいの可愛らしい少女だった。



 その小さな女の子はカズヤの姿を認めると、驚いたように立ち止まる。


 そして、大声をあげて満面の笑みでカズヤに飛びついてきたのだ。



「もしかして、カズヤお兄ちゃん!? やっぱりそうだカズ兄だ。やっと見つけたよ!!」


 少女はカズヤの胸に顔をうずめると、力強く抱きしめた。


 名前は合っていたが、女の子を頭越しに見てもカズヤには全く覚えがない。



「ちょ、ちょっと待ってくれ。君はいったい誰なんだ!? 誰かと間違ってるんじゃないかな」


「えっ、カズ兄、私のことを忘れてしまったの? 皆でずっと探してたんだよ。あんなに仲良くしてくれたのに……」


 無理やりカズヤに引きはがされてしまうと、女の子は声をあげて泣き出した。


 できるだけ優しく声をかけたつもりだったが、結局泣かせてしまった。



「ちょっと、カズヤ。これは説明してもらわないと困るわ」


「マスター、こんな小さな女の子を泣かせるなんて最低ですよ」


「おい、この子はエルフ族の子どもだぜ。街なかに一人でいるなんて、かなり珍しいぞ」


 アリシアとステラからの視線が突き刺さる。バルザードだけは冷静に状況を教えてくれた。



「いや、そんなことを言われても本当に知らないんだよ! ねえ、君の名前は?」 

 カズヤは女の子を落ち着かせようと、慰めながら尋ねてみる。



「ラスピーナだよ、いつもピーナって呼んでくれたじゃない。カズ兄は雲助のことも忘れたの?」


 そういって、脇に抱えていた雲助と呼ばれた、フワフワした綿のような物を見せてくれる。


 よく見ると、そいつは宙に浮かびながら少しずつ形を変えている。


 うっすら目や口のような物も付いていて、奥からこちらをジッと見つめているような気がした。



「何だこれは? 生き物なのか」


 カズヤが気になって手を伸ばすと、突然その綿雲が喋りだした。



「おう、相変わらず間抜けな顔をしてるな、カズヤ! 顔だけじゃなくて頭まで悪くなっちまったのか!?」


「な、なんだ、この失礼な奴は!?」


 綿のような形が無いものが喋り出すことも、罵倒のような口の悪さも強烈だった。



「雲ちゃんだよ。カズ兄が雲助って名付けてくれたんじゃない」


 雲助というのは確かに日本人らしいあだ名だが、こんな珍しい生き物を見たのは初めてだ。



「ピーちゃん、こいつ本当にオイラたちのこと覚えていないみたいだぜ。ボヤっとした間抜けな顔で見てやがる」


 雲助が次々とカズヤを罵倒する。



「わあ、ふわふわしてて可愛いですね!」


 可愛いもの好きのステラの食指が動く。


 だが、ステラが雲助に触ろうとしても、スカスカと通り抜けてしまう。



「お嬢さん、残念だけどオイラにさわれるのはピーちゃんしかいないんだ」


 ステラに対しては、雲助の言葉が若干柔らかくなる。


 雲助を撫でることを諦めたステラは、ピーナに寄り添ってそっと肩を抱いた。



 だが、これほど衝撃的な出会いがあっても、やはりカズヤには何も思い出せない。


「……やっぱり誰かと勘違いしてるじゃないかな?」


「いいや、ちょっと雰囲気は変わったけど、絶対カズヤお兄ちゃんだよ。ほら左腕の内側にスクエアの印が残っているじゃない」


 そう言ってピーナは、カズヤの左手首についていたあざを指さした。



 このあざは、カズヤがこの世界にたどり着いた時から付いていたものだ。


 意味ありげで人工的な感じがしたので、ザイノイドになった時にもステラがあえて残しておいてくれたものだ。



「君は、このマークの意味が分かるのか!?」


「スクエアに囚われていた証拠だよ。カズ兄はそんなことも覚えていないの?」


 囚われていた、という言葉にドキリとする。何となく頭の中がモヤモヤするが、スクエアという名前にも覚えがない。



 いっこうに埒があかないカズヤの様子を見て、ピーナは思い出話をしゃべりだした。


「カズ兄の本当の名前はキリヤマ・カズヤって言うんだよね。ふわふわして雲みたいな妖精だから、雲助って名付けてくれたんだよ」


 その名前を聞いて、カズヤの驚きのあまり立ち尽くした。


 霧山カズヤは日本にいた頃の本名だ、間違いない。日本の頃のフルネームは、ステラやアリシアにすら伝えていないはずだった。


 読んで頂いてありがとうございます! 「面白かった」「続きが気になる」と思ってくださった方は、このページの下の『星評価☆☆☆☆☆→★★★★★』と、『ブックマークに追加』をして頂けると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ