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083話 輸送手段

第3章スタートです! 今日は3話更新します。 1/3


 旧首都エストラから新首都セドナへの遷都計画は、カズヤたちの懸念とは裏腹に思いのほか順調に進んでいた。


 ここ2ヶ月ほどはアビスネビュラとの戦闘が起きておらず、カズヤたちは静かな日々を過ごしていた。



 つい先日まで、エルトベルク王国は亡国の危機にあった。


 テセウス騎士団長による王国の転覆工作を防いだことにより、この世界を支配するアビスネビュラからの報復を受けてしまった。


 しかし、侵略してきたゴンドアナ王国とメドリカ王国を完膚なきまでに叩きのめし、進軍してきたタシュバーン皇国を皇太子であるシデンの力を借りて防ぐことで、何とか乗り越えることができた。


 エルトベルクを取り囲む全ての国との対立がひと段落したことで、つかの間の平和がおとずれていたのだ。



「……どうやって住人や家財道具を運んだらいいのかな。輸送用の魔導具でもあるといいんだけど」


 セドナの新市街の建設現場で、カズヤは誰にとはなくそうつぶやいた。その声には戦場にいる時とは違った、リラックスした雰囲気が感じられる。


 25歳の日本人会社員だった霧山カズヤは、アビスネビュラとの戦いのなかで大怪我を負い、ザイノイドという機械人間に作り変えられてしまった。


 黒髪と少し冴えない顔立ちや、170cmという平均的な体格は人間のときのまま変わらなかったが、その身体の中身は、地球と比べてオーバーテクノロジーと言ってもいいほどのハイスペックな能力に変わっていた。


 剣や魔法を全く使えなかったカズヤだったが、今では百戦錬磨の剣士や魔法使いをも圧倒するほどの力を手に入れていた。


 カズヤはその力を、アビスネビュラの支配から解放される為に使うと決意していた。アビスネビュラの、人を人とも思わない非情な振る舞いを許すことができなかったのだ。


 カズヤはすでに反抗勢力の先頭にたつ一人になっている。


 これは自ら望んで決めたことであり、すでにカズヤの悲願にもなっている。地味で平凡だったカズヤの顔も、いつしか精悍さが増してきていた。



 途中まで建設されていた新首都セドナの新市街は、前回のゴンドアナ王国との戦闘や、ウミアラシの蹂躙などによって破壊し尽くされてしまった。


 その現実に直面したカズヤは、今までの努力が否定されたかのように気落ちしたが、アリシアたちの励ましもあって再び建設への意欲を燃やしていた。



 ステラが提供してくれた建設用ボットや、セドナ旧市街にいる市民たちの協力もあり、想定よりも、かなり早いスピードで以前と同じところまで復興してきた。


 そうなってくると、次に問題となるのはエストラからの市民の移動である。


 地面の空洞化によって安全性が確保されない旧首都エストラから、希望者約5万人を移住させてこなければいけない。


 カズヤはそのことに頭を悩ませているのだった。



「移動のために、魔石を使った移動用の魔導具を作ってもいいかもしれません」


 カズヤの隣には、いつものようにメイド服を着こんで静かにたたずむステラの姿があった。


 そのメイド服は常に最新の物へと変更されており、すでに彼女のコレクションは何着あるのか数え切れない程の量になっていた。



 ステラもカズヤと同じ、ザイノイドという女性型の機械人間だった。


 肩ほどまでに短く整えられた青髪と、水晶ように透明感がある視覚センサーである蒼い瞳。整った美貌は精巧な人形のようでもあり、立ち居振る舞いは計算されつくしたかのようにスムーズだった。



「新たな魔導具かあ……。輸送のために大量の魔石を使ってしまうのは、もったいない気がするな。リサイクルで作った魔石は、外貨獲得のために必要だからさ」


 カズヤはステラの意見を聞きながら、自分の黒い短めの髪をなでていた。



 この世界での魔石は、魔導具の動力源となったり、さまざまな魔法を込めることができる貴重なエネルギー資源だ。


 アビスネビュラとの戦いのなかで仕掛けられた、貿易停止とエルトベルク通貨の禁止措置は今もそのままだ。アビスネビュラに反抗する見せしめとして、周辺国から締め出されてしまっている。


 しかし、前回の戦いで出会ったシデンのおかげで、東の隣国・タシュバーン皇国とだけは一部の都市で取り引きが続いていた。その主な商品が、カズヤとステラが発明したリサイクルされた魔石だったのだ。


 その商品を移動手段の魔導具として国内で消費してしまうと、エルトベルクと他国との取引が完全にストップしてしまう。


 それを考えると、カズヤはいまいち気が進まない。



「ねえ、二人ともちょっと待ってよ。もし輸送用の魔道具を作ったら、絶対に他国には流れないようにしてね。軍事用に使われたら大変だわ」


 近くで会話を聞いていたアリシアが、慌てて話に入ってくる。


 カズヤやステラの科学力をもってすると、この世界には存在しない輸送用の魔導具すらも簡単に作ってしまいそうな気がしたのだ。



 情熱が外に花開いたかのような赤い髪と目をしたアリシアは、エルトベルク王国の王女であり、今回の遷都作業の中心だった。


 その前向きな快活さは、兵士や国民への大きな励ましになっており、カズヤも勇気づけられることが多かった。


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