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082話 第2章:エピローグ

今日は2話投稿して、第2章完結します! 第3章は1/26金曜日からスタートです!


 ついに、混乱のなかでゴンドアナ軍は全軍退却を始めた。


 カズヤたちは、逃げ出す兵士を追走する。


 今度は手加減をすることはできない。前回の戦いでは温情を見せたが、彼らは再度攻め込んできたのだ。



「二度と攻めてこれないように徹底的に叩くんだ!」


 カズヤたちはゴンドアナ軍を執拗に追い掛けた。


 ゴンドアナ軍が命からがら本国へ帰っていった時には、その数は3000にまで減っていた。



 カズヤたちは、ついにゴンドアナ王国を退けることに成功したのだった。





 ウミアラシは新市街を蹂躙したあと、ステラから餌をもらってのんびりと市内でくつろいでいた。



 ウミアラシへのお礼を済ませると、カズヤはウィーバーを使ってウミアラシを海へ戻しにいく。


 すっかり懐いたウミアラシとの別れは、カズヤやステラにとって、いつでも悲しいものだった。



 エルトベルク兵士のなかで魔法を使えなくなったのは、最終的に全体の約8割くらいであることが判明した。


 なぜ違いが生まれるのかは定かではなかったが、推測では魔術ギルドに登録した出身地が関係していそうだった。




 戦闘が終わって静かになった平原で、カズヤがほっと一息ついていた。


 すると、後ろからシデンが近付いてくる。


 黒耀の翼たちが、避難民が集まる旧市街の方で敵兵の進撃を防いでくれていたのをステラから聞いていた。


 黒耀の翼の存在がゴンドアナ軍に伝わると、旧市街へ攻め込もうとする敵兵がいなくなったのだ。



「カズヤ、見事な采配だった。あれだけの兵力を追い返せるとは思わなかったぞ」


 シデン自身も戦闘に参加していたようだが、傷ひとつ負っていない。



「今回は、お前たちタシュバーンのおかげで助かったよ。ありがとう」


 カズヤは、シデンや黒耀の翼に対する偏見をすっかり改めていた。


 ゼーベマン伯爵こそ国の利害を一番に考えていそうだが、他のメンバーは立派な冒険者たちだったのだ。



「俺が管理する国境の街で、エルトベルクと取引の一部を続けてもいい。外貨を獲得する手段の一つにしろ。俺たちにとってもいい商売になる」


「ありがたい話だが、アビスネビュラにはどう説明するんだ?」


「父上は知らんが、俺は好きで入った訳じゃない。皇太子の俺にとっては何のメリットも無い組織だ」


 シデンは自国のタシュバーンの方を眺めながら言葉を続ける。



「俺は五男として生まれたが、兄たちを退けて実力で王位継承権を手に入れた。それを見た後で、奴らが勝手に俺をアビスネビュラに入れたのだ。まあ、爺の奴は嬉しそうだったがな」


 シデンは皮肉っぽく薄く笑った。


「奴らには何の義理もないし、奴らの思想にも何の魅力も感じない。もしも俺の行く手を邪魔するようなことがあれば、奴らだって退けてやるつもりだ」


 シデンは強い口調で言い切った。


 そのままカズヤに背を向けると、街の方に向かって去って行った。




「この街を、どうしたらいいだろうか……」


 カズヤは、ステラと城壁から新市街を見下ろしながらつぶやいた。


 後ろから、アリシアとバルザードが近付いてくる。



「前回全滅させて、今回も崩壊させたんだ。ゴンドアナ軍はもう攻めてこれないはずだぜ。これだけの逆境を跳ね返したんだ、もっと自信を持てよ」


 バルザードが、励ますようにカズヤの肩に手を置いた。



「アリシア、魔法はまだ使えないままなのか?」


「そうね、でも大丈夫よ。古代魔術アルカナ・アーツを皆に教えているところなの。もちろんお金なんて必要ないし、魔術ギルドの制約もないわ」


 アリシアが明るく答えた。


 しかし、エルトベルクの通貨は他国では使えないままだ。


 他国との貿易も、タシュバーンの一部を除いてできない状態は続いている。



「……あらためて見ると、ひどい状態だな」


 激しい戦闘を終えて周囲の様子が明らかになってくると、予想通り建築していた新市街の建物のほとんどが破壊されていた。


 魔物の群れだけでなく、兵士たちの侵入もあった。なによりウミアラシが暴れ回ってくれたので、ブロックごと跡形もなく崩されている。


 一生懸命作っていた街の惨状を目にすると、さすがに精神的にこたえるものがある。



「せっかく、みんなで作った街なのに……」


 今まで費やした手間と時間を思い出し、カズヤの心が折れかかる。


「大丈夫よ、カズヤ。前向きに考えましょう。今回たくさんの魔物を倒したのよ。魔物の素材を売ればすごく潤うでしょ。売り過ぎて値崩れしないように気をつけなくちゃ」


 アリシアが努めて明るい声で励ましてくれる。彼女も戦闘によって顔や衣服が汚れていた。



「ね、だから、もう一度初めから作り直しましょうよ。この程度の被害は想定内でしょ? アビスネビュラを相手にするんだから、こんなことくらい、まだまだ起きるかもしれないのよ」


 アリシアの言葉が、カズヤの心を奮い起こした。今はその明るさに心から励まされる。



「そうだな。やると言い出した俺たちが諦めちゃダメだ。街造りを始めよう、ここからもう一度だ!」


 アリシアたちも大きくうなずく。


 カズヤたちは、改めて街づくりを進める決心を固めるのだった。





【第2章完】


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