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073話 謝辞



 操縦士を失ったグリフォンは、抵抗をやめて自国へと逃げ帰る。


 交戦することすら想定せずに進撃してきた部隊は、突然の急襲を受けて背中を見せてすぐに逃げ出した。


 しかし、みすみすこのまま逃がしてやるつもりはない。



「二度と襲ってこれないように、徹底的に追いかけるぞ。疲れ知らずなのが俺の武器だからな!」


 カズヤはゴンドアナ王国との国境付近までグリフォン部隊を追い掛けると、追撃でさらに多くの敵兵を追い落としたのだった。



 カズヤが移住者の列に戻ると、バルザードたちが落ちてきた兵を捕えていた。


「とりあえず無事に撃退できたわね」


「何度攻めてきても、空からの攻撃は意味が無いということを思い知らせないとな」



 その後も空からの襲撃があったが、全てカズヤたちが跳ねかえした。合計で3回ほど追い返すと、グリフォン部隊の数は30騎を下回っていた。


 そして最終的に、空からの攻撃はなくなった。


 エストラを出発して3日後には、何とか全員をセドナまで送り届けることに成功したのだった。




 セドナに到着すると、カズヤとアリシアは黒耀の翼を探した。


 あの後もグリフォン部隊の襲撃があったが、黒耀の翼が再び撃退してくれたとの報告があったのだ。


 黒耀の翼を発見すると、そこにはステラの姿もある。


 カズヤは思わずステラの元に駆け寄った。



「ステラ、黒耀の翼に入ったのはしょうがないが、襲撃の情報くらい教えてくれてもいいじゃないか!?」


 すると、ステラの口から予想外の言葉がこぼれた。


「もちろん教えましたよ。内部通信を使いました。しかし、拒否されていたので伝えられなかったのです」


 何だと!? なぜそんなことになってしまったのか。


 思いがけない返答に、カズヤは押し黙る。



 ステラは緊急の通信を行なってくれたのに、カズヤの方が拒否していたのだ。


 ステラが嘘をつくことは考えられない。カズヤの方にミスがあるはずだった。


「以前私がしたように、内部通信は一方的に拒否することもできます。私が情報を伝えた時には、すでにこちらからの情報を拒否する設定になっていました」



 その言葉に、カズヤははっとして気が付いた。


 思い当たる点があった。捕虜の件で、ステラと意見が食い違った時のことだ。内部通信で返答を拒否されたときもそうだ。


 カズヤはステラから目を背けて情報を拒絶した。連絡を取る気を失っていた。


 内部通信を切ったままにしていたのだ。



 二人の様子を、黒耀の翼は何事かという表情で眺めていた。


「おい、小僧。ステラは我が国の重要な国賓だぞ。気安く話しかけるのは止めるのじゃ」


 ゼーベマンが間に入ってくると、カズヤも冷静さを取り戻した。


 シデンの方へ向き直ると、深々と頭を下げた。


「シデン、ゴンドアナ軍を撃退してくれて助かった。ありがとう」


 正直、黒耀の翼にはいい気持ちを持っていなかった。


 しかし、彼らはそんなことは関係なく、冒険者としての任務をしっかりと果たしてくれたのだ。



「気にするな。市民が襲撃されていれば、相手が魔物だろうと兵士だろうと防ぐのは当然だ」


 シデンは当たり前のことで、全く気にしていないという風にさらりと言った。


「だが、お前たちがゴンドアナ軍を倒したことは、国際問題にならないのか?」


 カズヤはエルトベルクとゴンドアナ王国の問題に、タシュバーン皇国を巻き込んでしまっていないか気になっていた。



「何度も言うが、俺たちは冒険者としてここに来ている。この街の周辺の森にギガントエイプが潜んでいるのは間違いないはずだ。他の奴らが国際問題にするなら、堂々と道理を語ってやる。もしそれでも判らないなら、痛い目にあってもらうしかない」


 シデンはきっぱりと言い切った。



「シデン皇子、今回の件は深く感謝します。あなたたちのお蔭でセドナの市民を護ることが出来ました。以前は失礼な態度をとって申し訳ありませんでした」



「お前らは何を気にしているのだ。逆の立場だったら襲撃を見過ごしていたか? そんなことはないだろう、気にする程のことじゃない」


 深く頭を下げたアリシアを見て、シデンが珍しく小さな笑顔を見せる。そして、その場を立ち去った。



 シデンからは民を護るという統治者の覚悟が感じられた。


 バルザードが以前言っていた、「見た目は冷たそうに見えるが情に厚い」という噂が間違っていないことを、カズヤは実感したのだった。


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