表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/316

069話 離反

「ブックマークに追加」ありがとうございます! もう1話、追加で更新します。


 新市街では、いつものように建設用ボットがブロックを作り、それを人夫たちが運んで積み上げていく。


 建設は順調に進んでおり、新市街の建物ができあがってきた。


 完成した建物の場所に応じて、エストラに住む市民に声をかけて移住を提案していく。



 初めは渋っていた市民も多かったが、一人、二人と近所の住民が引っ越す様子を見て、提案に乗ってくる市民も増えてきた。徐々にセドナの新市街にも住人が増えてくる。


 その様子を黒耀の翼は、驚きながら見ていた。



「ねえ、カズヤ。ステラの技術を見られても大丈夫なの?」


 アリシアが心配そうな顔でカズヤに尋ねてくる。


「まあ、大丈夫だと思うよ。魔法や魔導具とは技術の方向性がまるで違うから、どんな仕組みか全く理解できないはずだし」



 黒耀の翼が建設用ボットの前で、立ち止まって作業を眺めていた。


「この魔導具は一体どんな仕組みになっておるんじゃ?」


 ゼーベマン伯爵が建築用のボットを、炎の魔法で軽くあぶりだした。



「おい、こらジジイ! 何をやってるんだ」


 バルザードが伯爵を怒鳴りつける。


「こんな不思議な魔導具で攻撃されたら、たまったもんじゃないだろう。おい小僧、カズヤとか言ったな。お主が動かしているのか?」


「俺じゃない、その女性が動かしてるんだ」



 ゼーベマンは紹介されたステラを興味深そうに見ると、勝手に声をかけてきた。


「もしお嬢さん、そなたがこれらを動かしているのか?」


「そうですけど、別に私の指示が無くても自律して動けますよ」


 ステラはあからさまに答えたくなさそうな態度で返答する。



「なんと、たった一人でこんなことができるのか!? そなたはどうやら素晴らしい魔導師のようだ。どうじゃ、私たちの国に来ないか? 最高級の待遇で迎えてやるぞ」


 ステラの技術を目にして、急に引き抜きが始まった。



「おいおい、勝手な勧誘はやめてくれないか」


 やりとりを聞いていたカズヤが、ゼーベマンをさえぎる。


 先日の捕虜の件で険悪な雰囲気になってしまって以来、カズヤとステラの関係は元に戻っていない。


 だが、さすがにステラがこんな勧誘を受けることは無いはずだった。




 しかし、ステラは少し考え込んだ様子を見せる。


「……分かりました。いつでも、私の好きな時に抜けていいなら、あなたたちのパーティに入ってもいいですよ」


「お、おい、ステラ! 本気か!?」


 思わぬ回答にカズヤが動揺する。


 ステラはそんなカズヤの声が聞こえない振りをしていた。



「もちろん大丈夫じゃ! 若、聞きましたか!?」


 思いがけず良い返答を聞けたゼーベマンは、興奮して声がうわずる。


「そなたには最高級の国賓の待遇を保証しよう。わしらについて来るがいい」


 ゼーベマンは満足そうに答えると、ステラの手を取るとその場を離れていく。


 ステラはカズヤの方を一切見ずに黒耀の翼と一緒について行ってしまった。



「ちょ、ちょっとステラ待ってくれよ! いきなりどういうことだ!?」


「すみませんが、私はもう黒耀の翼の一員なので」


 腕を掴んで引き留めようとするカズヤの手を、ステラが無情に振り払う。



 カズヤたちは呆然と見送るしかなかった。


「お、おい。ステ坊がいなかったら、機械は大丈夫なのか!?」


 バルザードが慌ててカズヤに尋ねる。



「すぐに困ることは無いと思うけど……」


 ボット達は自律して作業しているから、今の作業を続けるだけなら問題は無い。


 しかし、これから予定の変更やボット達の指示が必要になることもあるだろう。


 それをステラ任せではなく、全てカズヤ自身で行わなくてはいけない。



「あ、そうだ。こういう時こそ、あれを使おう」


 〈お、おい、ステラ。聞こえるか。本気なのか!?〉


 慌てたカズヤは、内部通信(インナーコネクト)でこっそりとステラに真意を尋ねる。



 〈……疑われると困るので遮断します〉


 〈あ、ちょっと、待っ……〉


 ステラはカズヤの質問には答えず、内部通信も断られてしまった。


 カズヤは何度も問いかけるが、ステラは最後まで応答してくれなかった。



(何なんだよ、あいつ。一度命令したくらいで敵につくなんて……)


 カズヤがマスターとしての主従関係を持ち出して命令すれば、ひょっとしたら戻ってきてくれるかもしれない。


 しかし、捕虜の件で気まずくなったことを考えると、おいそれと命令する気にはなれなかった。


 カズヤは自分から連絡を取る気もしなくなり、ステラとの内部通信インナーコネクトを切ってしまった。




 思わぬ形でステラが去ってしまったことで、カズヤの調子が狂っていた。


 そして、そういう時ほどボットの不調が続くものだ。


「このボットにどうやって指示を出せばいいのか分からないな……」



 今まで機械類の操作や整備の仕方についてはステラに頼りきりであったため、いなくなってしまった影響は大きい。


 遷都の建設スケジュールも、大幅に遅れることになりそうだ。


「今までステラに頼り過ぎていたかもしれないな。少しは自分でできるようにならないと……」



 マスターとして強引に命令したのは初めてだった。


 たしかにザイノイドであるステラは、人間であるカズヤの命令に従うようになっている。しかし、ステラが人間と同じように意思や感情を持った存在であることも分かっていた。


 ステラに命令を押し付けたことに、カズヤは少なからず気まずさを感じていた。




「カズヤ、悪い知らせが2つあるわ」


 しばらくたったある日、アリシアが深刻な表情でカズヤを呼び止めた。


 読んで頂いてありがとうございます! 「面白かった」「続きが気になる」と少しでも思ってくださった方は、このページの下の『星評価☆☆☆☆☆→★★★★★』と、『ブックマークに追加』をして頂けると、執筆の励みになります。あなたの応援が更新の原動力になります。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ