表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/316

067話 カズヤ対シデン

応援(星★評価・ブックマークに追加)、ありがとうございます!


「なんじゃ、その乗り物は!? そんな剣も見たことがないぞ」


 ウィーバーと電磁ブレードに驚くゼーベマン伯爵が騒がしい。うっとうしいのか、すでに誰も相手をしなくなっていた。



 お互いに剣を持って準備ができると、少し離れたところでカズヤとシデンが向かい合った。


 周囲にいた人夫たちも仕事の手を止めて、二人の決闘に見入っている。


「いいぜ、いつでも来い」


 シデンが煽ってくる。


「望み通り、こっちから行かせてもらうぞ!」


 シデンの挑発が戦闘開始の合図だった。



 まずはザイノイドの力任せに、カズヤが突っ込んでいく。


 バルザードの剣技をトレースした連続攻撃、以前のカズヤなら目にも止まらない強烈な攻撃だ! 


 突進の速さと威力に呼応したかのように、地面が震えて土煙が舞う。



 だが、シデンは落ち着いてカズヤの剣筋を見極める。


 目にも止まら無い太刀筋で、全ての攻撃を受け止めた。


 ぶつかりあった二つの剣が、不気味な音をたてて跳ね返った。シデンの魔法剣を相手にしても、カズヤの電磁ブレードが折れることはない。


 思いきりぶつけても壊れる心配はしなくても良さそうだ。



「いい剣を持っているな。俺の魔法剣を受け止められる剣は、そう無いぞ」


 シデンが、電磁ブレードを物珍しそうに見つめた。



「次は俺からだ」


 今度は、シデンの攻撃が襲ってきた。


「は、早いっ……!」


 バルザードの攻撃よりも速くて強い。


 両手に握られた剣の動きが、ザイノイドの視界センサーにも留まらない。


 凄まじい剣技だ。



「くそ、これじゃあ防げない、自動防御だ」


 最初の二、三撃をかろうじてかわすと、カズヤはすぐさま自動防御を発動した。


 カズヤが身体の各部に指示を出すよりも早くに、身体が自動的に動いて攻撃を防いでいく。


 これだけ攻撃が早いと、ザイノイドの目や耳のセンサーで感知できても、カズヤの頭では脳の命令が追いつかなかったのだ。



「やるな、この攻撃を防ぐのか!」


 自信があった攻撃を防がれたことに、シデンは驚きの表情を見せていた。



 二人の距離は、一瞬にして開いたり詰まったりを繰り返す。


 魔法剣と電磁ブレードが交差するたびに、周囲にまばゆい火花を散らせた。



 先手を取ろうとカズヤが斬撃を放つ。


 しかし、シデンも素早く刀で受け止める。


 今度は、シデンが巧みな足さばきでカズヤの側面をつく。


 真横からの一撃がカズヤを狙うが、瞬時に自動防御が発動して太刀筋で受け流す。


 まさに一進一退の攻防だった。



 カズヤはその間に攻撃の隙を見つけ出そうと、意識を集中する。


 しかし、シデン相手にそんな隙は見当たらない。思い切って踏み込むチャンスが、全く見つからないのだ。



「ふっ……やはり、思った通りの実力だな」


 シデンは満足そうな表情を見せる。


 Sランクのシデンの実力は、カズヤの想像を上回っていた。ザイノイドの機械としての反射能力だけで、何とか防いでいる状態だ。


 カズヤには反撃の手段が思い浮かばず、防戦一方となっていた。



「防御の腕前は分かった。ならば、この攻撃はどうだ」


 シデンは一度足を止めると、剣を持つ腕に意識を集中させる。


 そして、力を溜めたかと思うと、シデンの腕が怪しく光り始めた。



「な、なんだあれは!?」


 カズヤから驚きの声がもれた次の瞬間。


 鋭い剣先がいきなりカズヤの腕を目掛けて襲ってきた。気が付いた時には、すでに目の前に迫ってきている。



 カズヤは素早く後ろへ飛び退いた。


 だが、シデンの魔法剣がうなりをあげて追いかける。


 カズヤが背後へ飛び退くスピードよりも更に早く、シデンの剣が近付いてくる。



「く、くそっ!」


 カズヤは防ごうと必死に腕をのばす。


 だが魔法剣と接触するやいなや、カズヤの電磁ブレードが想像以上の力で弾き飛ばされる。


 手から離れた電磁ブレードは、軽々と宙へ舞っていった。



(な、なんだ、あの攻撃は!? 魔法なのか!?)


 カズヤが初めて見た攻撃だった。


 通常の攻撃ではない。魔法が込められた不可思議で強烈な一撃だ。


 電磁ブレードを弾き飛ばしたシデンの剣は威力を抑えきれず、地面に深くめりこみ土煙をあげている。



「いい判断だな。あのまま持っていたら、お前の腕ごと飛んでいたかもな」


 にやりとシデンが笑う。冗談で言っているとは思えない威力だ。


 模擬戦だというのに、恐ろしいことをする奴だ。



「まだ本気を出していないな」


「……それはお前も同じはずだろ?」


 カズヤの返答に、シデンは満足そうに笑って剣をおさめる。



「ふふ、面白い戦いだった。久しぶりに血がたぎったぞ」


 模擬戦が終わった。カズヤはホッとひと息つく。


「挨拶は済んだ。それでは、もう少しこの街に滞在させてもらうぞ」


 そう言い残すと、黒耀の翼は新市街の方へと歩いて行った。




「よくやったじゃないか、カズヤ! シデン相手にいい勝負だったぜ」


 観戦していたバルザードたちが駆け寄ってきた。


「バル、奴の最後の攻撃は何だったんだ?」


「腕に魔力をこめていたが、尋常な量じゃなかった。人並み外れた強化魔法が奴の得意技かもな」


 確かにあの攻撃をまともに受けていたら、身体ごと吹き飛ばされそうな威力だった。



 バルザードの後ろで、ステラも見守っている。


「どうだステラ、無事にトレースできたか?」


「はい、問題ありません。新たな攻撃方法として、いつでも使用できます」


 カズヤの目くばせで気付いたステラが、バルザードの時と同じように、シデンの攻撃方法をトレースしてくれていたのだ。


 冒険者として最強の剣士であるシデンの戦闘データを手に入れたのは大きい。


 シデンとの戦いで得た攻撃パターンと経験は、カズヤにとって何よりも得難い収穫となったのだ。


 読んで頂いてありがとうございます! 「面白かった」「続きが気になる」と少しでも思ってくださった方は、このページの下の『星評価☆☆☆☆☆→★★★★★』と、『ブックマークに追加』をして頂けると、執筆の励みになります。あなたの応援が更新の原動力になります。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ