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066話 模擬戦


「ほう、こんなに精巧な魔導人形は初めて見たわい」


「……おい、初対面で失礼な奴らだな。俺たちは魔導人形じゃないぞ。それに冒険者として訪れたのに、政治に口を出すのはルール違反じゃないのか」


 黒耀の翼の態度にムッとしていたカズヤは、ここぞとばかりに言い返してやる。


「なっ、なんじゃと!?」


 人形だと思っていた存在から言い返されて、驚いたゼーベマンは咄嗟に返答できない。



「それよりお前らはアビスネビュラの一員なのか? もしそうなら今すぐにでも街から出て行ってもらうぞ」


「そ、その名前を軽々しく口にするなよ、小僧! お前たちがエストラで行なったことは、すでに我々に知れ渡っているのだぞ」


 ゼーベマンが血相を変えてカズヤに反駁してくる。


 カズヤは鎌をかけてあえてアビスネビュラの名前を出してみたが、口振りからすると一員である可能性が高い。



「奴らに喧嘩を売るなんて、なかなか楽しそうなことをしているようだな。無茶な奴らは嫌いじゃない」


 だがシデンの方は、アビスネビュラの名前を聞いても顔色ひとつ変えない。


「フフッ、ここは威勢がいい人間が多いな」


 なぜか満足そうに笑うと、シデンたちは領主の間から出ていった。




「お前らは魔導人形とは全然違うさ、気にするなよ」


 バルザードがやってきて二人を慰めてくれる。


 別にカズヤは魔導人形扱いされたことは何も気にしていない。ただ、シデンとゼーベマンの二人は、アビスネビュラの言葉に反応していた。



「奴らについて、もっと情報を集めないとな……」


「黒耀の翼ですか?」


 カズヤの独り言にステラが反応する。


「ああ。話しぶりからすると、シデンとゼーベマンの二人はアビスネビュラの一員の可能性が高い。奴らからアビスネビュラについて詳しく探れるかもしれないぞ」


 彼らの動向には気を付けなければいけない。


 カズヤは黒耀の翼への警戒心を高めていくのだった。





 次の日、黒耀の翼が新首都の建設現場にやってきた。


 カズヤはしばらくの間、その後ろから付いて行くことにした。黒耀の翼が街で何をするのか分からないので、少し様子を見てやるつもりだった。



 するとカズヤの姿を見つけると、シデンの方から話しかけてきた。


「お前はカズヤとかいったな。たしかに魔力が流れていないようだが、爺の言うように本当に魔導人形ではないのか?」


「だから違うと言っているだろう、これでも人間のつもりだ」



「おい、小僧。若への口のきき方に気を付けろ!」


 王族に対する敬意の無いカズヤの言い方に、ゼーベマンが目の色を変えて突っかかってくる。


 しかし、カズヤの方が涼しい顔だ。



「お前たちは冒険者としてここにいるんだろう。それなら敬語じゃなくても構わないじゃないか」


 黒耀の翼は、冒険者と王族の立場を都合よく使い分けてくる。そのことに、いらだちを覚えていたカズヤは少し強めに言い返した。



「ふふ、その通りだ。爺、気にするな」


 シデンは楽しいことを言われたように笑って受け流す。


 アリシアもそうだったが、この世界の王族はタメ口を使われるのが、そんなに楽しいのだろうか。



「それにしても、お前からは危険な香りがする。強さの底が知れない」


 シデンは値踏みするようにカズヤを見た。


 もちろん出会ったことも無いザイノイドだが、すでに実力を見抜いているのかもしれない。



「どうだ、俺と模擬戦をやってみないか?」


「話、若! めったなことを言わないで下さい。他国の雑兵と模擬戦なんて評判に関わります」


 シデンの言葉に黒耀の翼のメンバーが色めきたった。


 パーティーのリーダーで皇太子でもあるシデンが、他国で戦闘を行なう予定は無かったのだろう。



「模擬戦か……」


 シデンの申し出をカズヤは値踏みする。


 Sランクというこの世界の最高峰の強さを見ておくのは、カズヤにとっても悪い話ではない。



「よし分かった、やろう。実剣を使うのか?」


「怖いのであれば木刀に変えてやってもいいが……」


「安い挑発だな。乗ってやるよ」


 黒耀の翼の態度に腹が立っていたカズヤは、いきおい言葉も強くなる。


 それにしても、シデンも血の気が多い皇子様だ。他国で堂々と喧嘩を売るなんていい度胸をしている。



「おいカズヤ、まさか本気でやるのか!?」


 様子を見ていたバルザードが、心配して駆けつけてきた。


「Sランクの実力を見ておくのは、悪いことじゃないかなと思って」


「まあ確かにな、めったにできる経験じゃない。やるなら、シデンが使っている剣に気を付けろよ。最高級の魔法剣だから、生半可な武器だと武器ごと斬られてしまうぞ」


 バルザードのアドバイス通り、シデンが鞘から抜いた剣は刀身が青白く輝いている。見るからに切れ味が違いそうだ。



「ステラ、何かいい武器はないかな?」


「それなら電磁ブレードはどうでしょうか。対人戦のようなアナログな戦闘は珍しいので、数は多くないのですが」


 ステラが近くに止めてあったウィーバーから、短い棒のような物を取り出して手渡した。



「これは?」


「ブラスターと同じ光線でできた剣です。これは柄の部分で、命令すると刀身の部分が出てきます」


 まさに期待したような未来的な武器だった。


 柄の部分から金属のような棒が飛び出して、その周囲にエネルギー波である光線が刀身を作り出す仕組みだ。


 意思によって、伸び縮みで長さの調節もできる。



「武器は問題ないな。……あと、この経験を無駄にしたくない。ステラ、例のあれも頼むよ」


「……あれですね。分かりました」


 カズヤがステラに目配せする。


 この世界の最強の一人と戦えるのだ。この経験を生かさない手はなかった。


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