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060話 決着


 ******



「……いくら身体が疲れないとはいえ、さすがに気持ちがもたない。もっとしっかり休みたいよ」


 戦闘が始まって7日目には、さすがのカズヤも悲鳴をあげた。


 戦い方を考えないと、このまま消耗戦が続いて負けてしまいそうだった。



「できれば、単に奴らを追い返すだけじゃなくて、しばらく攻撃できないくらい叩きのめしたいところなんだ。そうしないと、今後の遷都中に何度も攻められてしまう。奴らに甚大な被害を与えなくちゃ意味がないんだ」


「戦い方を大きく変えないといけないわ。何か考えはある?」


 アリシアの問いかけに、カズヤが頭を抱えた。



「マスター、こんな手段はどうですか?」


 ステラが提案してきた内容は、あまり効果が出るとは思えない作戦だった。


 地球でも聞いたことがあった戦法だし、そんなに簡単に狙い通り進むとは思えない。



「そんな単純な方法で、効果あるかな?」


「この手段には時間が必要です。戦闘後すぐに上手くいく可能性は低いですが、私たちが昼夜休みなく攻め続けていることが活きてきます。おそらく想像以上の効果があるはずです」


「ステラがそう言うなら、やってみようか。準備にどのくらい時間がかかる?」


「ボットを操作しながら準備するので、丸一日は必要です」


「よし、その間は最後の力を振り絞って踏ん張ろう」


 カズヤは気力をふるいおこす。ステラの準備が整うまでの辛抱だった




 翌日の夜、カズヤたちはこの日に限って夜間の攻撃をやめていた。


 そのためゴンドアナ軍は久しぶりの静かな夜を過ごしていた。


 しかし、そのときステラは完成した薬を風上から敵陣へと流していた。撒かれたことにも気付かないような無味無臭の薬品だ。



 更に次の日の朝、ステラの作戦が功を奏したことがすぐに判明した。


 ゴンドアナ軍のほとんどの兵士が起き上がることができなかったのだ。



 薬の中身は何てことはない、ただの催眠ガスだった。 


 しかし、ステラが想定していたように、ゴンドアナ軍には思った以上に効果があった。


 カズヤとステラが、7日間昼夜を問わずに攻撃し続けていたことで、兵士たちの疲労はピークに達していたのだ。


 そして襲撃がない久しぶりの静かな夜に、ぐっすりと眠り込んでしまう。


 そこに流し込まれた催眠ガスに、すっかり起き上がれなくなってしまったのだ。

 


「いまがチャンスだ、一気に攻め込むぞ!」


 相手が起き上がれないところに、カズヤたちが一斉になだれ込むと、ついに相手の戦線が崩壊した。


 ゴンドアナ軍の2000人の兵士はなんとか身体を動かして逃走したが、残った約5000人の兵士は身動きが取れずに地面に横たわっていた。



「敗走した兵士を逃がしては駄目です。ここで減らさないと、再びすぐに攻め込んできます」


 ステラの助言を受けて、カズヤたちはゴンドアナ王国の国境近くまで追走する。


 ゴンドアナ軍を完全に退却させるまでに、更に600人の兵士を減らすことに成功したのだった。



「カズヤ、ステ坊、やるじゃないか! こんなに強力な催眠ガスは聞いたことが無いぜ。うちの兵士も間違って吸い込んで、寝てる奴がいたくらいだ」


 バルザードは勝利を確信して笑い飛ばす。しかし戦果に満足しながらも、カズヤに忠告するのを忘れなかった。


「ただ、一度見せた戦法は対策されるからな、同じ効果は期待できないぜ」



 エルトベルクの兵士たち全員で、動けなくなった敵兵を縛り上げる。結果として、無力化された5000人の捕虜が出来上がった。



 ゴンドアナ王国との戦いは、なんとかエルトベルクの勝利で終えることができたのだ。





「捕らえた兵士たちを、どうやって管理しようかしら? 捕虜にするにしても、いきなり5000人を収容する建物は無いわよ」


 アリシアの頭は、すでに戦後処理に切り替わっている。



「それこそボットを使って建物を作ればいいよ。街を作るのにちょうどいい練習になる。以前に話したブロック建築を試してみよう。ステラ、どのくらい掛かりそうだ?」


「その程度の建物なら、5台全ての建設ボットを動員すれば3日で作れます」


 5000人収容とはいえ建物は一つだけだ。建設している間は、兵士たちに捕虜を見張っていてもらえばいい。



 ベルージュの街の隣に広い土地を確保すると、ボットたちの地盤整備の作業が始まった。


 その後に周囲の土砂と樹木をボットたちに投げ入れると、ものすごいスピードで成形したブロックを吐き出してくる。それを残りのボット達が積み上げる。



 ひろったブロックを最短距離で移動し、正確に積み上げていく様子は、まるで工場のようなスムーズな流れ作業だ。


 それに単純にブロックを積み上げるような作業なら人間でもできる。


 余っていた兵士たちにも手伝ってもらいながら作業すると、ステラが言ったように、たった3日で巨大な収容所が完成した。



「この人達を交渉の材料にしよう。貴重な食料に変わってくれると助かるんだけど」


 大事な捕虜を返す代わりに、遷都に必要な食料や物資を手に入れるチャンスだった。


 貴重な人材との交換だから、要求する基準さえ間違えなければ取り引きに応じてくれるはずだ。



 カズヤたちは予想外のところで、遷都の物資を集める算段がついてきたのだった。


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