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059話 奇襲


「バルくん、私たちも攻撃しましょうよ」


「えっ、姫さんと二人だけでですか!? ちょっと危ない気がしますが……」


 はるばる来たせいか、アリシアは出撃する気満々だ。



「大丈夫よ、カズヤたちの近くだから。魔法だから遠くから攻撃できるし、危なくなったらウィーバーで離脱すればいいのよ」


「運転するのは俺ですよね。姫さんが敵に近付くのだけは勘弁して下さいよ」


 バルザードの怪しげな運転で、相手の姿が見える位置まで飛んでいく。


 こちらの姿が見つかると、敵から魔法や弓矢が飛んできた。


「アビスネビュラに反抗することを決めたから、もう遠慮はしたくないの。前から試してみたかった魔法よ」


 アリシアは短く詠唱すると杖を構えた。



「フレイム・インフェルノ《疾風業炎舞》!!」



 アリシアの杖から、爆炎と暴風が同時に放たれる。


 2つが合わさって炎の竜巻となると、相手の部隊を呑み込んでいく。



「うわぁ、火だ、炎の塊だ!」


「逃げろ、とんでもない魔法使いがきたぞ!」


 ゴンドアナ軍に襲いかかった炎は、まるで龍のように地面を這い回り、さらに被害を拡大させていく。



「姫さん、そんな魔法は今まで見たことがないですよ!」


「以前ステラと練習していた、魔術ギルドが教えてくれない魔法よ。全力だとここまですごい威力だなんて、私も知らなかったけど」


 放ったアリシアもその威力に驚いていた。


 想像以上の攻撃を受け、ゴンドアナ軍はいったんその場から退却を始めるのだった。



「マスター。アリシアの攻撃と合わせて、100人程度を戦闘不能に追い込みました。初日の出来としては十分です」


 戦闘を終えて引き上げてくると、ステラが戦果を報告してくれる。



「アリシアの魔法は凄かったな。あれは何ていう魔法なんだ?」


「1000年以上前の、魔術ギルドが存在する前に使われていた古代魔術アルカナ・アーツという魔法よ。古い文献に載っていたの。以前から研究してたんだけど、テセウスが言ったことが気になってて……」


 以前の戦闘でテセウスは、「魔術ギルドの魔法だと、こんな威力しかないだろう」と言っていた。


 まるで魔術ギルドの魔法が、意図的に弱められているかのような口振りだった。


 その意味を、今のアリシアの魔法で証明してみせたのだ。



「もう少し検証は必要だけど、魔術ギルドの目さえ気にしなければ、十分使えそうね」


 アリシアは自分の研究結果に満足気だった。



 初日の様子見で、思ったよりも敵の戦力を削ることができた。


 問題は明日以降だ。兵力差にまかせて突撃されると、こちらの苦戦は必至だ。


「ステラ、俺たちは休憩する必要が無いんだ。夜のうちに相手の数を減らしておかないか」


「身体は疲れなくても、マスターの心は疲労します。大丈夫ですか?」


「まだ始まったばかりだから大丈夫だ。敵兵を少しでも減らしておきたい。アリシアたちは下がって休んでいてくれ」


 カズヤとステラは再びウィーバーに乗り込むと、暗くなり始めた敵陣へと乗り込んでいくのだった。




 カズヤたちの到着から一日遅れて、他の兵士たちも到着した。


「これが魔導人形か……」


 カズヤは初めて見る魔導人形たちの戦闘を眺めていた。



 エルトベルクが持つ魔導人形は、単純に突撃して相手の数を減らす、それだけのロボットだ。


 相手の方が数多く使っているので、魔導人形だけの戦闘だと劣勢になることが多かった。



 3日目には両軍の全ての部隊がそろった。


 それまでにかなりの数を減らしたつもりだったが、ゴンドアナ王国には7000人の兵士が残っていた。


 エルトベルク2500人の部隊とにらみあう。



 そして、ここから切れ目のない総力戦が始まった。


 カズヤとステラは昼夜を問わず、ゴンドアナ軍を攻撃する。昼間は騎士団や兵士と共に行動する。


 夜は暗くなると、戦闘を中止したゴンドアナ軍の上空から、空中砲台やF.A.と共に暗闇から一晩中攻撃し続ける。


 相手は落ち着いて寝ることもできないので、次の日の昼間の攻撃にも影響した。



 しかし、兵力差と物量の前に、二人の頑張りだけでは、どうしても限界があった。夜の間に押し込んだ以上の距離を、昼の間に取り返される。


 一進一退の攻防が数日続くと、疲れを知らないカズヤでも、心の疲労が少しずつ蓄積していった。


 自分が殺人マシーンになったのではないかと感じると、カズヤは落ち込んだ。そして仲間に激励されるたびに、たちなおって攻撃を続けるのだ。



 後方からはゴンドアナ本国から来た多くの兵士が増員されていく。


 当初見積もっていた8000人よりも、更に多くの兵士が投入されていた。


「ステラ、相手の人数はどのくらいになった?」


「6800人ほど残っています。エルトベルクは2500人にまで減っています」



 単純に考えれば無謀な戦いだった。


 しかし、アビスネビュラと戦うというのはこういうことなのだ。


 この世界の支配者から逃れるには、このような戦いに勝利し続けなければいけないのだ。




 カズヤは昼も夜も戦い続けるのだった――


 ******




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