058話 先制攻撃
魔導人形でも魔法が使えるなら、ザイノイドが使えてもおかしくないのではないか。
「でも、魔導人形の身体のなかに魔石を埋め込むのよ。魔法を込めた制御も必要だから、カズヤにはできないんじゃないかしら」
最後の希望もあっさりと無くなってしまう。
ザイノイドの身体のなかに魔石を埋め込むなど不可能だ。そんな隙間はどこにもない。それに、魔石からどうやって魔法を引っ張り出すのかも分からない。
カズヤは、この世界で魔法を使うことをきっぱりと諦めることにした。
「魔導人形は分かったよ。他にはどんな部隊があるんだい?」
「2500人の内、特別な訓練を受けた騎士は300人くらいで、攻撃魔法を使える魔道士は100人くらい。それ以外は普通の兵士よ。魔物を扱える兵士が20人くらいいたかしら」
「魔物を扱えるって、どういうことだ?」
「魔物と仲良くなって、指示を出せる才能を持っている人が稀にいるのよ。私たちはテイマーと呼んでいるわ。魔物たちを従えて一緒に戦うの。そんなにすごい魔物を操れる訳ではないけどね」
テイマーという職業は、元の世界のゲームで聞いたことがあった。だが、この世界にそんな能力をもった人間がいるのは初耳だ。
そのテイマーを利用すれば、先日のようにブラッドベアやオークの群れを使ってアリシアを襲うことも可能だったに違いない。
「とりあえず、進軍先に砲台を設置しよう。はじめに防衛ラインを決めておかないと」
ゴンドアナ王国は、こちらの4倍近い圧倒的な兵力だ。兵数と物量の差で押し切る考えだろう。
「国境沿いの街は、今から救援に向かっても間に合わないわ。国境から2番目の街、ベルージュの手前に防衛線を引くのが精一杯ね」
「よし、すぐにでかけよう。俺たちだけでもウィーバーを使って先に行くんだ」
他の部隊には後から付いてきてもらえばいい。
ボットたちを使って少しでも進軍を止めないと、途中にある街を全て占領されてしまう。
「ちょっと待って。ウィーバーを使うなら、私も一緒に行きたいわ!」
部屋から出ていこうとするカズヤを、急にアリシアが呼び止める。
「えっ、アリシアも!? 護衛の兵士たちを置いていって大丈夫なのか?」
今までと違って集団戦なので、何が起こるか分からない。アリシアの身に何かあったらと不安になる。
「敵の様子を遠くから見るだけだから、バルくんがいれば大丈夫よ。前から、そのウィーバーっていう乗り物に乗ってみたかったし」
アリシアの勢いに押され、止めることはできなかった。
「姫さんが行くならもちろん俺様も行くぜ。……でも、そのウィーバーって奴は苦手なんだよなあ」
呼び寄せた2台のウィーバーを見て、バルザードが珍しく弱音をはく。
残りの部隊にてきぱき指示を出すと、アリシアはカズヤの後ろに乗り込んだ。
「……そういう席順になるのですか」
ステラが若干不服そうな顔を見せる。
「ん、ステラとバルが乗ればいいだろう?」
「バルちゃんと乗るのは嬉しいんですけど……」
それ以上は何も言わずに、黙ってウィーバーに乗りこんだ。
*
エストラからベルージュの街までは、徒歩で1日はかかる距離だ。だが、ウィーバーを使うとあっという間だ。
現地に到着すると、すぐに固定式の砲台を”上空に”設置する。
「こいつのエネルギーはどのくらい持つんだ?」
「可動し続けると、たった1年くらいしかもちません。使い方には十分注意してください」
「そ、そうか。短いな……」
毎日使って、弾丸の補充無しに1年ももつのなら十分過ぎると思うが、ザイノイドの感覚だと足りないのだろうか。
いずれは他の武器に変えなければいけないが、さしあたっては大丈夫そうだ。
「おお、見えてきたな! 先遣隊だからか、思っていたより少ないな」
「1000人ほどの部隊ですね」
遠くの山の方に、ゴンドアナ軍が到着したのが見えた。すぐさまステラが人数を教えてくれる。
「砲台まで引き付けてもいいけど、バルとの特訓の成果を試してみたい。不意打ちで相手の数を減らしてくるよ」
「心配なので私も同乗します。念のためF.A.《フライトアングラー》も10機ほど随伴させましょう」
「カズヤ、いきなり敵陣に突っ込んでも大丈夫なの?」
「危なくなったらすぐに離脱するよ。本番前の肩慣らしだ」
カズヤはF.A.を従えて、先遣隊の横から突撃を開始する。
「な、何だ、空からの攻撃だ!」
「エルトベルクには、空中部隊はないはずじゃなかったのか!?」
離れたところから、ブラスターから射撃する。一般兵の魔法防御が高いことはほとんどないので、ブラスターの光線は効果的だった。
ゴンドアナ軍は宣戦布告と同時に進撃したつもりだったが、いきなり反撃されて驚いているようだった。
「バルくん、私たちも攻撃しましょうよ。今のうちに新しい魔法を試しておきたいの」
「えっ、姫さんと二人だけでですか!?」
はるばる来たせいか、アリシアは出撃する気満々だった。
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