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056話 ゴンドアナ軍

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「……その取引、私がやったらダメかしら?」


「えっ、アリシアが!?」


 リサイクルした魔石の扱いで、アリシアから思いもかけない提案が飛んできた。



「それだけ大きな事業を商業ギルドに任せるのは不安だわ。どこまで信頼出来るか分からないし、お金儲けだけを優先されたら困るのよ」


 言われてカズヤは納得する。


 確かにこれは国家事業として行うようなレベルの話なのかもしれなかった。



 首都を移転する時だって、計算高い商業ギルドは協力することすら表明していない。そんな所に頼むくらいなら、身内にやってもらった方が信用できる。


 アリシアなら信頼出来るし、ロイヤルブランドの信用力は大きい。


 最初の取り引きはアリシア本人が顔を出さなければいけないが、その後はアリシア直属の部下が取り引きを続けたっていい。



「もちろん問題ないよ。むしろ、その方がいいかもしれない。この件はアリシアに任せるよ」


 神妙な顔をして聞いていたアリシアの顔が、パッと華やいだ。


「任せておいて、問題が起きないように慎重にやるわ」


 アリシアは腕をまくってやる気をみせる。


 国の為に無理をしているのかもしれないが、魔法や楽器から商売まで多才なお姫様だ。



 まずはステラの指示で中型から大型の空っぽの魔石をたくさん集めてもらう。


 エストラの屋台の隅に山ほど捨てられていたように、空っぽの魔石はただの廃棄物なのであっという間に集まった。ひどい時には、道端に捨ててある空っぽの魔石もある。


 そして、ボットを使って一般の人が使わないような魔泉をセドナ周辺で探し、そこで半自動的に魔石を生産し続ける。


 できあがった魔石を販売すれば、移住への足しにはなるだろう。



 昼夜休まず作り続けるボットたちのお陰で、価値が高い魔石が莫大な価格で取り引きされていく。


 遷都を前にして、貴重な資産が少しずつ築きあげられていくのだった。




「マスター、北方にあるゴンドアナ王国の兵士が、国境を越えてエルトベルクに侵入してきました。このまま放置すれば2日後にはエストラに到達してしまいます」


 テセウスを捕えてから10日後、ステラがカズヤに大きな異変を報告した。



「急にやってきたな。でも、ゴンドアナ王国はメドリカ王国とかいう国と交戦中じゃなかったっけ?」


「ゴンドアナ王国とメドリカ王国は、すでに2日前に停戦しています。衛星からの情報によると、戦闘地域からすでに両部隊が撤退しています」


 カズヤの疑問に、ステラがすぐさま答えてくれる。以前打ち上げていた衛星が、ここでも役に立った。



 カズヤは、国王とアリシアにも急いで伝える。


 唐突な情報にも、アリシアは取り乱した様子は見せなかった。


「もともと怪しいとは思っていたけど、ゴンドアナ王国も裏でアビスネビュラに操られていたのね」



「アリシア、すまないけど国同士の位置関係を教えてもらってもいいか?」


「分かったわ」


 地図を広げながらアリシアが説明してくれる。


「私たちエルトベルクは3つの国と国境を接しているの。北側がゴンドアナ王国で東側がタシュバーン皇国。そして西側にメドリカ王国があるわ」


挿絵(By みてみん)



 今回はエルトベルクの北に位置する、ゴンドアナ王国が南下して攻めてきたということか。



 すると慌てた様子の兵士が、部屋の扉をノックする。


「失礼します! ゴンドアナ王国の使者と名乗る一行が、陛下に面会を求めています」


「さっそく、やってきたな」


「すぐに会おう。謁見の間に連れてこい」


 国王がすぐさま返事をする。



 使者と国王との会見が終わると、アリシアやカズヤたちは国王に呼ばれた。


「わざわざゴンドアナ王国が宣戦布告してきたのだ。すでに軍隊が国境を越えているというのに、恥知らずなことだ」


 国王はあきれた様子で嘆息した。



「しかし、お父様。今さら宣戦布告してくる理由はあるのですか?」


「今回の出兵に対して自国民を納得させるためだろう。国境付近にある村が、エルトベルク軍に襲われたと難癖をつけてきおった。襲撃された村にエルトベルク軍の武器や防具が落ちていたらしい。まったく言いがかりも甚だしい。我が国はそれどころでは無いというのに……」



「ステラ、本当にそんな事件が起きていたのか?」


「たしかに3日前に襲撃された村がありますが、攻め込んだのは自分たちゴンドアナ軍です。自国の兵士にエルトベルクの装備を持たせて、これ見よがしに落としていっただけです。いつものように自作自演して、国民の不満を煽って目線をそらしたいだけです」



 自分たちに都合がいい事件を自ら起こす。そしてその騒動を利用する。


 この世界に来てから何度も経験している政治手法だ。カズヤはテセウスの件で、すでにお腹いっぱいだった。



「それで、奴らの兵力は?」


「現時点で確認できるのが7834人です。今後増える可能性もあります」


「約8000人か……、多いな」


 多数の兵士がぶつかり合う集団戦闘は、カズヤにとっても初めてだった。


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