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054話 チート


 カズヤは期待をこめて、魔泉に触れてみる。



「どうですか、マスター?」


「やっぱり何も感じないや。ステラはどうだ?」


「普段は作動しないようなセンサーが反応しています。これが魔力というものなのかもしれません。魔力を調べるいい手がかりを見つけました」


 やはり魔力を感じないということは、カズヤに魔法が使える可能性は無さそうだ。


 あらためて駄目押しされたようでがっくりくる。



「以前にも話したけど、魔力を持っていても魔術ギルドと契約しないと攻撃魔法は使えないのよ。契約や継続するにも高いお金がかかっちゃうしね」


 アリシアが魔術ギルドへの不満を、ため息混じりでこぼす。


 その話はカズヤも覚えていた。



「もし、魔法契約を継続しなかったらどうなるんだ?」


「もちろん、魔法は使えなくなるわよ。魔術ギルドの本部には巨大な魔石があって、その魔石で情報を管理しているみたい」


 魔石には、パソコンの巨大メモリーのような働きもできるようだ。魔法を使えないカズヤにとっては、関係ない話ではあるのだが。



 ただ、この魔泉を見ていて、カズヤにあるアイディアが湧いてきた。


 そのアイディアを、すぐさまステラに伝えてみる。


「……分かりました、やってみます。医療用のボットを流用すれば可能かもしれません。それにしてもマスター、今日は随分頭を使うんですね」


「ま、まあな……」


 まるで普段は使ってないような言い方だが、最早このくらいでは動じない。



「とにかく、それが出来れば大きな収入源になるかもしれないんだ。頼んだぞ!」


 ひょっとしたら、エネルギー革命に匹敵するような大発見になるかもしれない。


 カズヤの頭は妄想でいっぱいになり、自然と心が浮き立ってくるのだった。





「ここがいつも模擬戦で使っている場所だぜ。辺りに人や建物は無いから、遠慮なく戦えるんだ」


 お気に入りの練習場所に到着すると、バルザードが自慢気に紹介する。


 そこは開けた平らな大地で、少し離れたところに森やゴツゴツした山肌もある。たしかに、色んな条件で練習するにはうってつけかもしれない。



 カズヤはあらためて剣の握り方から教えてもらう。


 構えから振り方まで教えてもらうが、バルザードからすると、それ以上は実戦でないと上手く伝えられないらしい。


 さっそく剣を握ってバルザードと模擬戦をしてみる。


 だが、当然のように全く相手にならない。何度立ち向かっても、コテンパンにやられてしまった。



「おかしいな、自動防御を使っているからバルの攻撃をかわせるはずなのに……」


「それは、今まで弱い相手としか戦ってないからだぜ。カズヤは攻撃が苦手で防御しか出来ないのを俺様は知っているから、攻撃し続けられるんだ。どんなにカズヤが強くても、手の内がばれてたら相手は遠慮してくれないぜ」


 さすが戦闘経験が豊富なバルザードだ。速度や腕力では人間を遥かに上回っているはずだが相手にならない。



「ちなみにマスター。ザイノイドには相手の攻撃をトレースする機能もありますが、使いますか?」


 ひととおりバルザードに負けまくって、カズヤがいじけそうになっている様子を見て、ステラが提案してきた。


「なに、そんな便利な機能があるのか!? 何でもっと早く教えてくれないんだよ!」


「マスターが、バルちゃんにコテンパンにされるのを見たかっただけですけど。どうしますか?」


「もちろん使うに決まってるだろ、頼むよ」


 ステラは相変わらずひどいことを言っているが、いちいち突っ込んでいる暇はない。



 するといつものようにステラは、おでことおでこをくっつけてくる。


 鼻先がかすめそうな距離まで近づくと、視線をどうしたらいいか分からない。温かく柔らかな感触が、じわりと額から全身に広がるようだった。


 おでこに指示を出すセンサーでもあるのだろうか。


 カズヤには、相変わらずこの動作の必要性がよく分からない。以前と同じように緊張で固まるが、すでに心臓が無いので心拍数が上がることはない。



「はい、これで大丈夫です」


「お、おう。ありがとう……」


 カズヤはぎこちなく返答する。


 攻撃をトレースする方法を身につけると、バルザードの攻撃を一度見るだけで、すぐさま同じ動きを再現できるようになった。



「おいおい、その機能は卑怯過ぎるぜ! 俺様の攻撃がすぐに真似されちまうじゃないか」


「今後の戦いの為に必要なんだ。バル、出し惜しみ無しで頼むぜ」


「俺様の経験が全部奪われるようで納得いかねえけどな……。まあ仕方がねえ。姫さんと国のためだ、全部教えてやるぜ。それより、俺様は槍の方が強いんだからな。ちゃんと覚えておけよ」


 ぶつぶついいながらも、バルザードは全面的に協力してくれた。



 トレースしたバルザードの攻撃方法と自動防御を合わせると、次第に模擬戦でバルザードを圧倒できる回数が増えてきた。


「わかったよ、もう降参だ! これだけやっても、まったく疲れないなんて信じられないぜ」


 疲れ知らずのカズヤの攻撃を受け続けて、ついにバルザードが白旗をあげた。


 

「ありがとうな、バル。これで少しは貢献できそうだ」


 これで、さらに戦闘で活躍できる機会が増えるはずだ。カズヤは自分の戦闘力が高まったのを実感した。



 ちなみに、カズヤとバルザードが模擬戦を繰り返している間、ステラは少し離れたところでアリシアの魔法の練習を手伝っていた。


 ステラがボットに持たせた的を動かし、その的をめがけてアリシアが魔法を唱える。


 キャアキャア言いながら独自の魔法を練習するアリシアと、それに付き合うステラ。


 二人だけの楽しそうな様子が見れたのは、この前の演奏の効果かもしれなかった。


 今までも二人の仲が悪い訳ではなかったが、何となく更に距離が縮んだような気がするのだった。


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