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051話 新首都・建設計画


「それで、遷都後のエストラはどうする予定なんだ?」


 帰ってきたアリシアから教会訪問の話を聞いたカズヤは、疑問に思っていたことを尋ねた。


「本当は危険だから立ち入り禁止にしたいけど、移住したくない人たちの為に残しておく必要があるかもね。どのように統治したらいいのか分からないけど……」


「命の危険があって移住するのですから、退去後のエストラは強制的に壊してしまったらどうですか?」



 悩んでいるアリシアを、ステラがばっさりと一蹴した。


「それはちょっと極端な気がするけど……。ただ、崩落の空洞を見ても、それでも住みたい人がいるのなら、無理に排除することはできないかもな」



 遷都するのは統治上のやむを得ない判断だが、全ての人を強制するのは違うかもしれないとカズヤは感じていた。


 宗教や信条、愛着などの理由で残りたい人がいるかもしれない。危険であると警告したうえで住みたいのなら、その人達の判断は尊重されても良いはずだ。



「ところで、セドナ旧市街の隣に新首都を作るのよね。どういう街を作るの?」


 アリシアが頭を上げると話題を変えた。


 反旗を翻したエルトベルクを、アビスネビュラが放っておかないことは間違いない。その前に、できる限りの準備をしておこうと相談していたのだ。



「遷都先の街の地理が分からないと困るだろうから、どうせならエストラと全く同じ配置しようと思ってるんだ。そうすれば迷うことはないだろう?」


「なるほど、それは良い考えね!」


 アリシアにもその狙いが伝わったようだ。



 エストラは平らな土地の上に作られた円形の都市だ。平坦な土地さえあれば、同じような配置で作ることは可能なはずだ。


 新首都セドナが今まで住んでいた街と同じ配置なら、自分の家の場所の目星もつく。住んでいた家や街がそのままの姿という訳にはいかないが、場所さえ同じであれば少しは愛着が湧くかもしれない。



「ステラ、エストラの今の住人の数はどれくらいになったんだ?」


「61790人ほどです。出入りがあるので若干の誤差はありますが」


 ボットを使った情報で、ステラはすぐさま正確な数字を答える。最初に訪れた時にはエストラの市民は、7万人くらいいたはずだ。


 今回の騒動で街を出てしまったのかもしれないが、ざっくり10000人近くの人が犠牲になってしまったということだ。



「移住を希望しない人がいるかもしれないけど、余裕を持って全員が移住できるくらいの規模は必要だな。それどころか、今後の発展を考えたら10万人規模の街を作ってもいいかもしれない」


「そうね、私もそんな国作りがしたいわ。ただ問題は具体的にどうやって建物を建設するかよ。建築関係の人材は、技能や人数も限られているし費用だってかかる。残念だけどエルトベルクは裕福な国では無いから、無制限に作れる訳では無いわ」


 現実的な話を持ち出すと、アリシアは悩まし気に頭をおさえた。



「ステラ、宇宙船のなかに建設用のロボットはどれくらいあるんだっけ?」


「小型のボットが3台、中型が2台だけです。そもそも私たちの宇宙船は調査を目的としているので、大型の建設用ボットは1台も持ってきていません。調査用の研究所や拠点を作るくらいしか使うことがありませんので」



 ステラの報告を聞いてカズヤは肩を落とした。


 期待していたよりもかなり少ない。それだけのボットでは都市を建設するのは難しい。その代わりに、調査用のF.A.(フライトアングラー)やバグボットたちが沢山いるのだろう。



「ちなみに、その建設用のボットというのは、どんなことができるんだ?」


「建設に関する全ての作業を、自律して昼夜休みなく行なえます。地ならしから杭打ち、壁や屋根の設置から資材作りもできます。ただ、どの程度の家や建物を作るかによりますけど」



「……どの程度とは?」


「例えば上下水道の配管や、冷暖房設備はどうするんですか?」


「ハイカン? レイダンボウセツビ……?」


 アリシアが聞き慣れない言葉を呪文のように繰り返した。



「そんな未来都市を作りたい訳じゃないよ、今の街と同じような家でいい。上水道は共同の井戸で、下水は汲み取りだろ。冷房は無さそうだけど、暖房は魔法を使ってストーブを利用しているみたいだし」


「仮にそうだとしても、ボットの建築速度には限界がありますよ。全てをボットに任せたら何年もかかります」


 たった5台のロボットで10万人都市を全部作れという方が無理だろう。



「例えば、エストラに多い二階建て一軒家を建設するのには、どのくらい時間がかかるんだ?」


「地盤が整備されていて資材が用意されている前提なら、小型ボット3台を使って30分ほどで作れます。5万世帯なら……3年くらいかかる計算です」



「さすがに3年も掛けられないと思うわ」


 アリシアが横から口をはさむ。


 たしかにアビスネビュラはそんなに長い間待ってくれないだろう。少しでも早く実現したい。


 何かいい方法は無いかと、カズヤは頭を絞った。



「俺様の地元では、家なんかレンガを積んでチャッチャッと作ってたんだが、それじゃあダメなのか?」


 家造りを簡単だと思っているのか、気楽な調子でバルザードが口をはさんだ。



「そうね、レンガを積むだけだと不安定な気がするけど……」


「いやそうか、その手があったか!」


 アリシアはバルザードの提案を柔らかく否定する。



 だがカズヤは、その言葉である方法を閃いた。


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