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046話 戦争


 カズヤは昼も夜も戦い続けていた。


 混沌とした戦場には火花と土煙が舞い上がり、地面は血で濡れている。ゴンドアナ軍の兵士は連携して攻撃を仕掛けながら、次々と迫ってくる。


 カズヤが素早く相手と距離を取ってブラスターを放つたびに、敵兵が次々と倒れていく。


 魔法防御で強化されてブラスターの光線が効かない敵が迫ってくると、至近距離まで近付いて実剣で斬り倒す。


 敵兵が一人、二人と倒れていった。



 広く混沌とした戦場のなかで、カズヤの存在感は絶大だった。


 戦場でのカズヤは、この世界にたどり着いた時とは打って変わって落ち着いていた。剣と魔法の異世界に転移してしまったことが、今までの性格から大きく開き直るきっかけを与えていたのだ。



 思いがけずロボット人間として生まれ変わったことで、過去の自分を吹っ切った思い切りの良さも感じられる。ザイノイドになったことによる葛藤と苦悩は、カズヤの人間性に新たな深みをも与えていた。


 くせっ毛混じりの黒髪はザイノイドになった姿でも再現されており、黒い瞳の奥には弱い者に対する優しさが隠れている。


 元の世界では取り柄が無い平凡な人間だったからこそ、権力や武力で虐げられる人たちのことは他人事では無いように感じていた。



 そんなカズヤの後方から、ステラによる強烈な援護射撃が飛んできた。


 その光線はカズヤのブラスターよりも遥かに大きく、桁違いの破壊力だった。戦場でもメイド服を翻しながらステラが構えるフォトンライフルは、身長よりもはるかに長くて大きい。


 雷のような轟音を響かせて敵陣に降り注ぐ攻撃は、ゴンドアナ軍の兵士にとっては畏怖の対象でしかなかった。


 生まれながらのザイノイドであるステラは、人間を殺すことができない。ステラのライフルによるレーザー攻撃は、相手を麻痺させて攻撃不能になるように設定されていた。



 ステラの華奢な細身と、青く短い髪は混沌とした戦場でも目立っていた。青く水色がかった瞳はガラス細工のように繊細で、300年以上ものあいだ一人きりで宇宙船に身を潜めるほどの深い孤独と静かさを秘めていた。


 白く瑞々しい肌は機械仕掛けであることを感じさせないほど、きめ細やかで美しい。ステラの人形のような精巧な美しさに、心惹かれてファンになる兵士も多かった。



 指示が無いときはカズヤのそばで物静かに佇んでおり、時折見せる人間離れした冷静な言動をカズヤは頼もしく感じていた。


 地面の上を滑るように動くステラの動きは優雅で、風に舞う花びらのように洗練されていた。



 そこから少し離れた別の戦場では、エルトベルク王国の王女であるアリシアが、幾重もの攻撃魔法を放っていた。


 アリシアの赤く豊かな髪は、まるで夕焼けを思わせるかのように輝いており、風が吹く度に火の粉が舞うようになびいている。


 同じくらい深く赤い瞳は燃えるような情熱を秘めていて、知性と愛情をあわせもった眼差しは、見る者の心をつかんで放さなかった。



 その美しい容姿に加えて、アリシアの品のある立ち居振る舞いや言葉遣いは、彼女が高貴な血筋であることを感じさせた。


 アリシアの杖の先から複数の真っ赤な炎の塊が生まれると、風魔法に乗って敵陣へと降り注ぐ。炎と風の魔法をかけ合わせたアリシア独自の魔法だ。着弾と同時に大爆発が起こり、無数の敵兵の身体が空中に舞った。




 そして、そのアリシアの周りには護衛の兵士の輪ができている。その先頭では濃い紫の毛に覆われたバルザードが、鬼神のごとき姿で立ちはだかっていた。


 バルザードは鋼のような堅固な肉体を持った狼系の獣人で、身体のあちこちに戦場で受けた傷がついている。その傷は彼にとって武勲や誇りの一つであり、威風堂々とした貫禄のある振る舞いに繋がっていた。



 世界でも有数の元Sランクの冒険者であったが、今はアリシア直属の護衛として専念している。


 猫のようなしなやかさで襲い掛かり、獅子のような力強さで敵を粉砕していく。戦場でのバルザードはまさに勇者であり、口からは覚えず獰猛な唸り声が漏れていた。


 バルザードの足元にはすでに何人もの敵兵が倒れており、まさに獣のような攻撃で近付くものを全て薙ぎ払っていた。




 カズヤたちの攻撃力は、広大な戦場でも異彩を放っていた。カズヤは休むことなく敵の脅威に立ち向かっていく。



 しかし、彼らの圧倒的な攻撃力がありながらも、二国間の兵力差は大きかった。


 3000人のエルトベルク軍の兵力に対して、ゴンドアナ軍は8000人以上の兵士を投入している。カズヤたちがいくらゴンドアナ軍を倒せども、敵兵の数は一向に減った様子を見せない。



<……マスター、また敵の増援です。東の方向から300>


 ステラからの内部通信がカズヤの頭の中に響いた。次から次へと敵兵の数が増えていき、攻撃の手はゆるむ気配がない。


 今日の戦闘が始まってから、すでにどれだけの時間が経ったのか分からない。こんな戦闘が、すでに何日も続いていた。



 カズヤの心は大きく乱れていた。


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