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045話 第1章:エピローグ

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「ザイノイドにだって心はあると思うんだよ。だから、ステラの気持ちだって本物じゃないかな」


 ステラは一瞬、思考が追いつかないかのように動きを止める。



 しかし、わずかな沈黙が続いた後、肩の力をふっと抜いた。


「もう、マスターのくせに難しい話をしないでくださいよ」


 照れくさそうに、ステラはふわりと笑う。



「……でもそんな優しさが、とっても嬉しいです」


 それはまるで悩みの霧が晴れたような、心の底から湧き上がる笑顔だった。



(こんな表情を浮かべられるなら、もう本当の心と呼んでもいいんじゃないかな)


 カズヤはそう思ったが、言葉にはしなかった。


 すでに自分なりの答えを見つけたのだと、ステラの笑顔が教えてくれた気がしたからだ。




 テセウスに加担してきた近衛兵や兵士たちは、その場で捕らえられる。


 国王とアリシアが兵士と観衆に語りかけ、今までの騒動に決着がついたことを宣言する。


 大きな歓声が巻き起こり、国王とアリシアを讃える声が広場に響き渡った――




 *


 王宮の一室に、カズヤとステラ、アリシアとバルザードと国王の5人が集まっている。


 広場での事態が収まると、カズヤたちはすぐさま王宮に戻り、今後の国の方向性について協議を始めたのだ。



「皆の者、この度は助けてもらって感謝する。国として今後どうするのか、できるだけ早く決定して行動しなければならない」


 国王の額のシワが増えているのを見ると、ここ数日の出来事の大きさが感じられる。



「今回の騒動で、我らがアビスネビュラと敵対することがはっきりした。奴らが今回の件を放置するとは思えない。これからは奴らの執拗な攻撃が始まると思って間違いないだろう」


 敵をよく知る国王が断言するのだから間違いない。カズヤたちは、この世界の支配者と戦う覚悟を決めたのだ。


「この国でのアビスネビュラの振る舞いは決して許せません。徹底的に戦いましょう」


 カズヤの言葉を聞いて、国王は大きくうなずく。



 奴らの自分勝手な振る舞いのせいで、何千という命が失われてしまった。ひょっとしたらエルトベルクだけではなく、他にも多くの国が被害にあっているかもしれない。


 奴らの悪意ある計画は、全て打ち砕かなくてはいけないのだ。



「まずは、この街の崩落をどうするかが問題よ。何とか安全性を確保することはできないかしら?」


「残念ながら地下の空洞は巨大すぎます。この崩落を抑える技術や資源を手に入れるのは、この世界ではほぼ不可能です。この場所から離れることをお勧めします」


 アリシアの質問にステラが答える。



「そう、辛い決断になるわね……」


 誰よりもこの街を大好きだったアリシアには、苦しい決断に違いない。


 しかし、すぐに顔をあげて前を向く。



「……でも、落ち込んでばかりもいられないわ。住民の安全が確保されないなら、出来るだけ早くにこの街を離れましょう」


「この街を放棄して、住人ごと別の場所に避難するしかないだろうな」


「しかし、どこへ避難するんだ? これだけの人数を受け入れられるような大きな街は、近くにはないぞ」


 カズヤの発言を聞いたバルザードが懸念を口にする。



「たくさんの住居を作るだけの平地は、近くに無いのか?」


「徒歩で三日ほどかかるけど、セドナの街の近郊には広大な平地が広がっているわ。ただし、今は魔物の巣窟になっているけどね。どうするの?」


 意図を測りかねるようにアリシアが答える。



「簡単だよ。そこの魔物を掃討して新しい都市を一から建設するんだ」


 カズヤの言葉に全員がハッとする。


「おいおい、7万人もいる王都の住民を全員移住させるって言うのか? 奴らが黙って見過ごすわけはないだろう」


「残念だけど、今はもう6万人ちょっとだ。それに全員が移住に協力してくれるとは限らない」


 カズヤが冷酷な現実を確認する。



「それでも、地盤に不安が残るこの街に居続けるわけにはいかないだろ。それなら新しい土地を探すしかない。街の地盤は不安定だけど今すぐに崩落するわけじゃない。次の街の準備をしながら、できるだけ迅速に移住してもらうんだ」


「そんなこと現実にできるのか!?」


 想像もつかない大事業に、バルザードが思わず声をあげる。



「ステラが持っている技術で可能な限り協力はする。期待するほどの効果は出せないかもしれないけど」


 残念ながらステラの宇宙船は、惑星の調査を目的としたものだ。


 小規模の基地や研究所を建設する機器や資材は残っているが、何万人もの住民の建物を造るにはまったく足りていない。



「途方もない計画ね。でも、やるしかないわ」


 アリシアは覚悟を決める。


 確かに常識外れの計画だ。6万人もの人が移動するための手段、移動中や移動後の食料や生活物資。


 アビスネビュラからの攻撃や、移動中に魔物の襲撃を受ける可能性もある。やらなければいけない準備も、必要な物資も山ほどある。


 しかしこの場所に留まっていては、崩落や襲撃の危険から逃れられない。



 そしてカズヤにとっては、移住だけの話ではなかった。


 異世界に来てから次々と変わる状況に翻弄されていたが、もう元の世界には戻れないと心の底では理解していた。


 この世界で生きるのなら、アビスネビュラは無視できない敵だ。すでにカズヤが標的になっている可能性も高い。


 それならば、やることは決まっている。


 悪を倒して平和に生きられる世界を取り戻すのだ。



「そうだ。やるしかないんだ……!」


 決意のこもったカズヤの言葉に、全員が心を引き締めるのだった。




【第1章完】


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