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041話 処刑台

 

 三人が地底の空洞から帰還するとほぼ同時に、国王が処刑されるという情報が入ってきた。


 依然として二人の居場所はわからなかったが、この後、広場で処刑される予定だ。少なくとも国王は姿を見せるはずだ。


 テセウスなら国王の罪状を訴えて裁くことを、自ら喜んで行なうに違いない。それならば、その場にアリシアを連れてくる可能性も高いはずだ。


 カズヤとステラは広場全体を見下ろせる建物の屋上に身を隠していた。



 しばらくして大きな喚声があがる。


 壇上にテセウスが姿をあらわしたのだ。いつものような鎧姿ではなく、すでに国王にでもなったかのような豪華な衣装に身を包んでいる。


 王者がつけるマントには金の刺繍がほどこされ、首に下げられたネックレスにはいくつもの大きな宝石が輝いていた。



「……広場にお集りの諸君、今回の災害で犠牲になった方々に深く祈りを捧げたい。災禍を防げなかったことは騎士団長として痛恨の極みである。そして、国王の暴走を止めることができなかったことも、私はとても悔いている」


 テセウスは殊勝な顔をして演説をはじめた。



「今回の悲劇は、ここにいる国王の裏切りによって起こったものだ。それは、この街が不安定な地盤の上に建てられていたことを、長年のあいだ国民に隠していたからだ。そのため今回の災害によって地面の崩落が引き起こされてしまった」


 崩落の引き金になった爆発については触れていない。


 あくまでも自然災害として処理して、国王に責任をなすりつけるようだ。



「ただ安心して欲しい。この街の脆弱な地盤は先日崩落したエリアだけである。他の箇所で崩落が起きる心配は無い」


 カズヤたちが目にしてきた空洞は、街全体の下にあった。


 他の場所も崩落の危険性があるのに、明らかな嘘をついている。



「国王は他にも間違った政策を続けてきた。私はそれらを全て改善しようと考えている。今後は自国のことだけを考えずに、他国や他人のことを思いやる力が必要だ」


 テセウスは今回の崩落にかこつけて、今までの施策を全てアビスネビュラの意図通りに変えるつもりだろう。



「今回の崩落の悲劇は、全て国王の裏切りから起こったものだ。この責任は国王にしっかりとらせよう。そしてこの国は私とアリシア姫が協力して支えていくことを約束する」


 アリシアが建物内から姿を現わすと、より一層大きな歓声が起こった。


 アリシアはうつむき加減で表情は見えない。



「実は私とアリシア姫は以前から秘めた恋仲であった。このような国難にあたっては、もはや隠すつもりはない。二人で手を取り合ってエルトベルクの未来を支えていくのだ!」


 アリシアが望んでそこにいないことは明らかだった。従わないと街の崩落が起きる可能性があるので、国民のために我慢しているのだ。


 テセウスは民衆を見渡すと、満足そうな笑みを浮かべた。



「代償を支払ってもらう時がきた。国王の首をはねよ!」


 テセウスの指示により、国王は縄を引かれより高い場所へ運ばれる。そこでは斬首するための処刑人が待機している。


 国王はみすぼらしい罪人の服を着せられているが、目はまっすぐと前に向けられていた。



「……マスター、そろそろです」


「よし、始めよう!」


 もちろん全てを手をこまねいて見ているわけではない。


 さあ、テセウスの企みを全てひっくり返してやるのだ。


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