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040話 独壇場

 

「次は俺に行かせてくれ。全部ひとりで仕留めてみせる」


 カズヤは力強く言い切った。


 新たな工作兵を見つけると、カズヤは剣を握りしめて走り出した。剣の握り方も使い方もわからないが、一般兵が相手ならもはや負ける気はしない。


 まずは通信用の魔導具を手にした兵士に突撃した。



「て、敵襲だ!!」


 叫んだ兵士が、あわてて通信しようとするが間に合わない。


 カズヤが魔石を奪い取ると、真っ先に叩き潰した。


 逃げようとする兵士に足払いすると、倒れた兵士は困惑した顔でカズヤを見つめた。



「お前らは何者だ!?」


「ただの通りすがりだよ」 


 カズヤが剣をへし折ると抵抗する気を失って、兵士は降参したように両手をあげた。



 他の兵士たちも襲撃に気づいて反撃してくる。


 カズヤには相手の剣術を抑える技術は無い。兵士の攻撃をまともにくらう。


 しかし、ザイノイドの身体はびくともしない。



 すばやく兵士の腕をつかむと、一気にひねりあげた。


「痛ててっ! なんて馬鹿力だ!」


 常人の何十倍もの腕力があれば、相手は抵抗できない。


 難なく地面に押さえつけた。


 敵の攻撃を正面から受け止めて、全て弾き返す。


 相手が勢いに負けて押し返されたところで、次々と体当たりをして意識を失わせた。



 背後で驚くバルザードを尻目に、カズヤはひとりで拠点を制圧してしまった。


「すげえな、カズヤ! Sランク冒険者も真っ青だ。俺様でも敵わないかもしれないぞ!」


「だから、ザイノイドも悪くないと言ったんです」


 ステラだけは、カズヤの実力に納得顔だ。


「危ない感じはしなかった。これ位のことはひとりでも大丈夫だ」


 カズヤはザイノイドの身体が秘めたポテンシャルを実感していた。



「ただ、剣の使い方がまったくわからないから、体当たりしかできないんだよな……」


「マスター、攻撃に専念するために防御を自動化しますか? 視覚情報をそのまま手足に伝えて、自動的に身体が反応するように設定できますけど」


「なんだ、その便利機能は!? ぜひ使わせてくれよ」


 防御を自動化できるなんて初耳だ。そんなことが出来るなら早く言って欲しい。



「わかりました。それでは、そのまま立っていてください」


 そう言うと、ステラはカズヤの傍に近寄り、自分のおでこをカズヤのおでこにくっつけた。


「ス、ステラ!?」


 視界いっぱいにステラの顔が大写しになる。長いまつ毛が、今にも顔に触れそうだ。


 驚いたカズヤはどきまぎして身体が固まってしまう。


 顔が真っ赤に染まることは無いのが、ザイノイドになって良かったことなのか寂しいことなのか。



「……これで大丈夫です。あと防御のために、いつでも両腕から電磁シールドを出せますので」


「お、おう、ありがとう。それじゃあ奴らに気づかれる前に、残りを一網打尽にしてしまおう」




 カズヤが先頭をきって洞窟の中を走っていく。


 ステラ経由のバグボット情報で、兵士たちの居場所は筒抜けだ。全ての地点で、工作兵に見つかる前に先制攻撃をくわえていく。


 防御が自動化されたカズヤは、攻撃に専念するだけだ。



 戦闘を重ねるたびに、ザイノイドの身体の使い方がどんどん上手になっていく。


 今までの鬱憤を晴らすような勢いで、カズヤはほとんどひとりで全ての拠点を制圧してしまった。



 爆破に関係する全ての魔石を回収すると、ホッと息をつく。



 これでテセウスが市民を人質にとって、地面を崩落させる心配が無くなった。


 あとは、是が非でもアリシアと国王を助け出すだけだ。




 *


 エストラの街外れの広場に多くの市民が集まっていた。



 今日、広場で国王が処刑されると発表されたからだ。


 広場近辺は崩落が起きておらず、観衆の視線の先には処刑台が用意されている。ここは市民にとって、街の多くの出来事を見守ってきた特別な場所だった。



 街の崩落という悲劇が、慕われていた国王のせいだと発表されたときは、多くの国民は信じられずにいた。


 しかし、国王の責任を追及する立て札が次々に立てられると、今まで積み上げていた信頼が少しずつ揺らいでいく。


 そんな国王の噂が本当かどうかを確かめるために、市民は広場に集まってきたのだ。



 そしてこの時までにカズヤたちは、まだアリシアと国王を助け出せずにいた。


 三人が地底の空洞から帰還するとほぼ同時に、国王が処刑されるという情報が入ってきたからだ。


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