033話 繰り返される悲劇
その直後、耳をつんざくような轟音が空気を切り裂いた。
地面が割れるほどの衝撃。 街道が沈むように大きく揺れ、きしんでいた壁が崩れて石材が落ちてくる。
カズヤは振動の中で転がりながらも、どうにか地面に手をついた。
足元が地震のようにぐらついているが、歯を食いしばりながら何とか立ち上がる。
目の前には、崩れ始めた街の悲惨な光景が広がっていた――
立派な石造りの建物が音を立てて傾き、粉塵が舞い上がる。
泣き叫びながら逃げ惑う者。動揺してその場から動けなくなる者。崩れた建物に押しつぶされそうになりながら助けを求める者。
街のなかは今朝よりも更にパニックになっていた。
この揺れが、街の崩落につながるとわかっているからだ。
「くそっ……少しでも助けないと!」
衝撃から崩落までの時間はほとんどない。
すぐにでも逃げ出さないと、より多くの犠牲者が出てしまう。
カズヤは迷わず、逃げ遅れた人々の中へ突っ込んだ。
「みんな、逃げろ!! この地区も崩壊するぞ、急げぇ!!」
カズヤはありったけの声で叫びながら街を駆け抜けた。
瓦礫の下に倒れ込んでいた青年を引っ張り上げて背中を押す。恐怖で足がすくみ座り込んでいた女性を起き上がらせる。
カズヤは住人を次々と助けながら、さらに奥へと走り続けた。
カズヤは街の崩落が自分のせいだと感じていた。
知らなかったとはいえ、カズヤが何度もアリシアを助けたことがこの悲劇に繋がっている。
(俺の余計な正義感のせいかもしれない……)
考え過ぎかもしれないとは思う。
しかし、この世界とは関係のなかった自分が介入したことにより、予定には無かった崩落が起き、住民を巻き込んでいる。
その責任を強く感じていた。
「あっ……あの少年は!?」
崩落を始めた街道の端で、カズヤは逃げ遅れたひとりの少年を見つけた。
その顔に見覚えがある。
あの串焼きをくれた屋台の少年だ。
足が地面の亀裂にはさまってしまい、身動きがとれなくなってしまっている。恐怖に顔を歪ませて、助けを呼ぶこともできない。
「おい、大丈夫か!?」
「お兄ちゃん、足が……足が抜けないんだよ」
急いで駆け寄ったカズヤは、必死で足を抜こうとする。
だが割れ目へと深く挟まった足は、なかなか抜けない。
少年を傷つけないように、カズヤは慎重に足を引っ張り上げる。
ドゴォォォッ!!
しかし突然、少年の足元の近くで新たな爆発音が聞こえた。
さっきよりも近い場所で爆発が起きたのだ。
爆発の衝撃で少年の足が抜ける。
地面が持ちあがるように突き上げられ、カズヤの身体が宙に浮く。
とっさにカズヤは、少年を街の方へと突き飛ばした。
強固な石畳でできた街道が、おもちゃのブロックのように崩れ始める。
カズヤは自分の真下に、大きくて暗く深い穴ができたのを目にした。
「……マスター!!」
遠くからステラの声が聞こえた気がした。
カズヤは視界の端に、ウィーバーに乗ったステラの姿を見つける。
力いっぱい手を延ばす。
しかし、ステラの手を握ることはできない。
ステラの叫び声を遠くに感じながら、カズヤは奈落の底へと落ちていった――
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