313話 終局
「これで……終わりだぁ!!」
カズヤは奇術師の力で空高く飛びあがると、首を目掛けてプラズマブレードを叩きつける。
しかし強靭なゴルドヴァイスの皮膚は、なかなか斬り裂くことができない。
「まだまだだ! グラビティ・コマンド《重力操作》!!」
カズヤは自分自身に奇術師の腕を発動させる。
プラズマブレードを握りしめるカズヤの身体を、強烈な重力波が包み込む。自身の身体を地面に引き付けて、かかる重力を一気に加速させていく。
何十台もの車と同じくらいの重力がカズヤを襲い、その全ての重さを首元に集中する。
重さと勢いを増したカズヤの全身が、ゴルドヴァイスの首に沈んでいく。
「いっけえええええ!!」
ゴガガガアアアッッッッッッ!!
喉元を押さえつけられたゴルドヴァイスが断末魔をあげる。
剣と一体となったカズヤが首を貫き両断した。
さすがのゴルドヴァイスも、首をはねられては生きていけない。
全身から力が抜けると、だらしなく大地の上に横たわった。
カズヤたちは凶悪な異星魔獣を倒したのだ。
*
「くそ、まさかゴルドヴァイスまで倒すとは……」
戦いを終えたカズヤたちが、ゼイオンのもとに向かう。
そこではゼイオンが焦りと苛立ちを隠せずに立っていた。
カズヤたちがゴルドヴァイスと戦っている最中、ゼイオンは何度もその場から逃げ出そうとしていた。
しかし事前に動きを察知したステラがボットを操作して、逃がさぬように居場所を特定していた。
さらにパーセルがレオたちの活躍で軍事衛星を奪取すると、常にゼイオンを射程に捉えていた。
ゼイオンはゴルドヴァイスの戦いが終わるまで、その場から身動きがとれなかった。
「どうした、自慢の召喚魔法はこれでお終いか? あの化け物を、もう一度呼んでみろよ」
カズヤの挑発に、ゼイオンは悔しそうに歯ぎしりする。
もし召喚魔法をもっと使えるのなら、ゴルドヴァイスをたくさん呼び寄せていたはずだ。
しかし魔法が思うように発動しない。部下に調査させるばかりで、ゼイオンが地球に来たのは今回が初めてなのだろう。
地球では魔力が小さくなることを甘く考えていたのだ。
「ゼイオン。元はといえば、自分が犯した罪のせいだと分かっているのか? 地球という辺境の惑星を見下して、あわよくば支配しようとしていた。……だが残念だったな。地球のことをよく知る俺が、惑星イゼリアに来たのが運の尽きだ。お前の計画は台無しだぞ」
カズヤの言葉を聞いたゼイオンは、最後の悪あがきを企てる。
ふところから隠し持っていた装置を取り出すと目の前にかかげる。禍々しい赤い紋様が刻まれている小さな機械で、不気味に黒く光っている。
「私に近付くな! 街を含めて爆破してしまうぞ、私から離れろ!」
しかしカズヤは、見え透いた恫喝には動じない。
「やれるもんなら、やってみな。お前みたいな臆病者が自爆なんてする訳ないだろう」
相手にするまでもなく、ただの脅しだ。
今までのように相手を威圧し、優位に立ちたいだけなのだ。
カズヤはゼイオンを一瞥すると、わずかに視線を横に動かす。
その瞬間——。
「……は、何だ!?」
ゼイオンの手の中にあったはずの爆弾が、ゆっくりと浮かび上がる。
しっかりと握っていたはずなのに、まるで重力を失ったかのようにフワフワと宙に浮いていく。
ゼイオンは驚愕の表情を浮かべて必死に手を伸ばすが、爆弾は指の間からスルリと抜けていった。
「危ない物を見せびらかしたら駄目なんだよ!」
元気な声が響いたかと思うと、透明だったピーナの姿が浮かび上がってくる。
まるでちょっとした忘れ物を届けるかのように、無邪気な笑顔を浮かべてカズヤに爆弾を渡した。
「神様よ、これで終わりか?」
鋭く突き刺さるようなカズヤの言葉に、ゼイオンの身体が硬直する。
「なに、身体が動かないぞ……!」
カズヤのグラビティ・コマンド《重力操作》でゼイオンの動きを止めたのだ。
「上等なザイノイドの身体だけど、使い方を何も分かっていないな。部下にやらせるだけで自分で行動しないからだよ」
「私は特別なのだ! 他の人間どもは、私にひれ伏すべきなのだ!」
「違うよ、他の人もそれぞれみんな特別なんだ。自分だけが特別だと勘違いしたのが、全ての誤りだ」
「くそ……マグロス、私を助けろ!!」
しかし、隣に立っているマグロスの反応がにぶい。
マグロスは予想もしない言葉を口にした。
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