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308話 軍事衛星

 

「ステラ、急いでパーセルに連絡してくれ。今すぐ地球に行けないか聞いてみる」


 するとステラが繋ぐよりも前に、パーセルからの内部通信インナーコネクトがカズヤの頭に飛び込んできた。



<……カズヤ殿、レオたちを通じて情勢は把握しています。ゼイオンを捕まえるのは私たちの任務です、むしろこちらからお願いします。犯罪者ゼイオンを捕まえるために一緒に地球に向かってくれますか?>


「もちろんだ! すぐに宇宙船を寄越してくれ」


 ゼイオンを捕まえるため、カズヤたちは再び地球へ戻ることになったのだ。



 パーセルとの連絡を終えると、クインがカズヤに近寄ってきた。


「カズヤさん。私はここに残って、ゼイオンが乗っていたアビスネビュラ号を調べてもいいですか。私たちを縛っている、クライシス・モード《危急情勢》を解除したいんです」



「えっ!? クライシス・モード《危急情勢》を解除できるのか?」


 調査隊の司令官によるクライシス・モード《危急情勢》には、ステラやクインも苦しんでいた。


 もし戦闘型ザイノイドを任務から外すことすら出来るなら、ルガンたちの束縛を解くことができるかもしれない。



「私なら解除可能です。600年間この時を待っていましたから」


 強い意志を秘めた目で、クインはカズヤを見つめる。


 クイン自身、クライシス・モード《危急情勢》に縛られて苦しんでいた。どうやったら外せるか、600年ものあいだ常に考えていたにちがいない。


「分かった、それじゃあ任せたよ。俺たちはゼイオンを追う」



 カズヤたちは、サルヴィア聖都に着陸したパーセルの宇宙船に乗り込んだ。


 まさか再び日本を訪れることになるとは、夢にも思っていなかった。


 当然のことながら、惑星イゼリアに転移してきてしまった10人の日本人も乗せていく。全員が無事に帰れることを喜んでいた。


 しかし本当の安全は、ゼイオンの企みを阻止してからでないと保証できない。



「ステラ、その装備は……!?」


 気が付くとステラが、両手両足を戦闘型の装備に変えようとしている。


 以前カズヤが付けるのを諦めた、両腕が極端に太く大きくなったロボットのような部品だ。



「ゼイオンの武器が分かっていないので、なりふりかまっていられません、戦闘が終わったら戻しますから」


 男性用の部品なので、つぎはぎ感がある。


 見た目の違和感は大きいが、強そうなことは間違いない。



 ふとステラが交換の手を止めて、カズヤを見つめる。


「……マスター。こんな腕を付けたら、私のことを嫌いになりますか?」


「いいや、もちろんそんなことは無い。一緒にゼイオンを捕まえよう」


 カズヤの言葉は穏やかだったが、その覚悟は確固としたものだ。


 ステラはニコリとしてうなずくと、再び交換作業に取りかかる。




「それでは皆さん、地球の次元へ飛びます。軽い衝撃に備えてください」


 パーセルの言葉で、全員の顔に緊張が走る。



 まさかアビスネビュラとの戦いを地球で終わらせることになるとは、カズヤは夢にも思っていなかった。


 “地球からイゼリアへ飛ばされたカズヤが、イゼリアの苦難を地球で解決する”


 想像もしていなかった数奇な運命に翻弄され、カズヤはえも言われぬ想いがわき上がってくる。



 以前と同じように宇宙船が軽く振動すると、すぐに揺れが収まる。


 たったこれだけで、別次元の地球へと移動できた。


 カズヤも宇宙船の窓から外をのぞく。再び懐かしい地球の姿が目に入ってきた。



「んっ……何かおかしいな?」


 しかし、すぐにカズヤは以前との違いに気が付いた。


 前回見えていた他星人の宇宙船が見えないのだ。前回は少なくとも5機の宇宙船が見えていた。



「皆さん、未確認の攻撃です! 衝撃に備えてください!!」


 突然、艦内にパーセルの警告が響いた。


 その直後、宇宙船が激しく揺れて衝撃音が響く。



「ど、どうしたんだ!?」


「ゼイオンが地球に軍事衛星を持ち込んだようです。前回は無かった兵器が衛星軌道上に3機飛んでいます。すみません、攻撃を避けるために惑星イゼリアに戻ります」


 想定外の事態に、コマンドセクター《指令区画》にいるパーセルの顔色が変わっていた。


 言い終わるよりも前に宇宙船が軽く揺れると、再び惑星イゼリアの上空へと戻ってくる。


 振り出しに戻ってしまったが、攻撃を逃れてひと息つく。



「なんて用意周到な奴なんだ……」


 この軍事衛星は、カズヤたちへの防御ではないかもしれない。惑星イゼリアはノヴァコラプス《星界破壊弾》で破壊したつもりだからだ。


 おそらく地球の支配に利用するためだ。


 デルネクス人の技術力で軍事衛星を飛ばされたら、地球の科学力では太刀打ちできないに決まっている。衛星による攻撃で脅しつけたら世界征服も容易いだろう。



「それと他の宇宙人たちの船が見えないが、どうしたんだ?」


「巻き込まれるのを恐れて逃げ出したようですね。他星人は当てにできません、私たちで解決しましょう」



「そうは言っても、軍事衛星を迎撃する方法はあるのか?」


「この宇宙船には、軍事的な攻撃に対する有効な武器はありません。あるとすれば人力だけです」


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