305話 ノヴァコラプス
カズヤは軽く肩をすくめると、隣でちょこんと立っている”最後の手段”にお願いする。
「……すまない、ピーナ頼めるか?」
「いいよ! 雲ちゃん行くよ!」
「よし、オイラたちの出番だぜ!」
カズヤは最後の切り札、ピーナに全てを託した。
雲助に乗り込んだピーナが、ふわふわとドームの壁に向かって飛んでいく。
姿は半透明だが、熱探知やスペクトル機能でピーナの存在は見つかってしまう。侵入を感知したアビスから無数のミサイルが飛んできた。
しかしミサイルは、当然のようにピーナの身体をすり抜ける。
ピーナと雲助は、涼しい顔で飛んでいく。
「な、なんだあの子どもは!? ミサイルが通過するなんて、どういう仕組みだ!」
ザイノイドのレオたちが驚いている。
それはそうだろう。
ピーナの透明化魔法は科学では説明がつかない。ステラですら理解不能なのだ。
さらにピーナがアビスの表面に近付くと、雨のようなレーザー光線が降り注いでくる。
しかしピーナと雲助は平気な様子だ。いつもの散歩に行くような気軽さで、ドームの裏側に侵入することに成功した。
「なぜ攻撃が当たらないんですか!? あの子はいったい何者なんですか!?」
驚愕したクインが、カズヤに詰め寄ってくる。
「ま、まあ、ピーナは特別なんだよね……」
説明しきれないカズヤは、苦笑いで誤魔化すしかない。
やがてアビスドームの壁の内部から爆発が始まった。
ピーナが機械の内側から、水鉄砲のようにブラスターを撃ちまくっているのだ。
ルガンやジェダのような動く相手は難しいが、動かない兵器はピーナにとって敵ではない。
鉄壁の要塞アビスを、ピーナが内部から破壊していく。
ピーナと雲助の移動にともなって爆破する場所も移動していく。爆発が連鎖しながらアビス全体に広がっていった。
ピーナがぐるりと一周する頃には、堅固な要塞はもろくも崩れ去っていた。
「こんな攻撃は全く想定していません……」
アビスの製作者であるクインは、驚き過ぎて言葉が続かない。
少し気の毒な気もするが、ゼイオンを追いかけるためには仕方がなかった。
「カズ兄、もういいよ! ここなら雨の日でも遊べるね!」
「物騒なものは壊しちまったから、快適に使えるな!」
満面の笑顔でピーナと雲助が戻ってきた時には、全ての防御装置が機能しなくなっていた。
鉄壁の防御兵器アビスは、ピーナと雲助の手であっさりと破壊されたのだった。
*
カズヤたちは破壊されたドームをくぐり抜け、ゼイオンが入った奥の通路へと追いかけていく。
「こ、これは!?」
先頭を走るカズヤは、通路の先の大きな部屋で立ち止まった。
部屋の中央で、天井につきそうな程大きな魔石が明滅している。アリシアが魔法契約を移動させた魔石も大きかったが、さらに10倍はありそうな巨大な魔石だ。
その魔石が、まるで時限爆弾のように明滅しているのだ。
「これがノヴァコラプス《星界破壊弾》です。惑星すら簡単に粉々にできる魔石爆弾です。ゼイオンは本気で星ごと無くすつもりなのです」
悲しそうな口調でクインが解説する。
自分が逃げるために惑星ごと破壊するなんて、どこまで身勝手な男なのだ。
「できるかどうか分かりませんが、爆発を止められないか試してみます。カズヤさんたちはゼイオンを追ってください」
すぐさまクインが、ノヴァコラプス《星界破壊弾》の操作を始める。
「よし、俺たちはゼイオンを探そう」
爆弾の処理をクインに任せると、カズヤたちはさらに建物の内部を走っていく。
すると突然、通路の奥から大きな爆発音が聞こえる。
カズヤたちが爆発場所にたどり着くと、部屋の壁と天井が崩れていた。その部屋には無数の魔石が敷き詰められている。
そして床には、魔法陣が書かれた跡が残っていた。
「くそ、魔法陣を使って逃げたのか。アリシア、この魔法陣の行き先が分かるか!?」
「……いいえ、これでは無理よ。複雑すぎるうえに、かなり壊れているもの」
アリシアは不可能だというように顔を横に振る。
このままではゼイオンを追いかけることはできない。
カズヤは苦悶に満ちた表情でその場に固まった。
「マスター。この建物のどこかに、日本からの転移者が捕まっている可能性がありますけど」
「……ああ、そうだったな」
ステラの言葉で、カズヤは大事なことを思い出す。
ゼイオンはマグロスを使って、日本からの転移者たちを捕まえていた。この建物のどこかに囚われている可能性がある。
建物の中をくまなく探すと、すぐに10人ほどが閉じ込められている部屋を見つけた。その顔つきは間違いなく馴染みのある日本人だった。
「みなさん、日本語は通じますか?」
「……き、君は、日本人なのか!?」
捕らえられていた日本人たちから、歓声があがる。
カズヤは部屋の扉を破壊すると、全員を助け出した。
「ここでゼイオンに何をされていたか、教えてもらえますか?」
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