293話 カズヤ参戦
「ステラ。パーセルと話したいんだが、すぐに繋げてもらえるか?」
クインとの戦闘を終えると、カズヤはすぐにパーセルに連絡する。
600年前の出来事をパーセルに伝えるためだ。
「……600年前にそんなことがあったんですね。そうと分かれば、ゼイオンを捕まえるのは私たちの任務です。もちろんカズヤさんたちに協力しますよ」
アビスネビュラのトップが、デルネクス人の犯罪者・ゼイオンであることが判明した。
600年前に同僚を殺害して調査船を乗っ取った犯人が、今でも生きている。
そのゼイオンを捕らえるのは、パーセルの部隊に課せられた任務の一つだ。
「そのために、アトモスという巨大なA.F.A.《アサルト・フライトアングラー》を倒したいんだ。パーセルの宇宙船に主砲とか積んで ないのか?」
「600 年の間に、そんな物を開発していたんですか。すみませんが、この宇宙船はただの調査船です。戦艦ではないので攻撃手段を持っていないんです」
やはりパーセルの宇宙船で攻撃することは出来ないようだ。
空飛ぶ円盤・アトモスが厄介なのは、その機動性だ。
宇宙には行けなくても、旗色が悪くなる度に素早く逃げられたら手の打ちようがない。
「それじゃあ、さっきA.F.A.開発者のクインと相談していた、こんな手はどうだろうか?」
カズヤは、クインのアドバイスで思いついた方法をパーセルに伝える。
「……分かりました。予想外の方法ですが、それが有効だと判断したんですね。可能ですが準備するのに少し時間をください」
まるで空軍のように衛星軌道上で待機していたパーセルの宇宙船も、急に慌ただしさを増してきた。
カズヤがパーセルとのやり取りを終えた直後、今度はフォンから内部通信が入った。
カズヤは深刻な表情で報告を聞いている。
「……アリシア、フォンから連絡があった。開戦と同時にハルベルト軍の魔法が使えなくなったらしい。フォン自身が最前線に乗り込むしかないようだ」
いつかはバレると思っていたが、手の平の上で躍らされていただけかもしれない。
魔術ギルドは魔法を使えなくするのに一番効果的なタイミングを狙っていた。
「エルトベルクの時と同じね。魔術ギルドの仕業で間違いないわ」
「やっぱりバレていたんだな。シデンたちの援軍が到着して形勢を持ち直しているらしいけど、何か手を打たないと……」
カズヤとアリシアが考え込む。
「アリシア。前に話していた研究を、ここで試してみたらどうかな?」
「えっ、あの研究のこと!? こんな大事な局面で、いきなりうまくいくかしら……」
カズヤの提案に、珍しくアリシアが自信なさそうにうつむく。
「やってみなきゃ分からないよ。それに別に失敗したって損はない。うまくいかなかったら次の手を考えよう」
「……そうね。やらないで後悔するよりも、まずは試してみることね。分かった、やってみるわ」
カズヤの言葉で、アリシアは覚悟を決めた。
「そうと決まったら、すぐに魔石のところに向かわなくちゃ。カズヤはフォンくんを助けに行って」
「えっ、一緒に行かなくても大丈夫か!?」
「首都には敵軍はいないから、バルくんがいれば大丈夫よ。ピーナちゃんも来たんでしょ?」
「そうだな、分かった。俺たちは戦場に加勢しに行く。頼んだぞ」
「……あの、カズヤさん。私も行かせてください!」
横で会話を聞いていたクインが、悲壮な顔でカズヤに進言する。
この戦闘の原因の幾つかが、自分にあると感じているのだ。
「クインが来てくれると助かる。ウィーバーに乗ってくれ」
クインは戦闘型ではないがザイノイドだ。以前のステラくらいの戦いはできるはずだ。
カズヤとステラ、クインは2台のウィーバーに飛び乗ると、戦場へ向かって飛び出した。
「……カズヤさん!」
ウィーバーに乗ったカズヤを、すぐさまフォンとピーナが発見した。
ピーナは、サルヴィア軍のペガサス騎士団を指差しながら興奮していた。
「カズ兄、あそこに白くてきれいなお馬さんが飛んでるんだよ! あれに乗ってみたい!」
「ピーちゃん、オイラの上には飽きたのかい……?」
今までピーナを乗せてきた雲助が、若干自信を無くしている。
「カズヤさん、シデンさんたちが敵陣深くに入ったまま戻ってきません。それと、敵の魔法がいつもより強力なので注意してください」
サルヴィア軍は魔法の増強までしているのか。
シデンのことだから、率先して最前線に飛び出しているに違いない。
得体のしれない相手だけに不安が募る。
「分かった、俺たちが前線に行ってくる。ステラ、黒耀の翼はどこにいる?」
「前方で魔法使い部隊と戦っています。しかし、ゼーベマンたちの姿が見えません」
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