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284話 600年前の真実

 

「今から約600年前に、デルネクス人の調査船が初めてこの惑星を訪れました。目的は他の星と同じで資源と生物の遺伝子が目的です。この星は多様な生物が生息していて鉱物資源にもあふれています。


 そしてそれだけでなく、魔法という未知の力も持っていました。こんなに多くの特異性を持つこの星が、とても魅力的に見えたのです。惑星の住人が自らの世界のことをイゼリアと呼んでいたので、私たちもこの星を惑星イゼリアと名付けました」



 クインは、こちらの反応を確かめながら話してくれる。


 ここまでの話は、オルガドの話からカズヤにも想像できていた。


「……続けてくれ」


 カズヤは話を促した。



「600年前の調査船の艦長はカイロスという人物で、デルネクス人にしては珍しく高潔な人物でした。副官はゼイオンという男だったのですが、カイロスとは真逆の性格で二人はいつも対立していました。ゼイオンは狡猾でプライドが高く、自分が艦長であるべきだと思っていて、艦長ではなく副官であることに常に不満を持っていました」



「そのカイロスという人物が、パーセルの父親なんだな」


「そうです。現在デルネクスから新たな調査船が来ていることも、もちろん私たちは知っています。


 ゼイオンは惑星イゼリアを占領するように艦長カイロスに何度も進言しましたが、そのたびに却下されました。カイロスは調査目的どおり、資源と生物遺伝子を採取できれば良いと考えていて、イゼリアの人間社会に手を出すつもりはありませんでした。


 しかし、この惑星の発見はとても大きな功績です。それゆえゼイオンは自らの勲功を増やすために、徐々に勝手な振る舞いをするようになってきたのです」



 人間社会に手を出すのは、惑星全体への影響が大きい。


 パーセルや父親のカイロスのような良識のある人物は、デルネクス人のなかでは珍しい存在なのだ。



「ゼイオンが犯した過ちは多岐に渡ります。傲慢なデルネクス人にありがちなのですが、そもそもこの星に住む先住民に敬意を持っていません。先進的な科学技術を持ち込んで、先住民社会の伝統的な価値観や生活様式を壊していきました。


 また必要以上の資源を略奪したり、無許可で人間や動物をさらったりもしています。上官の命令に背くこれらの行為は、どれも本国に戻れば軍事裁判が開かれるほどの犯罪です。しかし、この行動に気付いた艦長カイロスの温情で、ゼイオンは副官の地位を剥奪され宇宙船内で謹慎するだけで済んでいたのです」



 ゼイオンの振る舞いは、カズヤには見覚えがあるものだった。


 以前の艦長だったオルガドの行動とまるで同じだ。あの行動がデルネクス人本来の性質なのだろう。


「……そして、あの事件が起きてしまったのです」


 話すのもつらそうに、クインの顔がゆがんだ。



「あるとき調査船は、惑星イゼリアで大規模な火山噴火の予兆を観測しました。通常であれば先住民を誘導することは、自由への介入と見なされるので敬遠されます。しかし艦長カイロスは住人たちに避難を伝えることに決めました。今回に限っては、この惑星の人類滅亡を防ぐための人道的な決断でした。


 デルネクス人による緊急の呼びかけと避難援助は、現地住民にとても感謝されました。……ちなみに、カズヤさんたちは洞窟内で見つけた中型ウィーバーに乗っていましたね。それは艦長カイロスたちが住民の避難に使っていたときの乗り物です」



 あのウィーバーは一度に10人は乗れる大きめの乗り物だ。


 住民を避難するのに役立っただろう。


 しかし、あのウィーバーは破壊された状態で洞窟内に捨てられていた。その周りには小型のウィーバーも散乱している。


 ということは……



「住民の避難は無事に完了し、空からやってきたデルネクス人は、まるで神のように崇められました。もちろん艦長カイロスはそのような扱いを断りましたが、それを利用した人物がいたのです。


 避難作業が終了したときに、宇宙船に残っていたのはゼイオンと4人のザイノイドだけでした。他の乗組員は地上での救出作業にあたっていたからです」


 クインの話が、少しずつ不穏な様相を帯びてくる。



「ゼイオンは宇宙船内ではまだ乗組員の地位が与えられていますが、本国に戻れば罪に問われることが確定しています。この災害のどさくさに紛れれば、自分が犯した罪を隠せると考えたのです。また宇宙船を乗っ取ってしまえば、この星を支配できるとも考えました。……そしてついに、考えられないような凶行に出るのです」


「ま、まさか!?」


 カズヤは自分の嫌な予感に、思わず声をあげてしまった。


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