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281話 偽装

 

「お、お前、その身体は……!」


 右膝から下を無くしたルガンは、大盾を杖代わりにして必死に立ち上がろうとしている。


 もちろん、その脚の断面はカズヤにとっては見慣れたものだった。



「……ルガン、お前はザイノイドだったのか!?」


「見ての通りだ、これ以上は答えられん。理由は分かるだろう」


「答えられないって……。まさかお前、戦闘型なのか!?」


 カズヤの問いに、ルガンは沈黙で答える。



 命令には逆らえない。


 命令無しでは不利な質問には声も出せない。


 それはまさに、フォンのような戦闘型ザイノイドに課された宿命だった。


 ルガンは大盾を支えに立ち上がるが、立っているだけで精一杯だ。とても戦える状態には見えない。



「ルガン、勝負は終わったぞ。そんな身体でどうやって戦うんだ、お前の負けだ」


「この大盾がある限り、戦いは終わらん……!」


 ルガンは大盾にしがみつき、まだ勝負を諦めていない。


 絶対防御の中心である大盾が、心の支えでもあるのだ。



「それがある限り戦うつもりなのか……」


 おもむろにカズヤは、ルガンに向かって右腕を伸ばす。ふと思いついたことが、今の自分なら実現できる気がしたのだ。


 ルガンの大盾を睨みつけると、カズヤは右腕を通して強力な意志を発する。



 するとミシミシと音をたてて、絶対防御の象徴である大盾が歪みはじめた。


「な、なんだこの攻撃は!?」


 ルガンの大盾に強大な重力がかかる。


 念動力サイコキネシスのような異次元の力だ。



 カズヤは片手でひねり潰すように、右手を絞りながら握りしめていく。その右手の動きに合わせて、大盾が異音を響かせながら潰れていく。


 最後にカズヤは、力強くギュッと右手を握りしめる。


 絶対防御の象徴である大盾は、小さな鉄の塊に変貌した。



「何てことだ……たった片手一つで、俺の大盾が破壊されるなんて……」


 カズヤは奇術師の重力で、ルガンの絶対防御を破壊したのだ。


 ルガンは呆然として左手に持つ鉄塊を見つめる。大盾を失ったルガンは、片膝をついて身体を起こすことしか出来ない。



「……ルガン、お前の負けだ。大人しく捕まってもらおう」


「……」


 もはやルガンは抵抗しなかった。


 手枷を付けられることを、拒否する動きすらない。



 ルガンを捕らえながら、カズヤはこれまでの疑問の一つが解けたことに気が付いた。


 以前の戦いの最中でのルガンの発言に、ずっと違和感を覚えていた。


 ルガンはアビスネビュラとしてパーセルたちの乗り物を襲うときに、「宇宙船」と呼んでいたのだ。


 なぜルガンが宇宙船という言葉を知っているのか疑問だったが、ザイノイドであるなら当然だ。



「……カズヤ、あの攻撃は何!?」


 アリシアが驚いた様子で近付いてくる。


「新しい装備のおかげなんだ。こんな最後の最後で、チート能力を手に入れるとは思わなかったよ」


 できそうな気はしたが、まさか本当に絶対防御の象徴である大盾を片手で握りつぶせるとは思っていなかった。


 パーセルは重力制御のリミッターが外れたままだと言っていたが、流石にちょっとやり過ぎかもしれない。



 ともあれカズヤたちは宿敵ルガンに勝利したのだった。




 *


 ルガンとの戦闘を終えて、カズヤたちは建物の外に出る。


 冒険者ギルドの本部は、訓練場を中心にめちゃくちゃに崩れていた。


 カズヤはいったんフォンのところで預かってもらうため、捕らえたルガンをハルベルト帝国の兵士に引き渡す。


 戦闘型ザイノイドであるルガンの身柄は、最終的にパーセルに任せるつもりだった。



「結局ルガンは何も話してくれなかったな。こうなると、あとこの街には職人ギルドしかないのか。この様子だと素直に会ってくれるとは思えないけど」


 四大ギルドのなかで、カズヤたちは職人ギルドの総帥だけには唯一まだ会ったことがない。


 しかしハルベルト軍が持っていた巨大な魔導兵器は、職人ギルドの協力で作られたと言っていた。


 あまり、いいイメージは持っていない。



「まあ、とりあえず行ってみよう。職人ギルドの本部はどこにあるんだ?」


 しかし、カズヤたちが職人ギルドの本部へ向かおうかと思っていた矢先。


 カズヤの前に身なりの良い5人の男が近付いてきた。その後ろには豪華な馬車が用意されている。


 5人の男が、カズヤたちの前に立ち塞がった。



「はじめまして、あなたがカズヤさんですね。職人ギルドの総帥が、あなたにお会いしたいと言っています」


「えっ、向こうから俺に会いたいと言っているのか!?」


 ギルドの総帥はカズヤたちにとって明確な敵だ。


 まさか、相手の方から招待されるとは予想していなかった。



「罠じゃないかしら?」


 アリシアが当然の疑問を口にする。


 わざわざカズヤたちを普通に招いて、もてなすメリットが思いつかない。ルガンのように、戦闘準備をして待ち構えているに違いなかった。



「怪しいよな。でも結局会いに行こうと思ってたんだ。奴らの罠に乗ってみないか?」


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