279話 冒険者ギルド本部
「そうなると、商業ギルドの本部もサルヴィアだな。魔術ギルドもそうだが、サルヴィア国内で探すのは難しいと思うぜ」
バルザードの指摘通り、商業ギルドの本部もサルヴィア聖都にある。
商業ギルドの総帥マグロスは日本であともう少しという所まで追いつめたが、冒険者ギルド総帥のルガンに助けられて逃げられてしまった。
あれ以降、ふたりとの接触はない。
「ハルベルト帝国の首都に冒険者ギルドと職人ギルドの本部があります。それにギルドとは呼べないですが、闇ギルド・ヴェノムベイン傭兵団の本部もあります」
ステラが、残りのギルド本部の場所を教えてくれる。
冒険者ギルドの本部は、カズヤは以前バルザードと一緒に訪れたことがあった。冒険者ギルド総帥のルガンは、日本で自らをアビスネビュラの一員だと白状し、マグロスを助けていた。
訪ねるとしたら、戦闘になる可能性が高い。
「よし、まずは冒険者ギルドの本部に行ってみるか。フォンにも伝えておこう」
すぐさまフォンに内部通信で連絡する。
<……了解しました。冒険者ギルドと戦闘になるかもしれないのですね。ただ、僕が行くのは遅れそうです。サルヴィア方面で少しおかしな動きがあるんです>
<おかしな動き?>
<事前通告も無しに、聖都に神聖騎士団が集結しています。他の魔導兵器にも動きが見られます>
こちらが大規模な戦闘を避けたくても、サルヴィア神聖王国の方から攻め込まれたら防がない訳にはいかない。
カズヤはまるで世界が大きく動き出すような、不穏な気配を感じていた。
*
カズヤたちは、ハルベルト帝国の首都へウィーバーで移動する。
冒険者ギルド本部の建物に入るのは、カズヤにとっては2度目だ。
「総帥は訓練場にいます。あなたたちが訪れたら、そこに招くように伝言を受けています」
「訓練場だと……?」
受付嬢にルガンの居場所を尋ねると、訓練場で待っていることを告げられる。そのことがカズヤたちを余計に警戒させた。
4人は受付嬢に案内されるがまま、訓練場へと進んだ。
「……来たな。俺に真実を語らせようというのか」
広い訓練場には、完全武装を済ませたルガンが待っていた。
「おい、この建物から全員外に出しておけ。巻き添えを喰らっても知らないぞ」
ルガンが指示すると、受付嬢は慌てて訓練場から飛び出した。
「その口ぶりだと、やはり何か知っていそうだな。お前に命令しているのは誰なんだ? アビスネビュラの第1階級の奴だろう」
「俺の口から話すことは決してない。そんな指示は受けていないからだ。敵対する者には容赦しないぞ」
ルガンが、ゆっくりと大剣を抜いた。
やはり始めから戦うつもりで待ち構えていたのだ。
「どうやら戦うしか無さそうだな。ルガン、お前の口からアビスネビュラの真実を語ってもらうぞ!」
カズヤたちも武器を取り出した。
ルガンの戦闘スタイルは、どっしりと構えて敵の攻撃を跳ね返し、隙をついて反撃するものだ。
しかし、ルガンの動きは予想に反した。
先手必勝とばかりに、俊敏な動きで真っ先にカズヤに迫ってきたのだ。
「いきなりかよ……!」
カズヤは慌てて電磁シールドで受け止める。
大柄な体格や重装備からは、想像も出来ない素早さだ。
絶対防御という特殊魔法を持つルガンは、まずは相手の攻撃を受け流しながら反撃する戦闘スタイルだったはずだ。
それがいきなり先制攻撃を仕掛けてきた。
カズヤに受け止められたルガンは、すぐさま次の攻撃にうつる。
盾に劣らない巨大な大剣を握りしめ、大盾を構えながら大剣を振り回す。人間のものとは思えないほど一撃一撃が重い。
「くそ、防御で手一杯だ……」
ルガンの暴風のような突進を受けて、カズヤはジリジリと後退しながら必死にかわす。
さすが冒険者ギルドの総帥だ。
絶対防御という魔法を使わなくても、剣士としても超一流だった。
するとカズヤの横から、ステラが目にも止まらない速さでルガンの横腹を狙う。
ルガンは素早く大盾で防ぐと、力任せに跳ね返した。
ステラは自らは後退しながらも、背後にある5機のA.F.A.《アサルト・フライトアングラー》でルガンを狙う。
ボットがルガンの動きを分析し、一斉に大量のレーザーを放った。
今度はルガンが大盾の後ろで防戦一方になる。
「ルガン! 付き合いが長い俺様が引導を渡してやるぜ。ボルトブリンガー《暴雷槍撃》!」
バルザードも、この隙を見逃さずに突撃した。
全身に雷をまとった攻撃で襲いかかる。
「絶対防御……!」
ルガンの周囲に、半円形のドーム型の魔法の壁が出現する。
大盾の後ろに堅く閉じこもると、全ての攻撃を跳ね返した。
読んで頂いてありがとうございます! 「面白かった」「続きが気になる」と思ってくださった方は、このページの下の『星評価☆☆☆☆☆→』や『ブックマークに追加』をして頂けると、新規投稿の励みになります!




