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274話 サルヴィア神聖王国

 

 聖都と呼ばれるサルヴィアの首都は、幾重もの魔法障壁で覆われている。


 ステラのボットや衛星を駆使しても一切情報が集まらない。調べるためには現地を訪れるしかなかった。カズヤもサルヴィア神聖王国には一度も行ったことがないので、まずは情報を集めたい。


 サルヴィアに行くのはカズヤとステラ、アリシアとバルザードのいつものメンバーだ。


 情報収集が目的なので無理してピーナを連れて行かなくてもいいし、戦闘するつもりはないのでフォンを連れていく予定もない。



 4人はいつものようにウィーバーに乗ると、まずはアリシアの研究用の魔石をハルベルト帝国に預けに行く。


 カズヤたちの存在は、すでに王宮の家臣たちにも広く知られている。ハルベルト帝国王宮の正門を通らずに、空から直接訪れても問題なかった。



「これが内部通信インナーコネクトで聞いていた魔石ですね。大事に保管しておきます」


 再びフォンが、カズヤたちを出迎えてくれる。


 気さくで飄々とした様子は以前と変わらないが、心なしか皇帝としての風格が備わってきたようにも感じる。


 剣聖だったとき以上に、国民と触れ合う機会も増えている。


 男性にも関わらず、絵画から抜け出してきた女性のような美しさを持つフォンは、市民の間でも人気が出ているようだ。



「それと頼まれていた偽の身分証です。皆さんはハルベルト帝国に住む旅芸人になっています」


「ありがとう、助かるよ」


 旅芸人とは意外だが、各ギルドと関わりのない職業となったら、これくらいしかなかったのだろう。



「最後にカズヤさん。サルヴィアに行くなら聖都の奥にある禁足地という場所には気を付けてください。二重の魔法障壁で囲まれていて普通の人は入れないようになっています」


「……ん、禁足地ってなんだ?」


「サルヴィア教の総本山ですよ。サルヴィア神が今でも住んでいる場所と言われていて、神聖騎士団や教会関係者、特別な貴族でないと中に入れないそうです」



 なるほど、だから禁足地というのか。


 初めて耳にした言葉だったが、たしかに怪しそうな場所だ。


 そこに突入できれば新たな情報を手に入れられる気もするが、魔法障壁に触れればすぐに見つかってしまう。


 今回は戦闘するつもりは無いので、禁足地の中に入るつもりはない。



 フォンと別れてウィーバーに乗ると、あっという間にサルヴィア神聖王国の国境を越えてしまう。


 国境だけなら他の国との違いは感じられない。



 しばらく飛ぶと、目の前にサルヴィア神聖王国・聖都の巨大な魔法障壁が見えてきた。


 聖都全体が半透明の魔法障壁に覆われている。


 そして聖都の奥から山脈に至るまでの部分が、さらに特別な魔法障壁で覆われていた。深い緑色のベールになっていて、地上から生えたオーロラのように美しい。


 そこがフォンが教えてくれた禁足地だ。


 魔法障壁が厚く濃い緑色なので、中の様子までは見ることができない。



「さすがに聖都にはウィーバーで入れないぜ。城門から行かないとな」


 聖都を何度も訪れたことがあるバルザードが教えてくれる。


 カズヤたちはウィーバーから降りて、歩いて城門へ向かった。



 城門の前には多くの兵士が待ち構えている。


 カズヤは緊張しながら、フォンにもらった身分証を見せる。


 襲われても問題なくやり返せるのだが、今回は調査が目的なので大きなトラブルは起こしたくない。


 門番は興味なさげにチラっと見ると、カズヤたちを聖都の中へ招き入れた。



「……よかった、街には普通に入れるんだな!」


 ハルベルト帝国発行の偽の身分証が怪しまれることはなかった。


 こういった点でも、ハルベルト帝国が正式にアビスネビュラと敵対していないのは助かった。



「まあ聖都はサルヴィアの首都だから、一般人や商人、冒険者も普通に出入りしてるしな。そんなに厳しくはないぜ」


 たしかに聖都とはいえ、街の様子や人々の様子は他の都市と大きな違いは見られない。教会の数が多かったり、白い服をきた神聖騎士団の姿を普段より多く見かけるくらいだ。



 しかし途中にある魔術ギルドや商業ギルドの総本部の前を通るときは、かなり緊張する。ここにジェダやマグロスがいるかもしれないのだ。


「ここにアルカナ・ストーンがあるのね。予想していた場所よりも、少し中心部にずれていたわ」


 ハッキング行為のために、アリシアが正確な場所を知りたいと言っていたのだ。


 それを確かめるのも潜入した理由の一つだ。



 歩きながら、街の造りや警備の配備状況を確認する。


 市民の様子は他国と変わりはないし、城門や禁足地以外で魔法障壁が使われている場所はない。


 しかし、街の奥にある禁足地に近付くにつれ兵士の数が多くなってくる。自然と怪しい集団であるカズヤたちへの視線が厳しくなってきた。


 警戒されていることに気付かない振りをしながら、カズヤたちは何とか緑色の魔法障壁の近くまで進んでいった。


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