260話 異世界軍の反撃
着弾すると同時に激しい爆発音があがり、庭に大きな穴があく。
通常の威力ではない。普段の日本では考えられない迫撃砲による砲撃だ。しかもこれだけの威力なら大型を使っているに違いない。
そして続けざまに、次々と砲弾が飛び込んでくる。
「なんだよ、カズヤ。この世界もけっこう物騒じゃないか!」
異変に気付いて起き上がってきたバルザードが、後ろから楽しそうに声をかけてきた。寝ていたシデンたちも、すでに目を覚ましている。
「いやいや、こんなのは全然普通じゃないんだって!」
「マスター、目視できる範囲に敵が37人います。相手は風神セキュリティです」
砲撃の破片を左腕の電磁シールドで防ぎながら、ステラが報告する。
魔物たちを倒したカズヤたちを警戒しているのか。先ほどのドローンで攻撃対象の位置や数を特定していたのか。
それでも、この攻撃はやり過ぎだ。
ここが今まで住んでいた日本だとは、カズヤはとても信じられなかった。
しかし嘆いたところで、現実は収まることはない。
砲弾の一部が田中のお婆さんの家を直撃する。玄関が吹き飛び、瓦の屋根が崩れ落ちた。
飛んでくる迫撃砲を、カズヤたちザイノイドが電磁シールドで防ぐ。
「おい、どうするんだカズヤ!? やっちまってもいいのか」
バルザードが、反撃するか迷っているカズヤに確認する。
「……このままやられっ放しでいる訳にはいかないよな。よし、反撃しよう!」
「そうこなくっちゃ!」
バルザードは近くに落ちていた物干しざおをつかむと、槍のようにして持ち上げた。
「こいつを借りるぜ。まずは相手の武器を壊してきてやる!」
「俺も行こう」
バルザードとシデンが砲撃のなかを特攻していく。
「やると決めたのなら、まずはこのロボットを落としますね」
ステラがブラスターを構えると、ドローンを目掛けて連射する。
5発連射すると、一発も外さずに全てのドローンを撃ち落とした。
カズヤたちが反撃を始めると、今度は機関銃による一斉射撃も加わった。
絶え間なく発射される大きめの銃弾が、カズヤたちに向かって襲ってくる。
突如として始まった戦闘だが、カズヤは意外なほど冷静だった。
日本人だった時なら間違いなくパニックになっている状況だが、異世界へ転移したカズヤは、残念ながら戦闘には嫌というほど慣れてしまっていた。
「ステラ、この銃撃はどうやって防いだらいいんだ?」
「自動防御にしておけば勝手に防げます。それに、この程度の軽い攻撃なら身体に当たっても問題ありません。念のため視覚センサーに当てないことだけ気を付けてください」
たしかに自動防御にすると電磁シールドで銃弾を弾き、自然と身体が動いてかわしてくれる。
フルオートの機関銃すら当たることは無さそうだ。
「本当だ、何のダメージもないな」
カズヤは試しに身体に機関銃の弾丸を受けてみるが、やはり何の傷もついていない。この程度の攻撃で損傷することはなさそうだ。
むしろ身体よりも、服がボロボロになってしまうことの方が気になった。
「だから攻撃を受けないようにしてるんですよ。せっかく手に入れたお気に入りが破れてしまったら大変です」
いつの間にかステラは、日本で買った新しいゴスロリ服に着替えている。
「カズヤさん、狙われていますよ」
カズヤに向かって飛んできた銃弾を、フォンが手で弾いてくれる。
機関銃とは違うスナイパーによる遠隔狙撃だ。
「こんな攻撃まで仕掛けてくるのか……」
敵の攻撃は訓練されていて隙が無い。日本の住宅地であろうと容赦なかった。
銃撃がひと段落すると、さらに手りゅう弾まで投げてきた。
「攻撃が、こちらから丸見えですよ」
だが相手が投げ出した瞬間に、ステラがブラスターで撃ち落としてしまう。手りゅう弾が自軍で爆発すると、敵の叫び声が聞こえてきた。
気が付いた時には迫撃砲による攻撃も終わっている。特攻したシデンとバルザードが全て壊してしまったのだ。
「カズヤさん、下からトラックのような物が登ってきます」
上空にいるリオラが教えてくれる。
その姿を認めたカズヤは絶句した。
山を登ってきたのは、なんと装甲車だった。
「おいおい、こんな物まで持ち出してきたのか!?」
しかし敷地内に到着する前に、リオラの魔法が装甲車のタイヤを破壊する。あっさりと装甲車の動きを止めてしまった。
すると動かなくなった装甲車から、サブマシンガンを手にした隊員が飛び出してくる。さらには装甲車の後ろからも、待機していた隊員が突撃してきた。
遠距離攻撃からの近接戦闘。イゼリアでも行なわれる戦闘の基本だ。
だが、残念ながら戦力が違い過ぎる。
どの順番で攻撃しようとも、カズヤたちには全く効果が無いのだ。
「僕が止めてきますね」
隊員による進撃を、前方に飛び出したフォンが受け止めた。
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