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255話 救出


 倒れた手下など気にせず、今度はテセウスが襲ってくる。


 アリシアは風魔法でけん制しながら素早く距離をとる。魔法使いであるアリシアにとって、剣術に優れたテセウスとの接近戦は不利だ。



 だが当然ながらテセウスはそのことを承知している。


 魔法を避けながら、すかさず距離を縮めてきた。アリシアの右手から放たれた火球がテセウスに向かって飛んでいく。


 だが、いつもの魔法と比べると驚くほど小さい火球だ。



「どうした、その程度の魔法しか使えないのか!?」


 テセウスは軽々と火球をかわし、猛然と突進してきた。


 アリシアの至近距離でテセウスが短剣を振るう。



 バチンッと弾ける音がして、アリシアの防御魔法を突き抜ける。


 いつもは鉄壁の防御魔法だが、弱い魔力のままではテセウスの物理攻撃に耐えられなかった。


「ハハハッ、あのアリシア様の魔法がこの程度とはな。この星のせいで貴様の魔力が弱っているのだろう!」


 テセウスの動きは猛獣のように俊敏で一瞬の隙も見せない。剣や杖を持たないアリシアの方が、遥かに分が悪かった。



「くっ、このままじゃ勝てないかも……」


 やはり、ひとりでテセウスを追い掛けてきたのは無謀だったのかもしれない。


 しかし、後悔はしていない。


 どんなに不利だったとしても、自分の世界の人間が人々を襲っているのを放置することはできなかったのだ。



「死ね、アリシア!!」


 防御魔法をかいくぐって、テセウスの剣がアリシアに迫ってくる。


「か、かわせない……!」


 思わずアリシアは目をつぶった。



 その瞬間。


 テセウスの攻撃が何者かによって防がれた。


「……アリシア、諦めるな!!」


 目を開けると、そこにはカズヤが立っている。


 テセウスの剣を素手で受け止めていた。



「お前ら、うちの姫さんに何してやがる!!」


 カズヤの後ろから猛然とバルザードが飛び込んでくる。


 嵐のような勢いで建物内を駆け回る。巨大な暴風のように襲い掛かると、男たちは吹き飛ばされて壁に打ち付けられた。


 まさに狼のような獰猛さで暴れまわると、全ての男が地面に叩きつけられる。いつもの獣人の姿なら全身の毛が逆立っているかのような勢いだった。



 テセウスは必死に攻撃をかわそうとするが、蹂躙するバルザードの攻撃を防ぐことができない。


 握っていた短剣をたやすく払いのけられると、片手で首元を握られ高々と持ち上げられた。


「バル、殺すなよ!」


 カズヤの言葉で冷静さを取り戻すと、バルザードはテセウスを地面に押さえつける。


 遅れてステラやシデンたちが建物に入ってくる頃には、すでに戦闘は終わっていた。



「カズヤ!!」


 走り寄ってきたアリシアがカズヤに抱きつく。


 その目には安堵の涙が浮かんでいた。



「みんな、どうやってここに来たの……!?」


「パーセルの宇宙船に乗せてもらったのさ。無事に、また会えてよかった」


 カズヤの笑顔を見て、アリシアの気持ちが少しずつ落ち着いてくる。



「アリシア、知らない星に来るのは不安だっただろう?」


「そうね、カズヤの気持ちがよく分かったわ。やっぱりここはカズヤの故郷だったのね」


「そうだよ、ようこそ日本へ!」


 カズヤは、わざとおどけた口調で言う。


 アリシアの顔は涙でぐしょぐしょだった。


 カズヤの後ろにはバルザードやステラたちが立っている。皆の顔を見て緊張の糸が切れてしまった。



「時間ですよ、アリシア。毎回抱きつくのはズルいです」


 ステラが力づくでアリシアを引き離す。


 いつもよりも少しだけ長く待ってあげたのが、ステラなりの優しさだった。



「あっ、ひょっとして……カズヤはこの故郷に帰るつもりなの!?」


「いや、そのつもりはないよ。アリシアを見つけることができたしセドナに戻るつもりだ」


「そう、よかった……。カズヤが帰らないのなら、私も戻れないところだったわ」


 カズヤが日本に住むのなら、アリシアも付いてくるつもりだったのだろうか。



 捕らえたテセウスは手枷をつけて、床に放置しておく。


「こんな奴らに襲われたのか。日本には怖い思い出しかないだろう?」


「いいえ、この国でも親切な人にいっぱい助けてもらったの。街や人が整然としていてエストラやセドナとは違った魅力がある、とても素晴らしい国だと思ってるわ」



「……そ、そうかな?」


 愛国心があまり無かったカズヤは、不思議そうに尋ねる。


「そうよ。佐藤さんや前田さん、鈴木くんたちを見て、この国の教育レベルが高いことは元々感じていたしね」


 カズヤを見た時のことには触れていないが、深く尋ねるのはやめておく。



 とにかく、アリシアを見つけることができたのだ。


 みんなの顔に自然と笑みが浮かんでくる。


 張りつめていた緊張が解け、カズヤは心の底からホッとしていた。


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