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247話 Aricia in Jpn


「やっぱり、アリシアは地球にいたんだ!」


 日付を見ると2日前で、ここに飛ばされた直後の写真みたいだ。



「凄いんだなあSNSっていうのは。目的が違うとはいえ、やっていることは簡易的なボットと同じじゃないか」


 アリシアが地球に来ているのは間違いない。


 不安が安堵に変わる。



 デルネクス人たちの協力を得て、やっとここまでたどり着くことができた。


 日本にいることが判明しただけでもカズヤは安心した。今までどこにいるのか分からなくて心配だったが、急に近くにいるように感じる。



「日本にいるなら、とりあえず身の危険は心配しなくていいな。少し気が楽になったよ。落ち着いてアリシアを探そうか」


 ほっとしたカズヤたちは、再びアリシアの捜索を開始した。



 しかし夜通し歩き回っても、その後のアリシアの足取りはパタリと途絶えた。再び鈴木に確認してもらっても、新しい情報は見当たらない。


 あと少しのところまでたどり着いたが、なかなかアリシアを発見できないのだった。





 ***



 2日前のことだ。


 アリシアは日本の路上で途方に暮れていた。



 式典に向けてメイドたちと着付けをしていた最中だった。メイドたちが衣装の準備で席を外していて、一人で部屋に佇んでいたとき。


 不意に知らない場所に立っていたのだ。


 普段は入らない奥の部屋だからだろうか。身に着けているのは衣装合わせで着用していた、黄色のドレスのままだった。



「ひょっとしたら、あの夢の話を思い出していたせいかしら……」


 それはカズヤと話していた、”星隠しの迷路”の夢のことだった。夢の中で迷路を抜けると、知らない世界に飛ばされるというお伽話のことだ。


 メイドたちを待っている間に、アリシアはつい夢のことを思い出してしまう。寝ていた訳では無いが何となく考えている内に、ふとその迷路を抜けられる予感がしてきた。


 その感覚に合わせて魔力を込めると、突然この場所に立っていたのだ。



「……まあ、そんなことを考えていても仕方ないわ。走っているクルマを見るかぎり、多分ここはカズヤがいた国よね。確か”にほん”って言ってた気がするわ。カズヤが私たちの世界に来られるなら、私がこっちに来る可能性があってもおかしくないものね」


 アリシアは思いのほか冷静に現状を分析していた。


 だが、これからどうすればいいのか分からない。カズヤは元の世界に戻れないと言っていた。アリシアも戻れる保証はないのだ。



「カズヤから、この国の言葉をもっと習っておくんだったわ……」


 どうしたらいいか分からずに呆然として立っていると、周りに人が集まってきた。みんな小さな細長い四角い物をアリシアに向けている。



「こ、これは何をされているのかしら?」


 街角でコスプレをしていると思われたアリシアが、スマホで写真を撮られていたのだ。


 次々とスマホを向けられて、アリシアは戸惑った。悪いことをされている訳ではなさそうだが、何をしているのか分からない。


 アリシアはあわててその場から逃げ出した。



 だが、赤髪赤目の美しいアリシアが黄色のドレスを着ていると、どうしたって目立っていた。


 最初の場所から移動したが、すぐに5人組の男性に声をかけられてしまった。


 全員が緑や茶色や黒などを使って、木々や葉の形を模倣したような服を着ている。この国では、こんな服装が流行っているのだろうか。



「ねえ、そこの外国のお姉さん! そのコスプレ可愛いね。俺たちは風神セキュリティっていうんだけど、こっちに来て話をきかせてよ」


 そのうちのリーダー格の男性が、馴れ馴れしい態度で話しかけてくる。


 もちろんアリシアには何を言っているのか分からない。だが、こちらを女性と見て下心満載で絡んで来たことには、すぐに気が付いた。



「申し訳ないけど、あなたたちには興味がないの。他をあたってちょうだい」


 もちろん、アリシアの言葉も通じない。


 アリシアもそれは分かっているので、身振り手振りで断りの意思を伝える。



「何を言ってるのか分からないな。いったい何の言葉を話してるんだ? とにかくこっちに来いよ!」


 男性のひとりが、気安くアリシアの肩に触れようとした。


 反射的にアリシアはその手をつかむと、軽くひねって倒してしまう。大の男が相手だが一瞬の出来事だ。


 王族だったアリシアが、小さな頃から散々習ってきた護身術のひとつだった。



「こいつ馬鹿力しやがって。俺たちにさからうと容赦しないぞ!」


 残りの男性が、アリシアを囲んで連れていこうとする。


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