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244話 再集合


 陽が沈む頃まで探し回ったが、結局カズヤもシデンたちもアリシアを見つけることはできなかった。


 アリシアは見た目も服装も目立つから、この街に居るのならすぐに見つかると思っていたが、なかなか見つからない。



 ボットを飛ばせないことも、初めは全く問題無いと思っていた。


 しかし普段からボットの情報に頼っていたため、走り回って誰かを探すということに慣れていない。目視で探すのは限界があるみたいだ。



「ひょっとしてアリシアは、日本に来ていないのかな……」


 カズヤはぽつりとつぶやいた。


 探索の初日は、めぼしい成果を出すことが出来なかった。



 再びみんなで集まって情報を交換する。


 シデン組が本屋で桜月市の地図を買っていたので、二組が探し回ったところを塗りつぶしていく。


 ちなみに本屋に入ったのは、フォンの強い希望だったらしい。



「意外と見つからないものですね。ボットたちがいないと、こんなに苦戦するとは思いませんでした」


 思いがけない結果に、ステラは少し気落ちしていた。


「何だか懐かしい雰囲気を感じる街でしたね」


 フォンが感慨深げにつぶやく。



 科学技術が進んだデルネクス出身のフォンから見ると、未発達の日本の都市は郷愁を感じるようだ。


 カズヤも田舎の方に行くと、その時代を生きていなくても昔の雰囲気を感じることがある。それに近い気持ちかもしれない。



「それにしても、ここの住人の顔が少し暗いように見えるな」


 シデンは国民の生活が気になっていた。


 その視点はさすが皇子らしい。街を歩く人々に笑顔が少なかったのが気になったみたいだ。



「ひょっとしたら、将来にあまり希望を感じられない人が多いのかもしれないな。俺だって日本にいたときは、みんなと同じ顔をしていたと思う」


 カズヤは、この世界にいた当時のことを思い出す。


 もし、希望や楽しみを見いだせずに学校や職場を往復するだけの生活だったら、表情がとぼしくなってしまうのは当然だ。



「この国には魔物がおらず戦争も無く、我々の世界よりも平和だと聞いていた。なのに、なぜ希望を感じられないんだ?」


「難しい話だよ、理由は人によって違うから。平和は平和だけど、自分のやりたいことが出来ないのかもしれない。俺の場合は周りに気を使い過ぎて、息苦しさを感じていたな」



「確かに、やりたいことが出来なくて辛い気持ちは分かりますよ。私は300年待ちましたから……」


 ステラから思いがけない言葉がこぼれる。


 違う星に来て少し感傷的になっているのだろうか。ステラの素直な気持ちを聞くことは滅多になかった。



「この国には自前の資源が少ないから、何をするにも自給できないのが不利なんだと思うよ。景気がよくないせいで、生活が苦しくなっているみたいだし」


「なるほどな。平和だけではなく経済も大切だということか」


 カズヤの言葉に、シデンが考え込む。



「でもマスター。上空から見たところ、この国は海に囲まれていますよね。海は埋蔵資源の宝庫です。あれだけ広大な海が広がっていて資源が無いというのは不自然です」


 ステラの指摘は、以前日本でも聞いたことがある気がした。そのような研究は日本でもされているはずだ。



「技術力があれば色々と掘り出せるかもしれないけど、多分まだそこまでじゃないんだよ。それか、技術力があっても掘り出すお金が無いのかもしれない。でも、きっと日本人なら何とかしてくれるはずだよ」


 カズヤは日本人の能力を信頼していた。


 今は自信を無くす出来事が続いているのかもしれない。だが、今までも日本人はそんな状況から何度も立ち上がってきたのだ。



「……それで、俺の食事はどうしたらいいんだ? お前たちは必要無いかもしれないが、さすがに腹が減ってきたぞ」


 話題を変えるように、シデンが訊いてくる。


 結局、シデンやリオラは到着してから何も食べなかったみたいだ。生身の身体であれば耐えられないはずだ。


 カズヤは食事をとらないため、すっかり忘れていた。



「持ってきた携帯食じゃ駄目なのか?」


「腹を満たすだけならいいが、せっかくだからこの世界にしかないものを食べてみたい。特に"はんばーがー"というのが気になる」


「ハンバーガーって、あれか……」


「パンに肉と野菜を挟んでいるみたいだが、タシュバーンのとはまるで違う物だ。どうも冒険者としての血が騒いでくる」


 真面目な顔をしてシデンが訴えてくる。


 パンに肉と野菜を挟んであるのは、何処の世界でも同じだと思うのだが。さすがに冒険者の血は関係ないと思う。



「そんなに気になるのか? じゃあ持ち帰りで買ってくるから、みんなで外で食べようか」


「建物の中で食べないのか? 座って食べている人が見えるぞ」


「なに、店の中でだと……!?」


 冒険者の血が騒ぐというのなら、「外で地面に腰を下ろして食べたい」とでも言うのかと思ったが違っていた。



 シデンは店内で食べると言い張って譲らない。


 たしかにシデンには、今まで助けてもらった借りがたくさんある。でもまさか、こんな小さなことで少しずつ返していくとは思ってもみなかった。



「……よし、仕方ない。みんなで中に入るか!」


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