表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

240/316

240話 捜索開始

 

 佐藤課長は真面目な顔でカズヤに切り出した。


「なんでも風神セキュリティという警備会社が、最近街で幅をきかせているみたいなんです。怪しい人物を見かけたら勝手に尋問と称して脅迫したり、やりたい放題らしい」


「風神セキュリティっていったら山の中腹にあった、あの巨大な建物の会社か。警備会社というなら民間ですよね。街にいる人を勝手に尋問する権限なんて無いんじゃないですか?」



「そうなんですが、どうも我が物顔で歩き回っているみたいです。カズヤさんたちも気を付けてください」


 これだけのメンバーが集まっているので、身の安全については何一つ心配していない。


 だが、アリシアを見つける為に余計なトラブルは避けたかった。



「それと、これは関係ないかもしれませんが、私たちがいなかった間に地方改革党という政党が選挙で大勝したようです。最近できたばかりの政党だったんですが、今では議会の3分の2を占めています。新たな政策を次々と実現しようとしているんですが、それが極端な政策ばかりで……」


「極端な政策って?」



「新たな地方税をどんどん増やそうとしているんです。市民は反対していますが、支払いには独自通貨を導入しようとしてるみたいで」


「えっ!? それは市民にとっては、かなり大きな変化じゃないですか。しかも独自通貨なんて、そんな勝手なことをしたら国が黙っていないですよね」



「それが、国からのストップもかかっていないみたいなんです。全国的にも珍しい動きだと思いますけど、市民にとっては死活問題です。全て実現できるかは分かりませんが、どうもやりかねない動きです」



「そうなんですね……。貴重な情報ありがとうございます」


 佐藤課長の話は、自治体レベルではかなり大きな変化だと思われる。


 だが、カズヤは桜月市に戻るつもりはないし、短い滞在期間中にわざわざ政治に口を出すつもりもない。



「困ったことがあったら、いつでも相談して下さい。恩返ししますから!」


「分かりました。何かあったら頼らせてもらいます」


 にこやかに去っていく佐藤課長の言葉が、カズヤには嬉しかった。




 *


「お待たせしました」


「なんだよ、ステラ。結局、服が変わっていないじゃないか」


 しばらくして、やっと女性陣が姿を現した。長い時間がかかった割に、ステラの服装は何も変わっていなかった。



「ステラさんだけは、頑なに服を変えないんですよ」


 前田がため息をこぼす。


「残念ながら、前田さんがメイド服を持っていなかったものですから。もっと可愛い服を持っていると期待していたのですが」



「普通は、自前のメイド服を持っていないと思うんですけどね……。それはそうとして、お待たせしてすみませんでした。実はですね……」


 前田の部屋には、帰宅を待ち望んでいた母親が代わりに住んでいたようだ。感動の再会があったのも、遅くなった理由らしい。



「リオラ、その服は……」


「私が着ると普通なんですけど、リオラさんが着ると、なぜかこうなっちゃうんです」


 リオラも前田の服に着替えているのだが、不思議と露出量が多いのは変わっていない。胸の部分がはち切れそうになり、お腹や足がむき出しになっている。



「ピーナはどう!? 可愛いでしょ!」


「お、おう……?」


 ピーナが嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねている。ピーナに関しては、ぱっと見ても違いが分からない。



「ここにリボンが付いているの! まったく、カズ兄はそういう所だよね!」


 ついにカズヤは、ピーナにまで怒られてしまう。


 ピーナが指し示す後頭部には、可愛らしい小さなリボンが付いていた。どうやら服装は変わっていなかったようだった。




 こうして時間は掛かったが、全員の身支度が整った。


 これで、ようやく本題であるアリシアの捜索を始められる。


「それじゃあ宇宙船で打ち合わせたとおり、手分けしてアリシアを探そうか」



 カズヤは、その場にいる一人一人の目を見ながら言った。


 あらかじめ決めていたとおり、二手に分かれて市内を探すことにする。カズヤとステラ、バルザード、ピーナの組と、シデンとフォンとリオラの組だ。



 日本語が話せるのは、カズヤとステラとフォンの3人。緊急時の連絡は、前回渡してある通信装置とザイノイドの内部通信を使ってもらう。


 鈴木と佐藤課長からもらったお金をフォンに幾らか渡して、簡単な使い方を教える。シデンとリオラには食事が必要だろう。



「さあ、行こう!」


 カズヤとステラ、バルザードとピーナが街の中心部に向かって歩き出した。


 アリシアが、本当に地球に飛ばされているのかは分からない。しかし、日本にいる可能性は高いとカズヤは思っていた。



 もしアリシアが日本に来ているのなら、身の安全の心配はしていない。


 日本はただでさえ治安がいい国だ。アリシアが襲われることは無いだろうし、幼い頃から鍛えられたアリシアに普通の日本人なら敵わないだろう。



 アリシアは赤髪赤目で見た目も綺麗だから、街なかにいればかなり目立つ。式典向けの黄色のドレスの着付け中にいなくなったので、正装のまま来ている可能性もある。


 もし桜月市にいるのなら、見つけ出すのは難しくないと考えていた。



 カズヤは、アリシアの姿を探しながら辺りを見渡す。


 故郷の街を歩くのは久しぶりだった。


 読んで頂いてありがとうございます! 「面白かった」「続きが気になる」と思ってくださった方は、このページの下の『星評価☆☆☆☆☆→』や『ブックマークに追加』をして頂けると、新規投稿の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ