表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/316

024話 国王の裁定

 

「複数の襲撃をお前が計画したという証拠があるのだぞ。いい加減、観念して白状するがいい!」


 テセウスは自信たっぷりの笑みを浮かべて言い放つ。



 証言者を自分で用意して、証拠の映像すら偽造できる。


 こんな嘘ならいくらでもつけてしまう。日本の警察が行っていたような、DNA分析や指紋採取などの科学的な捜査が懐かしくなった。



「……カズヤさん。この王宮を破壊し尽くすことも可能ですが、どうしますか?」


 自らのホログラムを、陳腐なフェイク映像で否定されたステラは静かに怒っていた。


 しかし、この場でその台詞は逆効果だ。悪人の逆ギレにしか聞こえない。



「聞きましたか、陛下。これが奴らの本性なのです。王宮を破壊することも厭いません。公正な裁定をお願いします」


 テセウスがカズヤの処遇に対しての国王の判断を要求した。


 発言を促された国王は、顎に手を当てて考える。


 周りの護衛の兵士たちは、いつでもカズヤを捕らえられるように武器を持って構えていた。



「……カズヤといったな。そなたはテセウスの訴えをどう思うのだ? 本来ならば私は今日、そなたにアリシアの件で礼を伝えるつもりだったのだ」


 予想外の展開に、国王も戸惑っていることが伝わってきた。


「このような追及をされて私も戸惑っています。テセウスがあげた証拠や証言は全てでたらめです。ただ、それを証明したいのですが、やってもいないことを証明するのは困難を極めます」



「なるほどな……。アリシアはどう思う?」


 国王はアリシアの方へ向き直る。


「私はカズヤを信じています。彼とは出会ったばかりですが、そんな人間では無いと思っています。ただ、テセウス騎士団長が訴える証拠を否定する物も、私は持っていません」


 アリシアも心ではカズヤの味方をしてくれている。


 だが、証拠が何もないことに戸惑っている。証拠も何も、全て偽造なのだから当然だろう。先ほどまでは命を助けてくれた恩人として、カズヤを国王に紹介しようとしていたのだ。



「バルザード、お主はどうだ? この二人と会っていたのだろう」


「俺様の勘では、カズヤは白でテセウスが黒ですぜ。もちろん、何の証拠もありませんがね」


 アリシアとバルザードの訴えを聞いて、国王はしばらく沈黙する。



 そして、しばらくしたのち重い口を開いた。


「カズヤ。そなたと従者を王都エストラに立ち入ることを禁止する。すぐにこの街から出ていくのだ」



「へ、陛下、甘すぎますぞ!! 王族の命を狙った犯罪者なのです。すぐに捕らえて拘束しないと、再びお命を狙ってきますぞ!」


 取り乱したテセウスが国王へ反発する。


 思わず本性が顔を出しているような気がするが、国王は気に留めていない。



「では、もしこの男やアリシアの訴えが本当だったらどうするのだ。アリシアは昔から勘が鋭い。魔力に鋭敏な部分もある。彼らが街にいなければ、もう事件は起こらないはずではないか」


 街を追放されるのは納得いかないが、国王としては、かなり甘い裁定を下してくれたみたいだ。


 カズヤやアリシアの訴えに配慮して妥協してくれている。一方的に拘束されなかっただけでも、有難いのかもしれない。



 ここで暴れては、かえって状況を悪化させてしまうだろう。


 カズヤは国王の裁定に黙って従った。カズヤとステラは、兵士の誘導で連行された。


 心配そうな表情を浮かべながら、アリシアとバルザードが見送る。



 そして二人は、王都エストラの外へ締め出されてしまったのだった――


 読んで頂いてありがとうございます! 「面白かった」「続きが気になる」と思ってくださった方は、このページの下の『星評価☆☆☆☆☆→』や『ブックマークに追加』をして頂けると、新規投稿の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ