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237話 着陸

 

 ステラが指差した方を見ると、少なくても5機の宇宙船が地球の周りを飛んでいるのが見えた。


「本当に宇宙船ってあるんだな……。こんなに近くに、それもたくさん飛んでいるなんて」


「指摘するのも今更ですが、いまマスターが乗っているのが宇宙船ですからね」


 ステラが疑わしそうな顔でカズヤを見る。


 地球にいた頃は想像もしていなかった光景だ。だがこれほどはっきりと浮かんでいたら、人間の目や映像にも残ってしまうと思うのだが。



「今はザイノイドの視覚センサーを使っているので、彼らの姿がはっきり見えるんです。現に隣にいる前田さんたちは何も言っていないでしょう」


 確かに前田たち3人は地球の美しさと現実に帰宅できる事実に、興奮した声を上げているだけだ。宇宙船に気が付いている様子はない。



「でも、なんで姿を現わしてくれないんだ? 俺たち地球人からしたら姿を見せて挨拶してくれるだけでもいいんだけどな」


「以前に孤島の森の例え話をしましたよね。面白い星を見つけたら、まずは観察するんです」


 地球という綺麗な星に住む、人間という変わった生物を観察しているということか。



「彼らの話を聞くと、実際に人間を助けている種族もいるようですよ。まあ、色々な種族がいて色々な目的があるとは思いますが」


 地球を管理する宇宙人たちと交渉してきた、パーセルが教えてくれる。



「それなら有難いけど、なおのこと姿を現わして欲しいけどな。宇宙人がいるかどうかは、地球でもよく論争になっていたんだ」


「それぞれの事情があるんじゃないですか? 少なくても私は、わざわざ姿を現わしたいとは思いませんけど」


 パーセルとの会話を聞いていたステラが横から答える。


 その程度のものなのか。たしかにステラが自ら望んで、みんなの前で挨拶している姿は思い浮かばなかった。



「エルトベルクと座標が近い、カズヤ殿が住んでいた街の外れに着陸します。もちろん現地人には、この宇宙船の姿を見ることはできません」


 パーセルの言葉通り、宇宙船は静かに降下をはじめた。


 あえてゆっくりと降下してくれているのだろうか。徐々に日本列島が大写しになってくる。


 帰りたいとは思っていなかったが、ふる里が見えてくると自然とカズヤの気持ちも高ぶってきた。



「懐かしいな。地元はこんな景色だったっけ。まるで、こっちの方が異世界のように感じるな」


 上空から地元の様子を見た感じでは、街の雰囲気もそんなに変わっていない気がした。この街はカズヤが子どもの頃から過ごしてきた、まさに地元だ。



 カズヤが住んでいた街は桜月市といい、人口は20万人ほど。地方都市としてはまずまずの大きさだ。


 海岸には貨物船が出入りしていて、豊かな水量の桜月川が海に流れ込んでいる。電車の線路や公園の場所も、もちろん変わっていない。


 一瞬だけだったが、カズヤが通っていた高校のグラウンドも見えた。繁華街のビルや、中心部から離れた住宅街の雰囲気もそのままだった。



 だが、ただ一か所だけ。


 着陸地点近くの山中に、場違いに大きくて真新しい建物があった。以前カズヤがいたときには無かったはずだ。



「なんか山の中に見慣れない巨大な建物があるな。あれは何だろう?」


「あれは風神セキュリティという警備会社の建物ですよ。建設当時は街でも話題になっていました。去年くらいにあの建物が完成したんです」


 カズヤの疑問に、鈴木が答えてくれる。



「警備会社なのに、あんなに大きな建物が必要なのか」


 街も少しずつ移り変わっているのだ。


 少し釈然としないものを感じながらも、カズヤは街の変化を受け入れていた。



 *


 パーセルたちの宇宙船は、街はずれの山中に着陸した。


「……どうやら魔法は使えそうです。ですが、魔力がかなり弱くなってしまいますね」



 さっそくリオラが、バルザードに幻術の魔法を重ね掛けする。


 さいわい惑星イゼリアの魔法を地球で使うことは可能だった。


 しかし、どうやら地球は魔法の力が弱い星のようだ。だから地球人は魔法が使えないのだろうか。



「たしかに魔力が小さいな。魔法を使うための周りからの助けが少ない」


 シデンがライターのように指先に火を灯している。着火の魔法を試しているみたいだが、指先からジリジリと音を立てて消えそうになっている。



「魔法って自分の魔力だけじゃなくて、環境の力も借りてるのか」


「そうだ。自分の魔力だけでも問題ないが、その分威力は弱くなる。まあ、お前の話だと、この世界で魔法を使うことはなさそうだがな」



 魔法を使えないカズヤにはピンとこなかった。


 だが、使える魔法の種類は星によって違うと、以前ステラが言っていた。それぞれの星が持つ、固有の環境が大事なのだろう。


 とりあえず、バルザードとリオラが付いてきてくれる分には問題なさそうだ。



「では、帰る時になったら連絡してください。私たちはイゼリアに戻って、いつものように作業していますので」


 パーセルは条件通り、カズヤたちを降ろすとすぐに飛び立って行った。宇宙船は音もなく浮かび上がると一瞬で消え去った。


 カズヤは地球の地面をしっかりと踏みしめた。


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