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232話 捜索依頼

 

 日本からこちらの世界に来られるなら、こちらから日本に飛んで行く可能性があってもおかしくはない。


「残念ながら、私もマスターと同じ考えです。少なくともアリシアは城から半径30km以内には確実にいません。痕跡すらありません。この短時間で、それだけの距離を移動できる手段はありません。違う宇宙に飛ばされたと考えるほうが、むしろ納得できます」


 ステラは相変わらず、何が残念なのか分からないような返事をする。しかし、今はそこに触れている余裕はない。



「でも、もし本当にそうだとしたら、俺たちはどうしたらいいんだ? 飛ばされた先が地球だとしても、行く方法なんか無いだろう」


 カズヤは、自分の出した結論に絶望した気持ちになる。


 あれだけ「地球に帰りたい」と願っている前田アカリたちですら、日本に戻れずにいるのだ。


 いったいどんな手段があるというのか。



「……いいえ、方法はありますよ」


 しばらく考え込んでいたステラが意外な返答を口にする。


「えっ、どんな方法だ!?」


「次元を超えて移動する方法があればいいんです。今までは無理でしたが、つい最近その可能性が出てきたじゃないですか」


「な、なんだって……!?」


 ステラの言葉に、カズヤはハッとする。



 その可能性には気付いていなかった。


 そうなのだ。


 確かに前田アカリたちと話した時と今とでは、状況が大きく変わっているのだ。



「デルネクス人か!」


「そうです。デルネクス人たちが乗ってきた宇宙船を使えば、アリシアが飛んで行った次元の宇宙へ行けるかもしれません」


 確かにデルネクス人の宇宙船は、次元を超えて宇宙から宇宙へ移動する方法があると言っていた。元艦長だったオルガドは、その技術を侵略のために使おうとしていたが。


 デルネクス人が使っている宇宙船に乗れば、地球が存在する宇宙に移動できるかもしれないのか。



「今の艦長はパーセルだ。ひょっとしたら、話が通じるかもしれないな」


 デルネクス人たちとは、つい先日この星の資源や人類を巡って衝突があった。


 しかし、元艦長オルガドに代わって新たに艦長代理となったパーセルの協力もあって、今ではわだかまりが解消しているはずだ。



 現在はこの星との間にルールが作られ、デルネクス人はそれに従ってこの星を調査をしている。


 そのルール作りに一番積極的に関わっていたのが、他ならないアリシアだった。



「デルネクス人たちは、今でも衛星軌道上からこの星の調査を続けています」


「そうか。じゃあ、パーセルに頼んでみるか。彼なら無下にはしないはずだ。ステラ、連絡してもらってもいいか?」


 以前の艦長のオルガドなら話にもならないが、今の艦長であるパーセルなら話が通じるかもしれない。


 カズヤの心に、わずかな希望の光が灯ったのだった。



 *


 ステラ経由でデルネクス人にコンタクトをとると、カズヤは彼らの宇宙船を訪れた。


 パーセルにアリシア捜索のお願いをするためだ。



「……という訳なんだ。調査なんかで忙しいとは思うけど、どうしても力を貸して欲しいんだよ」


「分かりました。そういうことでしたら、できる限り協力させてもらいましょう」


 艦長代理のパーセルは、拍子抜けするくらいあっさりと首肯した。



「えっ……、いいのか!? 即答してくれるのは嬉しいけど、デルネクス人にとって何かメリットでもあるのか」


 せっかくの承諾の返事だが、余りにも話がうまくいきすぎてカズヤは思わず聞き返してしまった。



「もちろん我々にもメリットはありますよ。いま、この星を調査できているのは他でもない、アリシア殿のおかげです。私たちがこの星を侵攻しようとしたにも関わらず、アリシア殿が穏便に話を進めて有意義な条約を結んでくれました。彼女がいなくなると、今後の調査に悪影響が出る可能性があります」



 カズヤは、デルネクス人との条約締結の経緯や事情に詳しくなかった。


 政治的なことはよく分からないので、取り決めごとはアリシアに全部任せていたのだ。


 アリシアであれば、どんな相手であれ敬意を持って接していたのは間違いない。アリシアの人柄と政治的な手腕のお陰で、デルネクス人と上手くやっていたのだ。



「それに……」


 少し言いにくそうにパーセルが付け足した。


「実は個人的にも、私はアリシア殿に救われているのですよ」


 パーセルは、かつて宇宙船内で発生した元艦長のオルガド派との内部争いの時に、アリシアの火魔法で助けてもらったときの話をしてくれた。



「……へえ、そんなことがあったのか。アリシアらしいな」


「調査中にこのような私情を挟むのは良くないとは思うのですが、個人的な恩義があるのは確かです。アリシア殿には、できる限り協力したいと思っているんですよ」



 そんな事件があったことをカズヤは知らなかった。アリシアにとっては、伝えるほどの出来事では無かったのかもしれない。


 しかし、アリシアの誠実さが、デルネクス人の協力に繋がっている。


 本人が知らないうちに、善行の報いが返ってきているのだ。



「さっそくですが、アリシア殿が飛ばされたかもしれない星の情報を教えてもらえますか?」


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