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227話 雲の獣

 

「おい、ゼーベマン。シデンが気絶したら離れるんじゃなかったのか!?」


「おかしいのじゃ、以前はすぐに離れたのじゃが……。若、若! 目を覚ましてください!」


 ゼーベマンが必死に呼びかけるが、シデンの様子は変わらない。



「おい、どういうつもりなんだ!? お前はこのままシデンにとり憑くつもりか?」


 カズヤは影の亡霊に向かって問い詰める。


『……こいつの体内にある魔石を気に入ったと言っただろう。約束なんか守るつもりはない。この身体は私がもらう』


 たしかに人間の身体の中にも魔石があるという話は知っている。


 そのシデンの魔石に亡霊が棲みついてしまったのだ。



「くそ、いったいどうしたらいいんだ。リオラ、教えてくれ!?」


「すみません、私にも分かりません。影の亡霊は、太古から魔石に棲みつく精霊の一種だと言われています。どうしたらいいものか……」


 このなかで、200歳を超えている最年長のリオラですら対処法が分からない。


 気絶したシデンを前に、みんなが途方に暮れていた。



 そこへ、デルネクス人の宇宙船が降りてきた。


 パーセルを伴って、アリシアとステラ、ピーナと雲助が姿を現したのだ。


「姫さん、ご無事でしたか!!」


 バルザードの歓喜の声がこだまする。



「なんだよ、ピーナも一緒に付いて行っていたのか」


 カズヤは、また姿を見失っていたピーナを見つけて安堵する。



 すると、すばやく走り込んだステラがカズヤに抱きついた。


「ちょ、ちょっとステラ、急にどうしたんだ!?」


「いつものアリシアの真似ですよ。私なら駄目なんですか?」


 カズヤに抱きついたまま、ステラが頬を膨らませる。


「い、いや、そんなことは無いんだが……」


 みんなの視点が集まると、カズヤはどうしていいか分からない。



 しばらくして大人しく離れたステラを見て、アリシアが不満げな表情を浮かべていた。


「……カズヤ、私の心配はしてくれないの?」


「もちろん、安心したよ。無事で良かった」


 少しすねたようにアリシアが返事を要求する。カズヤは、仲間の無事を確認してホッと安堵した。



「それで、これはどういう状況なの。様子がおかしいけど」


 状況を飲み込めないアリシアが、カズヤに尋ねた。


 影の亡霊に囚われたシデンの周りを、みんなが囲んで見守っている。



「どうやら力を手に入れるために、影の亡霊という質の悪い奴に捕まったんだ。約束を破って離れなくて困っている」


 みんなが困って見守る様子を、シデンに憑りついた影の亡霊はニタニタした様子で笑って見ている。


 何があっても、シデンから離れない心づもりのようだ。



「……やれやれ、精霊が約束違反するのはご法度なんだぜ」


 突然、予想外の声が影の亡霊に投げつけられた。



 それは雲助の声だった。



「この姿にはなりたくなかったんだけどな……」


 雲助は影に捕らわれたシデンと亡霊を見比べたかと思うと、急に身体を巨大化させた。


 初めて見た雲助の姿だ。


 立ち上がった姿は煙で作られた四本足の魔物のようだ。高さは5m以上あるが幾らでも大きくなれそうだ。



『き、きさまは雲の獣ライゼリアス!? なぜ、こんなところにいる!』


「戦いが終わったら離れる約束で力を貸したんだろう? 契約違反は精霊のご法度だぜ」


 そういうと、雲助の身体がシデンの身体を包み込む。


 すると、シデンから黒い影が離れていくのが見えた。顔色が戻り血色が良くなっていく。



「こんな悪さをするなら魔石に閉じ込めるだけじゃなく、魔石ごと壊してもいいんだぞ。お前は相変わらず学ばない奴だな」


 影の亡霊は再び元の魔石の中に閉じ込められた。雲助の身体も、元の大きさに戻っていく。


 雲助のおかげで、シデンは元に戻ったのだ。



「おい、雲助。いったいどういうことだ!? お前はいったい何者なんだ!?」


「……なんだよ、カズヤのくせにうるさいぞ。オイラはただの雲助だ。もう少しここで遊ばせてくれよ」


 雲助はカズヤからそっぽ向くと、いつものように何食わぬ顔で再びピーナの首に巻きつくのだった。


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