221話 新たな参戦
ラグナマダラの援護により、軍事衛星からの攻撃が無くなった。
地上への砲撃が無くなりカズヤが他の戦場へ向かおうとした、その時。
さらなる予想外の戦力が姿を見せた。
「おい、カズヤ! あそこを見ろ!!」
慌てた様子でバルザードが駆け寄ってくる。その視線の先には武装した一団が、こちらへ突進してくるのが見えた。
それは魔術ギルド総帥のジェダと、冒険者ギルド総帥のルガンの一団だった。
「あの宇宙船を攻撃しろ! 守る者たちも同様だ、手加減はいらんぞ!」
ルガンの指示に、後ろに引き連れている多くの構成員たちが呼応する。
魔法使いと冒険者の集団だ。
その後ろから、攻撃型の魔導兵器が巨大な荷車に乗せられて運ばれている。
荷車の上から、不遜な顔をした金髪の男が周囲に指示を出していた。その周りには屈強そうな傭兵たちが護衛している。
その男は、カズヤたちを一瞥するとニヤリと笑う。
「マグロス……! カズヤ、あいつが商業ギルド総帥のマグロスだ!」
バルザードは現首都エストラに魔導兵器を売りつけに来た、商業ギルド総帥のマグロスを思い出した。
「あいつがマグロスか……」
マグロスが訪れた時は、カズヤは前皇帝グラハムに囚われ護送車にいたのだが、アリシアからその時の話を聞いていた。
護衛しているのは闇ギルドののヴェノムベイン傭兵団なのだろう。
各ギルドの総帥たちが、そろって出撃しているのだ。
ジェダは天敵だったはずのカズヤたちには目もくれず、眼の前を素通りしてデルネクス人への攻撃を集中する。
当然ながら、カズヤたちを援護つもりなどなさそうだ。何らかの目的でデルネクス人の宇宙船を撃墜しようとしている。
突如として各ギルドの総帥たちが現れたことに、カズヤは状況が呑み込めなかった。
「奴らは何の軍勢なんだ。わざわざ総帥自ら戦場に出てくるなんて……ひょっとして、こいつらがアビスネビュラなのか!?」
ジェダやルガン、マグロスが同時に動かすほどの戦力を操れるのは、アビスネビュラくらいしか思いつかない。
バルザードが、正面を横切る旧知のルガンを呼びつける。
「おい、ルガン! いったい何のつもりだ!?」
「バルザードか……俺たちは特別な指示を受けて行動している。関係のないお前たちは、すぐにこの場を去れ」
「ルガン、お前……。ひょっとしてアビスネビュラなのか?」
「……」
ルガンは何も答えない。
進撃を続けるルガンの横顔を見て、バルザードは確信した。
やはり、ルガンもアビスネビュラの一員なのだ。
以前、サルヴィア教会の指示でバルザードの冒険者ランクを回復しようとしたが、それは護衛対象のアリシアと離れさせるための作戦だった。
ジェダはアビスネビュラであることを明言している。マグロスはアビスネビュラだったグラハム前皇帝側に付いていた。
そのジェダやマグロスと行動を共にしているのが何よりの証拠だ。
予想外の軍勢の出現に、デルネクス人たちも戸惑っていた。
「なんだ、こいつらは!? パーセル、すぐに部隊を奴らに向けるのだ」
「分かりました。戦闘型は、すぐさま迎撃しろ!! 宇宙船には指一本触れさせるな!」
副官パーセルの指示が、デルネクスの戦闘部隊へと行き渡る。
先頭にいるジェダとルガンを目掛けて情報型ザイノイドが突進していく。
カズヤたちの目の前で、アビスネビュラと情報型の戦いが勃発した。
飛びかかってくる複数の情報型の素早い攻撃を、ジェダは流れるような動きでさばき続ける。
さすがはジェダだ。
魔法陣を展開し、魔法と体術の連携で応戦する。至近距離の攻撃を受け流しつつ、瞬時に強大な魔法を生成する。
その顔は戦闘を楽しむかのような狂気に満ちていた。
カズヤやシデンにとっては憎き仇敵だが、強さは本物だ。情報型を相手にしても一歩も引いていない。
近距離から次々と放たれる極大魔法に、情報型は警戒して近付けなくなる。
それはルガンも同じだった。
カズヤは冒険者ギルド総帥のルガンの戦闘を初めて目にした。
たしかにバルザードが自分以上と評した通り、凄まじい強さだ。
単騎で前方に飛び出すと情報型を引き付け、他の者たちの攻撃を助けている。
何体もの情報型と戦っているにも関わらず、いっさい後ろに引かず動じない。身体の2倍はありそうな大盾を振り回して、重戦士のような猛攻を仕掛けている。
「カズヤ、奴の特技は絶対防御だ。あの大盾を突破する攻撃は見たことがないぜ」
「……絶対防御!?」
同じようにルガンの戦闘を眺めていたバルザードが、カズヤに教える。
「あの大盾はどんな攻撃だって防いでしまう。俺様は何度も一緒に戦ったことあるが、奴が攻撃を受けるのを見たことがないぜ」
ルガンは大盾による防御だけではなく、身体以上の長さの大剣を振り回しながら情報型の1体を倒してしまった。
アビスネビュラはカズヤたちではなく、デルネクス人を最優先に行動している。
カズヤたちには目もくれず、地上のザイノイドへと襲い掛かっていく。
「感謝はしたくないが、ここで奴らの攻撃があるのは有難い……だけど、なぜ奴らの後ろに神聖騎士団が従っているんだ!?」
想像もしていない連携に、思わずカズヤが声をあげた。
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