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219話 宇宙船内

 

「ラグナマダラ、上空にいる敵を何とかできないか?」


『……造作もない、我が何とかしよう』


 カズヤの頭の中にラグナマダラの声が響いた。


 本当に生物が宇宙まで行って活動できるのか分からないが、ラグナマダラがステラたちの宇宙船を叩き落したことを思い出したのだ。



「宇宙にいるけど、大丈夫なのか?」


『問題ない』


 カズヤの懸念を些細なことのように一蹴すると、ラグナマダラは一気に空へと飛びあがった。


 すぐに姿が見えなくなる。



 しばらくすると軍事衛星の攻撃がぴたりと止まった。


 そして流れ星のような明るい光の筋が、幾つも空から降り注いでくる。上空で何が起こっているかは分からない。


 だが地上への砲撃がぴたりと止んでいる。



 たしかにラグナマダラは、衛星軌道上にある兵器をたたき落としたのだ。



「本当に、ラグナマダラは宇宙まで飛んでいったのか……。この世界では、信じられないことが起こるんだな」


 カズヤは目の前の現実を理解しようとするが、脳の処理が追いつかない。


 とにかくラグナマダラのおかげで、上空からの脅威が去ったのだった。



 *


「くそ、何なんだ、あの大トカゲは!?」


 上空に逃げ出した宇宙船の艦長のオルガドは、信じられない光景を目撃していた。


 地上でのラグナマダラの攻撃を回避した宇宙船は、必死の思いで軍事衛星と同じ衛星軌道上まで退避してきた。



 しかし、なんとその宇宙空間にラグナマダラが現れたのだ。


 もちろん、この辺りは大気がほとんど存在しない真空状態だ。気温も恒星の光の浴び方次第で数百度から-150度まで急激に変化する。


 とても生物が存在できる空間ではない。



 しかしラグナマダラはそんな常識を逸脱していた。衛星軌道上まで軽々と飛んでくると、軍事衛星に向かって突進していく。


 そして、まるでガラス細工を壊すかのように、軍事衛星を軽々と粉砕していったのだ。



 オルガドは、目の前の光景に言葉を失った。


 その場は冷静なパーセルの指示により、さらに高度をとって離れることで難を逃れた。だがオルガドは、未知の生物に襲われた恐怖に震えているのだった。



 *


 宇宙船に連れていかれたステラとアリシアの腕には、頑丈な手枷を付けられている。


 ラグナマダラの襲撃から少し経つと、オルガドが二人の処遇について部下に命令をくだした。



「そこの情報型は、修理室リペアルームへ連れていけ。もう一人の女は私の部屋へ来るんだ」


 下卑た笑顔を見せたオルガドの手を、身の危険を察したアリシアがさっとかわす。



「そんな無防備な状態で、私と二人きりになる勇気があるのかしら?」


「な、なんだと!?」


 突如として、宇宙船の中にアリシアの風魔法が巻き起こる。突風が吹きすさび、オルガドは一歩も動けなくなった。



 やりとりを見ていた副官のパーセルが、オルガドに忠告する。


「オルガド様。捕虜の扱いには星間法の規定があるのはご存知ですよね」


「分かってる、うるさい奴だ!」


 機嫌を悪くしたオルガドは、アリシアたちを置いてその場から去っていった。



 残されたパーセルが、アリシアに向かって頭を下げる。


「アリシア殿と言いましたか。このような失礼な事態になってしまい申し訳ありません。私は副官のパーセルです。あなたには施錠機能がついた、安全な隔離室で保護させてもらいます」



 アリシアは、思っていたよりまともなデルネクス人がいることに驚いた。


 そして、この人がピーナを助けてくれた人物だということにも気が付いた。軍事衛星からの攻撃について事前に教えてくれた人だった。



 パーセルは連行しながらアリシアに話しかける。


「このような状況になっているのに、言い訳がましく聞こえるかもしれませんが……。実は、今回のこの星への侵略に納得していない乗組員もいるのです。艦長の強硬な命令に反発する者もいます。また、異星を一方的に支配することに反対する者もいるんです」



「……そうですか。副官である、あなたの立場は理解しています」


 どうやら、このパーセルという男は信用できるかもしれない。


 王族として、これまで多くの人間を相手にしてきたアリシアは、直感で感じていた。パーセルのようなデルネクス人の良心派と交渉することが、自身や仲間のためになると考えたのだ。



 しかし、パーセルがアリシアを連れて船内を移動する途中、乗組員が通路を塞いでいた。


 アリシアとパーセルは、そこにいた3人の乗組員に囲まれてしまう。


「何だお前たちは!? いまは捕虜を連行中だ、通路を開けろ」 


 これまでの柔和な表情とは打って変わって、パーセルは厳しい表情で命令する。



 だが、そんなパーセルを見下すように、乗組員たちが嘲笑した。


「正義漢感ぶったお前の態度には、前々からずっとイライラさせられてるんだ。痛い目を見て少しは反省しろよ」


「なんだと!? 副官の私に手を出すつもりか!」


「ふん、そんなことは関係ない。もしこれが、艦長命令だと言ったらどうする?」


 男たちが下品な笑い声をあげた。


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