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218話 黒い救援


 アリシアとステラ。


 大事な二人が連れ去られてしまった。


 しかし、まだ戦闘は続いている。


 目の前では多数のザイノイドと仲間たちが戦っていた。



「バル、まずは目の前の敵をやっつけよう。宇宙船に追いかけるのは、その後だ」


「……くそ、分かったぜカズヤ。まずはこいつらを何とかしないとな!」


 さすがはバルザードだった。


 アリシアを失い、一瞬見たことがないくらい気落ちしていたが、すぐに気力をふり絞った。



 アリシアを助けるためにも、まずはこの戦場を乗り切らなければいけない。


 カズヤとバルザードは、すぐさま周りの敵へ攻撃を始めた。



 だが、まだ戦闘型3体と情報型5体ものザイノイドが無傷で残っている。フォンに匹敵する強さの戦士が3人、以前のステラが5人いるのと同じだ。


 デルネクス側との戦力差はあまりに大きい。


 カズヤの頑張りだけでは覆せない戦力差だ。


 時間が経つにつれ、カズヤたちが劣勢なのが浮き彫りになってくる。



「まずいぞ、さすがにこのままでは……」



 だが、その時。


 カズヤの嘆きが天に伝わった。


 咆哮をあげて、遠くから巨大な黒い存在が近づいてきていたのだ。



『青髪の妖精が伝えた通りだ! 我に首輪を付けた、300年前と同じ波動を感じるぞ!!』



 それはラグナマダラだった。


 忘れもしない。恐怖を伴う圧倒的な威圧感だけですぐに分かる。


 黒龍ラグナマダラの怒りの声が、その場の全ての人間の頭の中に響いてきた。


 ステラが呼んだ友だちとは、ラグナマダラのことだったのか。



 首輪を付けてかく乱していたのはデルネクス人で間違いない。


 ラグナマダラは次元の歪みを感じ取って追跡するほど、鋭敏な感覚を持っている。デルネクス人から300年前の痕跡を感じているのだ。



 ラグナマダラは、まさに積年の恨みを晴らさんと怒りに燃えていた。


 宇宙船の砲台がラグナマダラを捉えようとするが、ラグナマダラの飛行速度のほうが速い。


 巨体を震わせ軽やかに砲台をかわすラグナマダラの大きな口から、強烈なマグマが放たれる。


 宇宙船は慌てて回避するが、地面に落ちた炎の塊は地面すら融解させた。



 続けざまに急上昇したラグナマダラは、真下から宇宙船に接近する。


 空間を切り裂くような鋭い爪の一撃を加えると、宇宙船の端にヒットして機体を激しく揺さぶった。宇宙船は砲台の照準を合わせるどころではない。


 不利を悟った宇宙船は、ステラとアリシアを乗せたまま宇宙空間へと逃げていってしまった。



『地上にも、まだ残滓がいるのか……!』


 ラグナマダラは地上から敵意を放つ戦闘型ザイノイドに気が付いた。


 地面へ急降下してくると、戦闘型の一体であるニコを目掛けて突撃した。



「う、動けない……!」


 羽ばたきによる風圧で身動きがとれないニコに、ラグナマダラが体当たりする。巨体の直撃を受けたニコは激しく吹き飛ばされた。


 すばやく立ち上がったニコの目の前に、ラグナマダラが急接近している。ニコはブラスターを撃つが、ラグナマダラの強固な鱗に弾かれ効果がない。



 ニコはブラスターを投げ出して電磁ブレードに持ち替えるが、死角から飛んでくる長い尻尾が地面を薙ぎ払う。


 まともに喰らったニコは、勢いよく吹き飛ばされた。


 戦闘型であるニコが、まるで相手にならない。



 それもそのはずだ。


 カズヤたちがラグナマダラを追いつめたときは、戦闘型のフォンだけでなくカズヤやステラたち、黒耀の翼の全員の力を結集したのだ。


 たった1人では歯が立たないことを、カズヤたちは痛感していた。



 ラグナマダラは、まさに自然の力そのもののように荒々しく破壊的だった。


 ついにラグナマダラの爪がニコを捕らえる。弾き飛ばされ地面に叩きつけられるとニコの機能は停止した。


 ラグナマダラは、あっという間に戦闘型ザイノイドを戦闘不能にしてしまったのだ。



「助かる、ラグナマダラ!」


『まだ恨みは晴れぬぞ、仲間がまだ残っているな』


 ラグナマダラの目は、周囲のデルネクス軍を睨みつけていた。



 しかしニコが戦闘不能になったことに他のザイノイドが気が付くと、すばやくラグナマダラから距離をとった。


 その時、空から雨のような攻撃が降り注いできた。



 ドドドドドドッッッッッッッッッ!!!!



「な、なんだ!?」


 カズヤは、突然の砲撃に慌てて身をかわす。


「くそ、軍事衛星の攻撃か……厄介だな、攻撃が止む気配がない」



 地上を殲滅させるかのような一斉掃射だ。


 味方のデルネクス人の部隊がいることを一切考慮していない。


 さらに、カズヤたちが使っているのとは違い軍事衛星なので、待機時間が必要なく幾らでも連発できる。



 さらなる砲撃が鳴りやまない。


 宇宙から狙われていると思うと、カズヤも地上戦に集中できなかった。


 何とか排除してしまいたいが、軍事衛星は当然のように衛星軌道上にある。そんな所まで、どうやって壊しに行けばいいのか分からなかった。



『鬱陶しい雨粒だ……』


 ラグナマダラのつぶやきを耳にしたカズヤは、ふと300年前の話を思い出した。



「ラグナマダラ、上空にいる敵を何とかできないか?」


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