215話 奇襲
「マスターは無事に勝てたようですね」
ステラは、横目でカズヤの勝利を確認する。
「私もそろそろ終わらせましょうか」
巨大な光線が3発レオに直撃すると、ステラは素早く近接戦闘へと切り替えた。
フォトンライフルを背中にしまい、電磁ブレードを取り出してレオに飛びかかる。
「……くそっ!」
必死で防ごうとするレオの電磁ブレードとぶつかり合い、ジュッという光線同士の接触音が何度も響き渡る。
「どうしました、威勢がいいのは口だけですか?」
近接戦闘でも5機のA.F.A.はレオの自由な攻撃を許さない。ステラと連動しながら、あらゆる角度からレオへ攻撃し続けた。
ザシュッッという音と共に、レオの右脚に光の刃が突き刺さる。さらにA.F.A.の攻撃を背中に受ける。
「ぐあぁぁぁっ……!!」
レオが体勢を崩したところを、ステラは見逃さなかった。
電磁ブレードがレオの装甲を容易く切り裂き、体内の核心部へと到達する。正確な斬撃が体内のエネルギーコアをとらえた。
レオの活動は停止し、力なく大地に倒れ込んだ。
ステラは情報型でありながらも、5機のA.F.Aを操る連携攻撃は一方的だった。
戦闘型を相手に、情報型であるステラが勝利を飾ったのだ。
*
魔法陣に捕らえられた3体の戦闘型は、フォンたちによって拘束されている。
残りの2体もカズヤたちが捕まえた。
ここまではカズヤの作戦通りだった。
「よし、全員捕まえたぞ。戦闘型以外の、他の戦闘員は恐れることはない」
狙いが思い通り的中し、カズヤは勝利を確信していた。
だが、カズヤの思惑は早々に崩される。
戦闘員の相手を頼んでいた黒耀の翼のプラクトが、慌てた様子で駆けこんできたのだ。
「カズヤくん、大変です!! 宇宙船がザイノイドによって攻撃されています!」
「な、何だって!? 戦闘型は、ここで全員捕えているはずだけど……」
カズヤが後ろを振り返って確認する。
たしかに5体の戦闘型ザイノイドを捕まえている。
他のデルネクス人の戦闘員なら、プラクトやハルベルト軍の実力で十分対処できるはずだった。
「戦闘型以外は強くはないはずだ。黒曜の翼やストームドレイクスなら問題ないはずじゃ……」
「そんなことありませんよ、強くてまるで歯が立ちません!」
「何だって!? とにかく、すぐに向かおう」
慌てて駆けつけたカズヤは我が目を疑った。
カズヤが目にしたのは、隠しておいた宇宙船がザイノイドによって攻撃されている姿だった。
「あ、あれは、情報型か!?」
墜落したステラの宇宙船を攻撃していたのは、情報型たちだったのだ。
しかも5体もいる。
「まさか、情報型が戦闘に参加するなんて……」
デルネクス人が投入していたのは、戦闘型や人間の戦闘員だけではなかった。その裏で情報型ザイノイドが周辺を調べていたのだ。
たしかに最初の情報では、8体の情報型が宇宙船に乗っていることは知っていた。
しかし彼らが戦闘に出てくることをカズヤたちは想定していなかった。宇宙船に留まっていると思い込んでいたのだ。
だが、その情報型が地上に降りてきてしまった。
情報型といえども以前のステラと同じくらい強いのだ。一気に5体も増えてしまったら対抗できない。
「ふふ、来るのが遅かったわね。これさえ頂けば、私たちの任務はお終いよ」
情報型の1体が、ステラの宇宙船から何かの部品を奪い取った。それを笑顔でこちらに見せびらかせながら離れていく。
「いったい何を取られたんだ!?」
「おそらく宇宙船の飛行記録装置です。宇宙船の墜落原因を調べるのが、デルネクス人がこの星を訪れた目的の一つですから」
飛行記録装置というのは、フライトレコーダーのような物か。
「でも、そんなの既にステラも調べてあるんだろ。今さら取られたって構わないじゃないか」
「そうですが、それだけで済むとは思えません……。何か様子がおかしいです」
すると情報型たちは宇宙船を放置して、次々と戦場を後にし始める。
「ん、どうした!? 奴らが逃げていくぞ。宇宙船を奪うつもりじゃないのか」
その時、いち早くフォンが異変を察知した。
「カズヤさん、すぐに宇宙船から離れてください!! 彼らは宇宙船を破壊するつもりです!!」
ステラも何の攻撃か気付いたようだ。
だがステラはフォンの警告とは真逆に、宇宙船の中に飛び込もうとしている。
慌ててカズヤがステラの身体を押さえつける。
「何やってるんだ、ステラ!? 宇宙船が攻撃されるんじゃないのか、フォンが逃げろと言っているぞ!」
「デルネクス人は宇宙船を破壊するつもりです。急いで私たちのエネルギーコアを取り出さないと……!」
ステラが必死の形相で訴えた。
「そうか、でもそんな時間はないだろ!?」
もみ合う二人の後ろから、緊迫感のあるフォンの声が飛んできた。
「磁界破壊攻撃です!! 二人とも急いで宇宙船から離れてください!!」
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