214話 ステラ対レオ
レオの電磁ブレードがカズヤの背中に襲いかかる。
反射的に気配を察知し、カズヤは咄嗟に身をひるがえそうとした。
しかし衝撃とともに、レオの剣が弾かれる。
「勝手なことをしないでください」
カズヤが振り向くと、そこには回り込んできたステラの姿があった。
レオは即座にカズヤを狙うのを諦め、ステラの方へ刃を押し込もうとする。
ステラは軽やかにかわすと、電磁ブレードをしまいブラスターへと持ち替えた。すると瞬時に長大なフォトンライフルへと変形し、近距離からレオの行く手を阻んでいく。
「あなたの相手は、私がしてあげます」
「ちっ……!」
レオがフォトンライフルの弾幕を必死にかわす。
ステラの射撃は、ほぼゼロ距離の接近戦になっても続く。
まるで短銃を振り回すように長大なライフルを操りながら、正確な光線をレオへ叩き込んでいく。
「なんだこいつ、情報型のくせにやけに戦い慣れてやがる」
レオは苦し紛れに距離を取って離れようとするが、背後に控える5機のA.F.A.がそれを許さない。
「どうしました、これならフォンの方が遥かに強いですよ」
ステラが余裕をもってレオを追いつめていく。
今のステラはただの情報型ではなかった。
ステラの背後には戦闘用に特化した5機のA.F.A.《アサルト・フライトアングラー》が配備されている。A.F.A.を従えて、フォンがおびえていたほどの攻撃力で戦闘型と渡り合うつもりなのだ。
まるで戦場を支配する指揮者のように、ステラは空中を舞うA.F.A.を操った。
「やっかいな装備を増やしやがって」
5機のA.F.A.は計算され尽くした複雑なフォーメーションを描き、レオを撹乱する。
レオの移動範囲を着実に限定して、強大なライフルの攻撃の的になるように誘導しているのだ。
「情報型のくせに……!」
「逆ですよ、戦闘型のくせに随分だらしないですね」
リーダー格の戦闘型レオを相手に、ステラは一歩も譲らなかった。
「すごいな、ステラ……」
思わずカズヤも見とれるほどのステラの戦いぶりだ。
しかし、カズヤも戦いの最中だ。
「よそ見するなよ――」
声と同時に、カズヤの視界の端で何かが動いた。
次の瞬間、風を裂くようなイバの拳が襲いかかる。
カズヤはかろうじてかわした。
イバの動きは流れるようで、武器を持たないがゆえの自由な攻撃だった。
パンチをかわしたかと思ったら、連続攻撃で前腕の側面から電磁ブレードのような刃が飛び出してくる。
その攻撃はさらに肘、肩、頭を使った攻撃へと移行していく。
格闘の動きは計算し尽くされており、どんな攻撃も無駄にならず流れるように攻めてくる。ひたすら流麗な体術でカズヤに迫ってくる。
「やはり、こっちの攻撃はなかなか当たらないな」
同じ戦闘型になったとはいえ、すぐに身体を使いこなせないことをカズヤは知っていた。慣れるためには、まだまだ時間がかかる。
「だけど、奴の攻撃が少しずつ見えてきたぞ……!」
以前の身体と比べて、戦闘型のボディを使うと明らかに能力が上がっていることは実感できた。
昔なら避けきれなかった攻撃をかわし、剣を振る速度も上がっている。プラズマブレードの力もあって、一撃の速さと威力がまるで違っていた。
さらにアリシアの強化魔法によって能力は上増しされている。カズヤの方が基本的な攻撃速度や威力はまさっているのだ。
イバは格闘術の合間にブラスターを発射してくるが、アリシアに魔力障壁もかけてもらっている。
もはやブラスターくらいの威力であれば、かわす必要もない。光線が直撃したが、何もせずに弾き返した。
「なに!? 光線を弾く防具は着けていないはずだが……」
「魔法障壁っていうのがあるんだよ、俺も昔は苦労したんだよ」
徐々にカズヤの優位に傾き始める。
プラズマブレードという、リーチが長い武器を使っているのも有利だ。以前、シデンやバルザードの剣術をトレースしたことが最大限生かされていている。
イバの身体に効果的な打撃が何度かヒットすると、敵の動きの切れが鈍ってきた。
優勢を保ったら、あとは押し切るだけだ。
「ここで終わらせてやる!」
攻撃の手をゆるめずにカズヤは攻め続ける。
ついにプラズマブレードがイバの脚を破壊した。間髪入れずに、もう片方の脚も破壊するとカズヤの勝利は確定した。
地面に倒れたイバに、すばやく手枷を付けて無力化する。
「まさか、俺が負けるなんてな……おい、なんでこんなに強いんだ?」
「これが魔法の力だよ。この星を支配するつもりなら、よく調べてから来るんだな」
苦戦しながらも、カズヤは戦闘型ザイノイドに初めて勝利したのだった。
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