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213話 カズヤ対イバ


 地球へ降りてきた戦闘型ザイノイドの眼下に、宇宙船の姿が見えてきた。


 目標だった宇宙船が、廃砦に無防備に置かれている。



「おいレオ、あれを見ろよ」


「ああ、あれがお目当ての場所だな。目視によると300年前に墜落した宇宙船に間違いない。奴らは何らかの方法でこれを隠していたんだろう」


「どうする、突入するか?」


「いや、前回は待ち伏せされていた。今回は念のために、軍事衛星で周囲にいる敵を蹴散らしてからだ。ダン、宇宙船に連絡しろ」


 前回リーダー格のレオが捕まったことを懸念しているのか、かなり用心深くなっている。



 レオの指示通り、まずは軍事衛星からの援護射撃が炸裂する。


 激しい砲火に土煙が舞った。


 宇宙船周辺に徹底した砲撃が行なわれ、カズヤたちは近付くことすらできない。



「……よし、このくらいでいいだろう。宇宙船の周辺に敵はいないようだ」


 土煙がもうもうと立ち込めるなか、5体のザイノイドが悠然と近付いてくる。


 カズヤたちが邪魔することはない。何の抵抗も受けずに、戦闘型が宇宙船に近付いていく。



 ――しかし宇宙船が見えてくると思っていた戦闘型は、自らの視覚センサーを疑った。


 土煙が晴れると、そこには何もない。


 軍事衛星からの攻撃で、ハチの巣になった廃砦の残骸が残っているだけだ。上空から見えていた宇宙船は影も形もない。


「ん、宇宙船が急になくなったぞ!? どういうことだ?」



 *


「……今です!!」


 アリシアの号令とともに、廃砦を囲んでいたハルベルト軍の魔法使いたちが魔法陣を発動する。


「な、なんだ! 身体が動かないぞ!」


 5体の戦闘型全員を身体拘束の魔法が襲い、身動きできなくなる。


 緑色の光の鎖が、ザイノイドの身体を締めつける。


 認識阻害魔法で姿を隠していたカズヤたちが、廃砦に罠を仕掛けていたのだ。



 ピーナの情報により、デルネクス人たちが魔法障壁を狙って攻撃することは分かっていた。そこで、ダミーの魔法障壁を幾つか用意しておく。


 そして幻術魔法によって宇宙船があるように錯覚させた。そこは魔法陣による罠が仕掛けてあったのだ。


 その罠の一つが、この廃砦だった。本物の宇宙船はここから少し離れた、別の場所に隠してある。



「さすが、アリシア殿下ですね。ここまで魔法陣の威力を高められるとは思いませんでした」


 戦闘型を捕らえた魔法陣の強さに驚いたリオラが、素直にアリシアを称賛する。


 これはアリシアとリオラが組み立てた魔法陣だった。魔法に詳しいリオラが作り出した魔法陣に、アリシアが古代魔術アルカナ・アーツで強化する。


 そしてハルベルト軍の魔法使いたちの協力で、絶えまない魔力を注ぎ込み戦闘型を拘束したのだ。



「くそ、魔法とかいう攻撃のせいだ!」


「だから相手の戦力を調べようといったじゃない。魔法とかいう攻撃について何も知らないまま攻め込むなんて、やっぱり無謀だったのよ」


 男性型と女性型が、自分たちに下された命令を憂いている。



「このまま捕まってたまるかっ……!」


 怒声とともに、捕らえられたうちの2体が力任せに光の鎖を解き放った。一体はリーダー格のレオで、もう一体は屈強な男性型だ。


 すぐさま、その場を離れようとする。



「逃がさないぞ! フォンたちは3体を拘束しておいてくれ。ステラ、追いかけるぞ」


 カズヤは指示を飛ばすと、ステラと共に逃げ出した2体を追いかける。



 しかし逃げたかに見えた戦闘型が足を止めて振り返った。


「たった二人で俺たちを捕まえるつもりか? 舐めるなよ!」


 レオが拳を握りしめて威嚇する。



「威勢のいい個体は私が受け持ちます。マスターはもう一体を」


「情報型が舐めたことを言いやがって、後悔させてやる!」


 ステラはレオを挑発すると、離れたところへ誘導する。



 カズヤは残された男性型と正面から相対した。初めて使うプラズマブレードを強く握りしめる。


 対する男性型は、武器をなにも持たずに立っていた。


 だが、カズヤは油断していない。ザイノイドの腕が刃に変わったり、いきなりゼロ距離からブラスターを放てることを知っているからだ。



「……前に会った時と随分様子が違うな」


 男性型はいかにもロボットのような、淡々とした口調で感想を述べる。


「俺はイバだ、お前は?」



「カズヤだ。申し訳ないが話をしている暇はない――いくぞ!」


 カズヤの足が大地を蹴り、疾風のごとき速さでイバとの距離を詰める。


 突進しながらプラズマブレードを振るった。



「速いな……」


 イバは人間離れした反射速度で攻撃を避けると、驚異的な速さで反撃する。


 カズヤの胴体めがけて正確なパンチを繰り出してきた。


 ザイノイドの拳による一撃は速く重い。イバの一撃一撃が風を切り裂き、目にも止まらぬ速さで放たれた。



「あっぶな……」


 カズヤはかろうじて攻撃を受け流して、バランスを取り戻す。


 万が一直撃すれば、たちどころに吹き飛ばされるのは間違いない。直撃を喰らわないように、カズヤは必死で受け流した。


 技術的な面では大きな差があり、イバに軍配があがりそうだ。



「気を抜けると思うなよ!」


 想定外の方向から、鋭い声が戦場に突き刺さる。


 カズヤの死角から、ステラと戦っているはずのレオが襲いかかってきた。


 レオの電磁ブレードがカズヤの背中に襲いかかる……!


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