210話 作戦会議
「……あれ、カズ兄生きてたの!?」
「なんだよ、せっかく仇を取ってやったと思ったのに。無駄足かよ」
ピーナと雲助がひょっこりと帰ってきた。
「ピーナぁぁ!! どこに行ってたんだ、心配したんだぞ!?」
「空を飛ぶ船に乗ってきたんだよ。はい、これがお土産」
「ぎゃあああ!!」
突然、目の前にオルガドの手首を出されたカズヤは大声をあげる。
自分の身体や戦場で見慣れた物でも、人間のときの感覚が抜けていない。
更にその手には、カズヤを停止したZ装置が握られていた。
「何だこれ!? いやいやピーナ、こんな気持ち悪い物はいらないよ。宇宙船からいったいどうやって帰ってきたんだ!?」
カズヤはピーナが渡してきた物を突き返す。
「パーセルっていうおじさんがご飯をくれたんだよ。なんか不思議な場所を攻撃するから、気を付けてって」
「たしか副官の名前だったな。いったい、どういうことだ?」
「おそらく私たちの居場所を探すために、認識阻害の魔法がかけられている地点めがけて、無差別に衛星攻撃をしかけてくるつもりのようですね」
「何だって!? 分からないから攻撃するなんて、めちゃくちゃだな」
手当たり次第に攻撃をして、その中身をあぶりだそうとしているのだ。
「でも衛星は、一度攻撃したら数日待たないと再攻撃できないはずだろ?」
「それは通常の衛星の話です。彼らが放出した軍事衛星は、いくらでも連続して攻撃できます」
カズヤたちが使っていた衛星とは違っていた。
ただの衛星ではなく軍事衛星は、さらに驚異的な兵器だった。
「でも俺たちにとって、魔法障壁があって攻撃されたら困る場所はそんなにないだろう。ステラの宇宙船くらいか?」
カズヤにとっては、ステラが乗ってきた宇宙船を衛星攻撃で破壊されたら困る。
様々な設備があるのはもちろんだが、とりわけ宇宙船にはカズヤたちのエネルギーコアが保管されている。
破壊されてしまったら、ザイノイドとはいえ生きていけなくなってしまう。
「カズヤさん、墜落した宇宙船は魔導兵器で守っています。衛星からの攻撃なら防ぐことができますよ」
フォンが保管状況を教えてくれる。
以前の戦いで、衛星からの攻撃がハルベルト軍に通用しなかったことがあった。その兵器はまだハルベルト帝国にあるのだ。
「それはありがたいが、防ぐということは特別な場所を知らせることにもなってしまうな」
「もちろん衛星からの攻撃が通用しなかったら、調査するために降りてくるはずです」
ステラがデルネクス人の作戦を予測する。
それでは、こちらの宇宙船の場所がばれてしまう。宇宙船を奪われる訳にはいかない。
「奴らが調査で降り来たときに、迎撃するしかないか」
「その通りですが、今度は不意打ちがききません。私たちの存在を知っているので、警戒しながら降りてくるはずです」
以前のように、待ち伏せしていきなり攻撃する訳にはいかない。
しかも相手は戦闘型ザイノイド5体だ。まともに戦ったら勝ち目はない。
「どうしよう……駄目だ、いい作戦が思いつかない」
対応策が思いつかないカズヤは頭を抱える。
アリシアたちからも妙案は出てこない。
軍事衛星に、戦闘型ザイノイド。いったいどうやって防いだらいいのか皆目見当もつかなかった。
「……仕方がない。こうなったら、いよいよ俺の脳をザイノイド化するしかないかもな」
両手で顔を覆っていたカズヤがついに覚悟を決めて、従来からの課題を口にする。
今までステラに散々言われてきたことを、本当に実行しなければいけない日が来たのだ。
くるべき時が来た。そんな予感はしていた。
脳をザイノイド化させたら、人格が変わってしまう可能性が高いと言われていた。だからカズヤはかたくなに否定し続けてきたのだが、そうも言っていられない状況だ。
個人的な感情や価値観をとやかく言っていられるような状況ではない。
この星全体につながる大問題なのだ。
「……ステラ、俺の脳を移植できるか?」
だが、カズヤの発言を聞いたステラの態度が豹変する。
「はあ、何を言ってるんですか!? そんなことをしたらマスターじゃなくて違う人間になってしまいます。こんな大変な時に、くだらない冗談を言わないで下さい!」
突如として怒り始めたステラは、カズヤの提案をはねのけた。
怒られたカズヤは、ポカンとした顔で立ち尽くす。
今までのやり取りはいったい何だったのか。
ステラはことあるごとに、カズヤの脳をザイノイド化することを勧めていた。これでは、まるで逆さまではないか。
聞いていた皆は、二人のやり取りに笑いを抑えきれなかった。
「カズヤの脳を移植するのは別として、たとえ彼らの攻撃を防げたとしても、このままでは彼らに勝てないわ。私たちを強化する方法は何かないかしら?」
その様子を見ていたアリシアが、苦笑まじりに提案した。
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