表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
207/316

207話 行方不明


 ステラはカズヤを抱きかかえたまま、ウィーバーを高速モードに切り替えると、たちまち変形し始める。


 後部に隠されていた風防が前方を覆い、背面部に付いているバランサーが作動する。ウィーバーは水中はもとより宇宙でも飛べるのだ。



「私は先に行きます。皆さんは後から来てください」


 言葉を置き去りにすると音速をはるかに超えた猛スピードで、ステラのウィーバーが飛び出した。


 ロケットのような勢いで加速し、空気を切り裂いて飛んでいく。人間の目には何が起こっているのか捉えきれない。


 目の前の山や谷を置き去りにし、凄まじい速度で駆け抜けぬける。


(マスター、死なないでください……)



 ステラのウィーバーは瞬く間にハルベルト帝国に到着した。


 ステラは保管されていた宇宙船にカズヤを運ぶと、すぐさま機械を取り出し治療を始める。



 少し遅れてアリシアやフォン、黒耀の翼が、ウィーバーに乗ってハルベルト帝国に到着した。


「ステラ、カズヤは大丈夫!?」


 駆けこんできたアリシアが、ステラに尋ねた。



 アリシアの問いかけに、ステラが笑顔を向ける。


「大丈夫でした……。本当に世話を焼かせるマスターです」


 ステラとアリシアは、心の底から安堵した。


 外部の機能は停止させられていたが、生命維持の部分は最大限の頑丈さと厳重さで守られていた。



 やがてカズヤの意識が回復した。


「また助けてもらったんだな。ステラ、ありがとう」


「まったく余計な心配をかけないでください。3回目はないですからね、今度は自分で直してください」


 いつもの憎まれ口を聞いて、カズヤは苦笑する。



「やはり話が通じない奴らだったな。まさか一瞬でやられるとは思わなかった。反撃の機会すらないなんて」


 修復を終えたカズヤは、デルネクス人を甘く考えていたことを反省する。



「ステラ、俺に使った武器について何か知っているか?」


「おそらくZ装置ザイノイド・デバイスだと思います。ザイノイドの運動機能を停止させる装置です。フォン、対策はあるの?」


「あれは一部の指揮官しか持てない特別な装備です。でも他のザイノイドに影響が出ないように効果範囲は狭く作られています。相手に照準を向けなくてはいけないので、方向さえ気を付ければかわせるはずですよ」


 ステラに尋ねられ、フォンが補足する。



 さらにカズヤは、意識を失った後の出来事を皆に尋ねる。


「……宇宙船を攻撃できるような砲撃か。ハルベルトが使ったような魔導兵器くらいしか思いつかないな」



「でもハルベルト軍の物より強力でした。飛んできた方角はサルヴィア神聖王国からなのです」


「しかもそれだけ離れているのに、小さな宇宙船を狙えるなんてな……それでデルネクス人たちはどうしたんだ?」


「彼らは一時的に衛星軌道上まで退避しましたが、引き続きこちらの動きを探っています」


「そうか……混乱のおかげで命拾いしたんだな」


 初めての激突は、デルネクス人の勝利だった。


 こちらの想像を超えた対応方法のうえ、やはり5体の戦闘型ザイノイドは脅威的だ。



「マスター、回収した衛星を1機だけもう一度打ち上げてもいいでしょうか。破壊されても仕方ありません。情報で相手に遅れをとる訳にはいきませんから」


「そうだな、情報戦で遅れを取るわけにはいかないもんな」


 カズヤは当然のようにうなずく。


 デルネクス人と戦うと決めた以上、衛星からの情報は不可欠だ。残りは3機ある。破壊されたらまた1機上げればいい。



 起き上がったカズヤは辺りを見回して、皆の顔を見回した。


 ステラとアリシア、バルザードとフォンもいる。シデンを筆頭とした黒耀の翼も、ここに逃げてきていた。


 だが、カズヤはあることに気が付いた。



 大切な一人が足りないのだ。



「ん、ピーナはどこにいるんだ? さっきから姿が見えないけど」


「それが……。マスター、この映像を見て下さい。残してきたボットたちの映像です」


 ステラが気まずそうな表情で、ホログラムを見せてくる。



「えええっ!? あいつ何やってんだよ!?」


 なんとそこには雲助にまたがったピーナが、デルネクス人の宇宙船に乗り込む姿が撮影されていた。



「まさか、ピーナは一人で宇宙船に乗り込んだのか!?」


「すみません。混乱のなかで、ピーナの行動まで把握できませんでした。後から事実を知った私たちも途方に暮れているのです」


 ピーナの迷子はいつものことだった。


 しかし宇宙空間まで行かれたら、さすがのカズヤも助けに行けない。



「ピーナは宇宙に行っても大丈夫なのか!? 透明になれるといっても、宇宙空間で生きていける訳じゃない。空を飛べる雲助だって宇宙を飛べる訳じゃないだろう。ピーナには食事が必要だし着替えも必要だ。早く助けに行かないと!」


 心配性のカズヤは気が気ではなかった。



「さすがに着替えの心配はいらないと思いますが……。でも、どうやって宇宙船まで助けにいったらいいんですか?」 


「そうだ! ウィーバーを使えば宇宙まで行けるんじゃなかったか?」


 最初にステラからウィーバーを紹介された時、宇宙まで行けると説明されていたことを思い出した。



「確かに宇宙まで行けます。でも、行ってどうするんですか? 宇宙船には乗れませんが」


 宇宙に行くだけでは意味が無い。宇宙船に乗り込まなければいけないのだ。


 ウィーバーには宇宙船と戦えるような武器は付いていない。宇宙船内に入れてもらえる訳もない。



 打つ手が思いつかないカズヤたちは、途方にくれたまま黙り込んでしまうのだった。


 読んで頂いてありがとうございます! 「面白かった」「続きが気になる」と思ってくださった方は、このページの下の『星評価☆☆☆☆☆→』や『ブックマークに追加』をして頂けると、新規投稿の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ